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3.


今日はとっても、運が悪い日みたい。

まぁ、一週間に5日ほどは、私にとって運が悪い日なんだけど。


ガンッ


「……いっ!!」

窓の高いところを掃除していると、乗っていた台を蹴飛ばされた。

捕まるところが何もないので、そのまま床で腰を打ちつける。


「邪魔よ!ご主人様が通る場所で、ボケっとしないでちょうだい!」


「……っ!?……申し訳ございません、お嬢様。」


腰が痛くて立ち上がれないから、そのまま這いつくばって謝罪すると、手にヒールで踏みつけられる。


痛い、痛い……


「あはははっ!無様ね!犬は這いつくばっていればいいのよ!ふんっ。」


私をひとしきり嘲笑った後、ヒールの音を立てながらお嬢様は去っていった。


お嬢様と言っているけど、血筋的には従姉妹で、公式には義妹だ。

いつも思うけど、性格がすごく悪い。


手の甲を見ると、青紫色に変色し、血が流れ出ていた。

血を廊下に落とさないように、力を込めて袖口で抑える。


あぁ……痛い……


何処が痛いのかわからないほど、何処もかしこも痛い。


泣いちゃダメ。

泣いても、誰も助けてくれない。

何も解決しない。

時間の無駄。

だから、泣いちゃダメ。


いつものように、心の中で何度も唱える。


バシャッ

カラン、カラン、カラン


水と、続いてバケツが落ちてきた。

全身がずぶ濡れになり、服が身体に張り付く。

今日の水は、綺麗な水だ。

汚い水じゃなくてよかった。


わざわざ苦労して綺麗な水を汲んで、私にぶっかけたのかな?

そこまでして、嫌がらせをするなんて。

もっと別のことに労力を使えばいいのに。


「あははは、目が覚めたぁ?こんなところで寝ているあんたが悪いんだからね!起こしてあげたんだから、感謝しなさい。あ、そこの廊下も片付けておきなさいね〜」


耳につく笑い声が廊下にこだまする。


あぁ、本当に、今日は運がない。


項垂れていると、窓は開いていないのに、何処からか暖かい風が吹いてきた。

全身に纏わりつく風は、被った水も、廊下を濡らした水も、何処かにさらっていった。


いつの間にか、手の傷と痛み、腰の痛みがなくなっている。


きっと、いつも私を助けてくれる子たちだろう。

姿を見せない、けれども誰よりも優しい存在。

私の心の支え。


また、助けてくれたんだ。


『ありがとう。』


礼を言うと、耳元でクスクスっと小さな笑い声が聞こえた。

さっきの人たちの、醜い笑い声とは比べ物にならないくらい、優しくて温かい声だった。


私は気を取り直して、引き続き、窓の掃除を進めるのだった。






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