SIDE:ラース2
午後9時。
影魔討伐に集まったのは、影魔討伐の指揮を任された俺と、魔物の森との境界を守る北方騎士団、精霊術師8名。
影魔とは、魔物の影から生まれた影の魔物だ。
夜にしか活動できないが、それを補うほど厄介な性質を持つ。
それは、実態を持たない影であると言う点だ。
つまり、どんな形にもなれると言うことだ。
攻撃している時に形を変えられたら、簡単に避けられてしまうのだ。
また、実態がないことで、普通の剣では討伐ができない。
攻撃ができるのは、精霊術か精霊術で付与された剣での攻撃のみ。
だから影魔討伐には、精霊術師が必須になってくる。
夜にしか討伐できないと言うのも厄介だ。
暗くて視界が狭い中戦うと言うのは、非常に気を使う。
味方に攻撃を当てたら、失態どころの話ではない。
常に気配を尖らせておかないといけないのは、とても疲れる。
各自最終確認を行い、その場で待機をしている時、空気が騒めいた。
暗闇から影が蠢いてるのが確認できた。
「総員!戦闘開始!」
俺の合図で放たれるのは、氷や土の刃。
影魔が近づいてくるまでは、遠距離攻撃でできるだけ数を減らす。
一定のラインを越えたら、俺たち前衛の仕事だ。
精霊術師は、補助に回る。
精霊術を付与された剣は、様々な属性の色に染まっている。
夜間帯だから、余計に色が目立つ。
おかげで、何処に味方がいるかわかるから便利だが。
後は、ただひたすら影魔を切る。
獣、鳥、魚、スライム……
自由自在に身体を変えて、攻撃を避けられる。
少しでも油断すると、こちらがやられかねない。
それにしても、今日は多すぎる。
このままだと精霊術師が保たない。
どうする?
焦りを見せているのは、俺だけではなかった。
焦りから動きが大雑把になり、怪我が増えていっている。
一度撤退すべきか?
そう思った時、目の前に光が落ちた。
煌々とした太陽のような光ではなく、静かで何処か冷たい柔らかな月の光。
よく見ると、それは人影だった。
そこにいたのは、頭の先から足のつま先まで、全身が真っ白な、一柱の精霊だった。
ゴクリと唾を飲み込む。
こんな圧倒的な存在感の精霊は、見たことがない。
誰の契約精霊でもない。
自由な精霊だ。
白の精霊が腕を一振りすると、十数体がまとめて消し飛んだ。
ひらり、くるり
ふわりと頭上を飛びながら、腕を一振り。
くるりと回って、また一振り。
その場はもはや、白の精霊のための舞台だった。
俺たちはもう、観客でしかない。
そうして影魔が消えるまで、その演舞は続いたのだった。




