SIDE:クリス1
初めてその精霊に会ったのは、双子の兄上に突き放されて、現実を知って悩んでいた時だった。
あれは、3年前のこと。
双子として生まれた僕たちは、いつも一緒だった。
何かをする時は、いつも隣に兄上がいた。
だから何も怖くなかった。
兄上がいれば、どんなことだって大丈夫だと思えたから。
今までずっと一緒だったから、きっとこれからも一緒にいるんだと、信じて疑わなかった。
けれどそれは、ただの幻想だった。
現実はもっと、残酷だったんだ。
全てが変わったのは、僕たちが5歳の時だった。
5歳になった僕たちは、共鳴判定を受けることになったのだ。
王族に生まれた者は、5歳で共鳴判定を受けることになっている。
何故5歳なのかは、この国の歴史に関わってくる。
この国の起源には、一柱の精霊がいる。
遥か昔、混沌の時代。
昼間は魔物が跋扈し、夜間は魔物の影である影魔が跋扈していた。
人々は抗う術を持たず、日々祈りながら地下に篭って生活をしていた。
けれど地下に隠れ住むには、人数が多すぎた。
悩んだ人間が選んだのは、人柱として地上に人間を送り込むこと。
選ばれたのは、立場が弱い人々だった。
彼らは常に死を間際に感じながら、地上で生活していた。
この先ずっと続いていくと思われていた。
そんな時、この理不尽な死に、ある男が立ち上がった。
それが後の初代国王だった。
初代国王は、魔物の森のさらに奥にある聖域に、4人の友と一緒に挑んだ。
何度も死にかけながら、聖域である泉に辿り着いた。
そこには、この世のものとは思えない、美しい女性がいた。
初代国王の目には、彼女が救いの女神に映った。
その女神の正体は、一柱の力ある精霊だった。
初代国王は、その精霊にこう願った。
「どうか、人間が安心して暮らせるように、力を貸してほしい。この先ずっと、死の恐怖に怯えながら生きるなんてあんまりだ!」
精霊は答えた。
『いいでしょう。その代わり、そなたはその正しき心を常に証明し続けるのです。そうすれば、その優しき心を持ち続ける限り、我らは生涯の友でありましょう。』
正しき心、優しき心とは、酷く曖昧なものであったが、初代国王は力強く了承した。
これが、この世界で初めての、精霊術師の誕生であった。
初代国王は、聖域から帰還した後、人柱にされた人々をまとめ上げた。
精霊の力を借りて、精霊と共鳴できる精霊共鳴者を探し出した。
また同時に、精霊と契約できる精霊術師を見出した。
そうして、初代国王は彼らを率いて、魔物の森を切り開き、人々が安心して住むことのできる国を作った。
4人の友は、初代国王を支えるために、公爵となったのだった。
ただ、全ての魔物の森を切り拓いたわけではない。
それは精霊が許さなかったからだ。
人間の敵である魔物でも、この世界に存在する一つの命だからだ。
初代国王はそれを了承し、魔物の森もの間に巨大な砦と壁を築き上げた。
最大の魔物の森を抑えることができたが、地上を跋扈する魔物や影魔がいなくなるわけではない。
だがそれでも、地下で篭っていた人々が地上で暮らせるようになった。
初代国王の築いた国は、虐げられていた人々が集まった国だ。
だがら、この国では全面的に差別が禁じらるようになった。
10年、20年が過ぎると、初代国王のおかげで、次第に精霊と友誼を結ぶ者が増え、各地で街ができ、たくさんの国が起こるようになった。
人々は幸せを享受し、豊かな生活を送れるようになった。
初代国王は自らの子どもに、常々言い聞かせていた。
「精霊を裏切らないよう、正しく優しき心を持て」と。
そして、幼いうちから精霊と触れ合い、道を違わぬように、5歳になったら洗礼を受けさせるようにした。
それが後の、共鳴判定に繋がるのだった。
これがこの国の、始まりの歴史。




