11.
私は今、魔物の森に来ていた。
ことの発端は、いつもの奥様のわがままからだった。
朝食を食べている時、奥様がふと何かを思いついたように、顔を上げた。
どんな無理難題が飛ぶのかと、使用人は戦々恐々としていたことだろう。
奥様が告げたのは、「ジュエリーフルーツのタルトが食べたい」とのことだった。
ただのタルトなら問題なかった。
問題だったのは、ジュエリーフルーツのこと。
ジュエリーフルーツとは、一部の地域でしか栽培されておらず、珍しく冬に実るジュエリーのような輝きをした果実である。
その珍しさから、普通の商人では取り扱っておらず、高貴な貴族の口にしか入らない、とても希少価値が高いのだ。
今の季節は夏。
普通に考えて、手に入るはずがない。
唯一の方法としては、危険を冒して魔物の森へ採集にいくことだけ。
誰がそんな危険を冒してまで、魔物の森に行くのか。
そんなの決まっている。
そう、私だ。
むしろ私しかいない。
そうして午後のお茶の時間に間に合うように、急いでアルバン邸を出て来たわけだ。
魔物の森は、言葉の通り、魔物がウジャウジャいる。
そんな中、どこにあるかもわからないジュエリーフルーツを探すのなんか、普通なら不可能だ。
見つける前に死んでしまうだろう。
けれど私には、心強い味方がいる。
そう、普段は姿を見せない子たち、小精霊たちである。
小精霊たちにお願いして、魔物に遭遇しないで、ジュエリーフルーツがなっている場所まで案内してもらうのだ。
『よろしくね。』
『任されましたぁ〜』
キャッキャッとはしゃぐ小精霊たちは、本当に可愛い。
アルバス子爵家は、一人を除いて精霊に嫌われている。
だからアルバス邸では、小精霊たちは姿を現さない。
けれど、姿を現さなくても、いつも側にいてくれる。
だから私は一人でも大丈夫。
一人だけど、一人じゃないから。
『こっち、こっちだよ〜』
『あ、しゃがんで〜』
『あそこに見える岩はね〜ロックタートルだよ〜』
『あ、プリンスライム!アレ、美味しいんだよ〜』
……!?
プリン……?
プリンって、あのプリン?
え、気になる……
食べたいような……食べたくないような……
いやいや、今はそんな場合じゃないし!
今度機会があれば……
機会……あるのかな?
そんな、騒がしくも楽しい?道中を歩きながら、魔物の森をどんどん奥へ進んでいく。
私にはすでに、ここが何処なのかわかっていない。
小精霊たちの案内なしでは、絶対に帰れないだろう。
そもそも、小精霊たちの案内なくして、ここまで来れないだろうけど。




