20.
あのお茶会以降、招待状は全く来なくなった。
まぁ、予想はしていた。
けれど、全く来ないとは思っていなかったため、もしかしたら誰かが裏でそう仕向けているのかもしれない。
高位貴族がそう仕向けたのなら、それより下位の位にある貴族は逆らえないだろう。
お嬢様が、とてもイライラしている。
嫌だな。
些細なことで、爆発してしまいそう。
お嬢様の機嫌を伺いながら、戦々恐々と生活していたのだが、ついにやらかしてしまった。
私にとっては些細なことだった。
いつもの授業では、お嬢様が発表したい時に手を上げて、私が答えを教えてから、お嬢様が答えるようになっているのだが、今日は間違った答えを教えてしまった。
お嬢様は自信満々に答えて、結果、間違えてしまったことで、恥をかいたとお怒りなのだ。
「ちょっと、来なさいっ!!」
授業後に教室中に響く声で、私を教室から連れ出した。
私の腕を力一杯握りしめて、廊下を突き進んでいく。
あまりの怒気と気迫に、廊下に出ていた生徒は中央の道を開ける。
誰から見ても、今のお嬢様は触れてはいけない危険物らしい。
人気のない場所まで来ると、柱の影で立ち止まったお嬢様は、私を壁に勢いよく突き飛ばした。
「……ぅっ!」
後頭部と背中に壁がぶつかり、痛みから声が漏れた。
座り込もうとした私の肩は跡がつくくらい強く掴まれ、壁に抑えつけられた。
「どういうつもり!?あんな間違いを教えるなんて!!私に恥をかかせたかったの!?」
バシッ
「ち、違います。私が馬鹿だから……間違いました。申し訳ございませんっ!」
「そうよ!馬鹿なお前を、この私が使ってあげているのよ!感謝しなさい!」
「はい……ありがとうございます。」
「お前が馬鹿なせいで、いつもいつも私が恥をかくのよ!!」
バシッ
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
「この役立たず!穀潰し!アルバン家の恥晒しがっ!!」
バシッ バシッ バシッ
歯を食いしばり何度も謝罪をするが、お嬢様の手は頬を叩くのをやめない。
きっと腫れて赤くなっているだろう。
肩の手が外されたので、ずるずるっと座り込みながら、何度も繰り返して謝罪をする。
「お前なんか、生まれてこなければ良かったのよ!!」
このセリフは、何度も何度も聞かされてきた。
お嬢様だけではない。
奥様にも、ご当主様にも、使用人たちにも。
もう慣れてしまったから、何を言われても心に響かない。
ただ、痛いのだけは慣れない。
早く気が済んで、終わってくれればいいのに。
私はただひたすら、耐えるしかなかった。




