29.
アルバン子爵家の内部監査から、日常が目まぐるしく変わって行った。
私の部屋、持ち物、自由時間、使用人。
使用人は半分が犯罪者になったことで、残りの半数は真面目に働くようになった。
お義兄様的には、新しく雇った使用人が邸に慣れたら、残った半数を解雇する予定みたいだ。
お義兄様はもう、私の件で信用できなくなったらしい。
残った半数を解雇したら、また同数になるまで新しい使用人を探すのだとか。
信用できない人をいつまでも雇ってられないよね。
貴族の使用人は、信用第一だから。
そして、変わったことがもう一つ。
ラース様と文通をすることになった。
内部監査の一件以降、私のことを気にかけてくれて、手紙をくれるようになったのだ。
それを返信して、やりとりをしているうちに、自然と文通する仲になった。
お義兄様は何故が忌々しそうな顔で手紙を睨んでいたが、私がやりたいことを止めることはなかった。
そんなある日のこと。
眉間に皺を寄せたお義兄様から、相談を持ちかけられた。
「何かありましたか?」
「近頃、一部の人間の間で病が流行っている。」
「わざわざ私に相談と言うことは、普通の病ではないと?」
「ああ。その一部の人間が問題なんだ。病にかかっているのは、精霊共鳴者と精霊術師のみ。わかっているのはそれだけで、原因も、経路も、治療法も、何もわかっていない状態だ。精霊たちに話を聞いたが、違和感は感じるがそれが何かわからないらしい。」
「精霊は何ともないんですか?」
「ああ。精霊の方は特に異常はない。」
「うーん……さすがに話を聞いただけでは、わかりませんね。見たら何かわかるかもしれないですが……」
「そうだよなぁ……」
残念ながら、私だって万能ではない。
できないことだってあるし、知らないことだってたくさんある。
お義兄様には申し訳ないが、わからないものはわからない。
「今、どれくらい広がっているんですか?」
「現在、精霊共鳴者と精霊術師を合わせると、確認できているだけで約120人いる。そのうち、約40人が病に倒れている。さらにそのうち、3人の精霊共鳴者が亡くなった。」
「死亡する病って、結構厄介ですね。何より感染経路がわからないと防ぎようがない。」
「そこなんだよなぁ……」
「まぁ、でも、ちょっと考えてみます。」
「すまない。助かるよ。」
「お気になさらず。」
精霊共鳴者と精霊術師にのみ罹る病、ねぇ……
それって、本当に病なのかなぁ?
何だか、変なことに巻き込まれている気がする。
この一件だけで、済んだらいいけど……




