12.
『もうすぐだよ〜』
『もうすぐ、もうすぐ。』
魔物の森に入って、かれこれ一時間。
小精霊たちが言うには、もう少しで着くようだ。
ここまでの道のりは長かったけど、小精霊たちの道案内はとても安全で楽しいものだった。
他人が聞いたら驚くだろう。
魔物の森が安全で楽しいなんて、正気を疑われそうな言葉だ。
そのまま進んでいると、視線の先に、何が光っていることに気がついた。
木々の隙間から、キラキラと輝きが漏れている。
もしかしてと思いながら、はやる心を宥める。
ひらけた視界に飛び込んできたのは、赤、青、黄色……様々な色に輝く大きな一本の木だった。
「うわー……」
一目見てわかった。
その名の通り、光にかざした宝石みたいに輝くそれが、探していたジュエリーフルーツだってことが。
綺麗すぎて、言葉にならない。
時が止まったかのように、しばらく見つめていた。
それは、数秒にも何十分にも感じられた。
『わっ!!』
「わっ!?」
キャッキャッ、クスクスと笑う小精霊たちは、驚いて声を上げた私が面白かったみたいだ。
驚かされた私が膨れっ面をすると、膨らんだ頬をツンツンと突いてくる。
完全に遊ばれてるし……
ハァと深く息を吐き出し、改めて、ジュエリーフルーツの木を見た。
とりあえず、赤色とオレンジ色をひとつずつでいいかな。
味を占められても嫌だし。
手の届く2つを丁寧に捥いだ。
…………一個だけ、なら……いいよね?
心の中で言い訳しつつ、黄色の実を捥いで一口齧る。
「…………!?!?」
無言で、一つを食べ切った。
今まで食べた果物の中で、一番美味しかった。
味までジュエリー級とか、すごい。
もう一つと思う心に蓋をして、私は非常に名残惜しく感じながら、その場を離れた。
『帰りも、よろしくお願いします!』
『お任せあれ〜』
『レッツゴー!』
再び小精霊たちにお願いして、アルバン邸への帰路に着いた。
…………?
ちょうど真ん中くらいまで引き返した時、何処からか甲高い音が聞こえて来た。
耳を澄ませると、それは何かに剣がぶつかる音と、魔物の唸り声。
それがどんどん近づいて来ている。
『人間が戦いながらこっちに来てる!』
『どうしよう、どうしよう!』
小精霊たちと一緒にオロオロしていると、草むらから男性が飛び出して来た。
目が、合った。
「なっ!?なんで、こんなところに!?……くそっ!」
その男性は私を庇うように、私の前に立った。
男性と対峙しているのは、長い牙と爪を持つウルフラビットだった。
私はカバンからレッドプラントの実を取り出し、ウルフラビットの顔に投げつけた。
レッドプラントの実を切りつけたウルフラビットは、見事に粉を被った。
男性は勝機を逃さず、ウルフラビットの首を剣で刎ねた。
ハァ……
思わず漏れたため息に、男性のため息が重なって、しばし見つめ合うのだった。




