16.
貴族院の登校時間。
いつものようにお嬢様の荷物を持って、後ろをついて歩く。
まだ登校時間には随分と早いのに、お嬢様も他の何人かのご令嬢も、寮門の前で落ち着かない様子で立っている。
その理由はただ一つ。
きゃぁ!!
お嬢様たちから、黄色い歓声が上がる。
視線の先にいるのは、第三王子クリストフェル・トロワ・フローヴェ殿下。
そう、毎日のように第三王子殿下が登校されるのを、寮門で待っているのだ。
あぁ、今日はお嬢様が、争奪戦に勝ったらしい。
第三王子殿下のすぐ側で、高い声で喋りかけている。
当の第三王子殿下は、全ての話を聞いているのかいないのか。
曖昧に返事をしているようだ。
私は騒がしい集団から少し離れ、現実逃避しながら後ろからついて行った。
今の貴族院は、黄金期と呼ばれている。
理由は簡単だ。
この国の3人の王子と、多くの高位貴族が揃っているから。
王族の妊娠が発覚すれば、貴族は一斉に子作りを始めるので、当然と言えば当然なのだが。
我が国の3人の王子は、それぞれタイプの違う美形で、大変おモテになる。
第一王子ラルグレイス・アン・フローヴェ殿下。
亡くなられた前王妃唯一のご子息で、漆黒の髪とロイヤルパープルの目を持つ。
文武両道、特に剣の才能が凄まじいとのことだ。
続いて、第二王子シュナイダー・ドゥ・フローヴェ殿下。
現王妃のご子息で、プラチナブロンドの髪とロイヤルパープルの目を持つ。
残念ながら剣の才能はないが、それを感じさせないほどに政治や文学、語学などの才能が高い。
最後に、第三王子クリストフェル・トロワ・フローヴェ殿下。
現王妃のご子息で、第二王子殿下とは双子の兄弟になる。
双子なので同じ配色だが、第二王子殿下よりも少し幼い顔立ちに見える。
第三王子殿下は、直系王族の中で唯一の精霊共鳴者だ。
第一王子殿下は、貴族院の三年生。
第二、第三王子殿下は、今年入学した一年生になる。
入学式で、第一王子殿下と第三王子殿下を見て、私はとても驚いた。
第一王子殿下は、魔物の森で出会ったラースさんで、第三王子殿下は、夜の散歩の時によく話をするクリスだったから。
2人とも、貴族の偉い人だとは思っていたけど、まさか王子殿下だとは思わなかった。
無知って、怖い。
今度から普通に話せなくなりそうなので、このことは忘れることにした。
騒がしい朝の登校が終わり、各自の教室へ向かうのだが、お嬢様は第三王子殿下の教室まで付き纏っている。
私はそれを横目に見ながら、私とお嬢様の教室に向かうのだった。




