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SIDE:クリス2


全盛期には、国の3分の1の人間が、精霊と友誼を結んでいた。

けれど徐々に数が減っていき、今ではほんの一握りだけ。

王族や公爵家でさえも、例外ではなかった。


そんな中、僕は共鳴判定で精霊共鳴者であることが発覚した。

それも、上から2番目の、2級精霊共鳴者だ。


案の定、国はお祭り騒ぎだった。

そして、このことに誰よりも喜んだのは、両親だった。

特に母上の喜びようは、今まで見たことがないくらいすごかった。

僕は両親に褒められて、単純に舞い上がった。


その裏で、精霊共鳴者ではなかった双子の兄上がどう思っていたかなんて、知る由もなく。


その日から、母上は僕に対して過保護になった。

そして僕に関する全てのことに、過敏に反応するようになった。

最高峰の教育係、護衛の騎士、使用人……

目まぐるしく変わる環境に追いつくのに必死だった僕は、いつも一緒にいた兄上の存在を忘れていた。


いつも間にか、兄上との関係に、修復できないほど決定的な溝ができていた。

でも僕は、それに気がついていなかった。


気が付かないまま自らの手で、兄上との関係を粉々にしてしまった。


それは、3年前のある日のこと。


兄上と全然遊んでいないと思い出した僕は、授業をサボって兄上を探していた。


庭園で本を読んでいた兄上を見つけだ僕は、嬉しくなって駆け寄った。

兄上の表情なんか見ずに、そのままの勢いで、今日までの出来事を話していた。

授業の難しさ、窮屈さ、母上の過保護さ、退屈さ……

兄上は同意して聞いてくれていると思っていた。

思い、込んでいたんだ。


バシッ


気がつけば、僕は地面に尻もちをついていた。


最初に感じたのは、頬の熱。

続いて、痛み。


何が起こったのか、わからなかった。

その時初めて兄上の表情を見た。


嫌悪、憎悪、嫉妬、羨望、失意、屈辱……


ありとあらゆる負の感情を宿していた。


「ふざけるな!!自慢のつもりか!?嘲笑っているのか!?俺がどんな気持ちで……!!」


僕はただ、見上げることしかできなかった。

止まった時間を切り裂くように、母上の悲鳴が背後から聞こえてきた。


「クリス!?」


僕に駆け寄って来た母上は、僕の頬を撫で、優しく抱きしめてくれた。


「あぁ……クリス……痛かったでしょう?母がいますからね。もう大丈夫ですよ。……お前!私の可愛いクリスになんてことを!そんなのだから精霊共鳴者になれなかったのよ!?」


僕を優しく労ってくれた母上は、同じ口で兄上を罵倒していた。

僕は呆然と、座り込むことしかできなかった。


その後のことは、正直あまり覚えていない。

父上と、一番上の兄上が来ていたことだけは覚えていた。

ただ、もう二度と、前の関係に戻れないことだけはわかった。


その日の夜。

僕は寝室を抜け出し、聖域である泉に来ていた。

そこで初めて出会ったのだ。

真っ白な月の精霊に。


運命だった。

グチャグチャな感情を、吹っ飛ばされた気分だった。


後に、夜の精霊だと訂正されたが、僕だけの名前として月の精霊と呼ぶことにした。


それから僕は定期的に抜け出して、彼女に会いに来ている。

もちろん会えない日もあったが、それでもよかった。


彼女との邂逅は、僕に様々感情を降らせてくれた。


悩みや負の感情を吹き飛ばしてくれる彼女の存在は、僕にとって救いで特別だった。

その特別が別の特別になるのも、時間の問題だった。


そうして彼女と共に多くの時間を過ごした僕は、彼女に、月の精霊に恋をしたのだった。






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