SIDE:ラース1
驚いた。
普通の街娘に見える子が、魔物の森にいるなんて。
禁止はされていないが、危険な森だと知っているだろうに。
とにかく、ここで俺が会えたのは運が良かった。
俺がここで魔物討伐をしていなかったら、どうなっていたことか。
女の子の後ろで護衛をしながら、こうなった経緯を思い出すのだった。
何故俺が魔物の森にいるのかと言えば、魔物の森の調査のためだ。
魔物の森は初代国王の建国時以降、人の手がほとんど入っていない。
理由は、始まりの精霊との契約にある。
けれど完全に放置すれば、我が国に甚大な被害が及ぶ。
だから定期的に調査して、間引く必要がある。
近年、魔物の森から出てくる魔物や影魔が増えていた。
原因はわかっていないが、このまま放っておくわけにはいかない。
そのため、近日中に影魔討伐が行われることになった。
影魔討伐は夜間帯に行われるため、昼間の魔物討伐よりも危険性が段違いだ。
昼間の魔物の森の姿と、夜間の魔物の森の姿に多少の違いはあれど、夜間帯に調査することは危険だ。
だから、昼間に魔物の森へ調査に来たのだ。
もちろん一人で来たのではない。
相棒とも呼べる、最も信頼している従兄弟セルトゥスと一緒に来たのだが、調査しているうちに植物の幻惑に引っかかり、逸れてしまったのだ。
あいつはあいつで強いので、怪我の心配はしていないのだが。
そうして一人で歩いている時に、ウルフラビットと遭遇した。
遭遇した場所は、木々が生い茂っている場所で、俺の剣では戦いづらかった。
攻撃を晒しながら、広い場所に向かっているところで、少女と出会ったのだった。
異母弟よりも、小さい……
「俺はラース。何故こんな危険な場所にいるんだ?」
「シャルです。えっと、奥様に言われて、ジュエリーフルーツを取りにきました。」
「ジュエリーフルーツだって?なんて無茶苦茶な。」
なんて雇い主だ。
普通じゃない。
もしや、無理難題を押し付けられているのではないか?
「魔物の森の外まで護衛しよう。帰った方がいい。叱られると言うのなら、私から話をしよう。」
「はい。ありがとうございます。でも、お話は大丈夫です。あなたが来たら、余計に叱責されます。」
「そう、か。わかった。護衛だけしよう。」
「よろしくお願いします。」
近くで見ると、ますます小さく感じる。
話をつけるのは断られてしまったが、この件は調査した方がいいだろう。
我が国は建国時の理念上、不当に他人を虐げることを許さない。
それに始まりの精霊との約束で、正しく優しい心であらねばならない。
でなければ、精霊たちが離れていってしまう。
精霊たちが離れれば、我が国はすぐにでも魔物や影魔に飲み込まれてしまうだろう。
そうさせないためにも、正しくあらねばならない。
少女を魔物の森の外に送り届けた後、セルトゥスが契約している精霊のおかげで合流することができた。
お互い調査結果を報告してわかったことは、遭遇する魔物の数が増えていることと、魔物の森の植生が乱れていること。
加えてセルトゥスの契約精霊が言うことには、霊脈が乱れてあちこちが拗れているらしい。
霊脈が拗れたことで、魔物や影魔が出現しやすくなったとのことだ。
俺たち人間には霊脈なんて感知できないから、精霊が言うことをそのまま信じるしかないのだが、一体何が起こっているのだろうか。
原因は精霊でもわからないらしいので、なおさら俺たちにわかるはずがない。
とにかく、魔物の森が異常事態だと言うことはわかった。
よって、予定通り、近日中に影魔討伐を実施することにした。




