1.
湿気って古びた藁、カビの匂いが充満する、狭い物置き部屋。
もう何年も着続けて、ボロボロになって、繕いの後が目立つ灰色の服が三枚。
それが私に与えられた部屋で、私に与えられた持ち物だ。
ここは物置き部屋なので、要らなくなったものがたくさんある。
何か必要になったら、ここのものを漁って使っている。
誰も使う人がいないから、文句を言う人もいない。
私はシャルフィーネ・アルバン。
ブラウンの髪とエバーグリーンの目を持つ、ごく平凡な容姿の女の子だ。
一応、このアルバン子爵家の血を引いている。
何故この部屋で暮らしているのかと言うと、私は正式なアルバン子爵家の人間ではないからだ。
私の母は、現アルバン子爵家当主の姉だ。
つまり、先代アルバン子爵家のご令嬢だった。
少し身体は弱いが、とても美しくて優しい人だったそうだ。
しかしそんな母は、未婚のまま私を妊娠し、出産した。
もちろん、父は誰かわからないままだ。
母は最後まで、父のことを一切話さなかった。
だが、未婚なのに子どもを妊娠するなんて、外聞の悪い話では済まされない。
家門の名誉を重んじる貴族である母の家族は、もう大激怒。
普通なら家を追い出されるところだったが、母は特別な力を持っていた。
母は、2級の精霊共鳴者で精霊術師だったため、貴重な力を持った母を、さすがに追い出せなかったのだ。
だからと言って、外聞の悪い母をそのままにはしておけない。
そうして母は離れに軟禁され、たった一人で私を出産した。
母は私を産んだ後、産後の肥立ちが悪くて亡くなってしまった。
だから、私は母の顔も声も温もりも何一つ知らない。
普通なら、肖像画やら遺品やらがあるのだけど、家族に嫌われた母のものは、全て処分されて残っていなかった。
アルバン子爵家の面々は、私の扱いに困った。
だが結局、給料を払わなくていい使用人として、万が一の縁談の候補として、アルバン子爵家に引き取られることになった。
だから一応アルバン子爵家のご令嬢、と言うことにはなっている。
実態は別だが。
母が精霊共鳴者だったので、それを引き継ぐかもしれないと言う思惑もあったのだろう。
親が精霊共鳴者だったら、子どもも受け継ぎやすいとの研究結果があるらしい。
とはいえ、全く関係のない血筋と比べて、わずかばかりと言ったところなので、あまり期待はされていない。
私は不義の子。
アルバン子爵家の面汚し。
だからこの扱いも、仕方がない。
仕方がないと、思わなくてはいけない。
生きているだけでも、殺されなかっただけでもありがたいことなのだ。
きっと、そう。




