第19話 託す思いと決めた覚悟
火蓮と鈴風はブレスト街に来ていた。
ここは、近くに温泉があり癒しの街として有名な場所だ。
しかし、ここも魔物達の被害を受けていていた。
「これは酷い」
「鈴風、悔しい。
火蓮、街の手伝いをしよう!」
(鈴風の眼差しが輝いている)
「うん」
そうして鈴風と火蓮は街の復興の手伝いを始めた。
そして数時間後
「ありがとな、街はだいぶ元に戻ってきたぜ」
街人が2人に向かって言う。
「いいんです、私はここの温泉に入るのが好きなので」
「ありがとよ、それで何だか湯を入れておいたよ。
入ってくれ」
「いいのですか?」
「ああ、疲れているだろ?」
「ふふっありがとうございます、行こう鈴風」
「ちょ…」
火蓮に引っ張られ鈴風は案内された温泉に向かう。
到着すると湯気が立っており、ぽかぽかしてくる。
「俺達は他の所を直してくるから、ゆっくりしてるといい。
それじゃあな」
そう言い街人は行ってしまった。
「早く入ろう〜」
「いや、鈴風男だから。
火蓮一人で入りなよ」
「鈴風も女らしいからいいの!ほら!脱いだ脱いだ!」
「わ!」
そうして2人はスッポンポンになる。
「は、恥ずかしい」
(うわ、鈴風の筋肉凄い……お腹の肉とかヤバい……腕は細いのに)
「ねぇ見てみて、鳥さんの形をした置物があるよ?
可愛いね」
火蓮は温泉近くに落ちている小さな鳥の置物?を手に取る。
「鈴風、この置物あんまり好きじゃない。
早く入るよ」
そう言い鈴風は温泉に浸かったその瞬間。
「火蓮!」
鈴風は温泉に入ろうとする火蓮を両手で突き飛ばす。
「ちょ!何するの……よ……え?……り…ん……か?」
火蓮の目の前には石のように固まっている鈴風が居た。
私を突き飛ばした状態で。
(え?何が?……)
「あら?一人しか無理だったのね、カンのいいヤツ」
!?
湯気の奥から出てきたのは金髪ロングヘア、星のアクセサリーをつけた女の人が現れた。
「貴方誰!鈴風はどうなったのよ!!!」
「鈴風って言う名前なんですね、その方はもう死にましたよ」
「え?」
「この温泉、超強力な毒が入っているんです。
それと入る者を石化させる魔法もね」
「……ふざけるな!!鈴風を返せ!!」
火蓮は女に殴りかかる。
しかし女は余裕で避ける、まるで動きが分かるように。
(くっ!何で当たらないのよ!)
「無理ですよ、貴方では。
ふん!!」
「ごはぁ!」
女は至近距離で火蓮の腹に衝撃波をかます。
火蓮は思いっきり吹き飛び壁に激突する。
(ぐっ!はぁ、はぁ呼吸が……うっ)
「貴方もその人と仲良く石化しません?そうすれば永遠に一緒にいられますよ?」
「………良いかもしれないわね……」
「ふふっ」
「でも……鈴風はきっとそんな事望まない!!私は7ブレイカーとして務めを果たす!!
仲間を失ったとしてもね!!」
「7ブレイカーの方達だったのですね、一応自己紹介しておきますね。
私は闇の使者の一人、フラメルよ」
「私は火蓮、それだけよ!!」
2人は武器を手にして斬りあう。
ガキン、ガキン。
2人の攻撃は隙をつかない激しいもの、一瞬の隙が負けを意味する。
(へぇ~火蓮って女、中々やるわね)
(こいつ、強い!でも私は負けれないのよ!!)
「やああ!!!」
「はああ!!!」
2人の攻撃は更に激しくなる。
「ふふっ貴方、強いのね」
「そっちこそ!でも、これで終わらせる。
私の力見せてあげる!!」
「無駄ですよ、私には勝てません。
そんな私と相打ち程度の実力ではね」
「燃え上がれ……我が魂……剣に宿りて燃えろ」
!?
火蓮が言うと火蓮の持つ剣が赤く染まり、炎のように燃える。
「な、何なの!それは!」
「貴方これで終わりよ!!!炎の太刀!!獄炎!!!」
「ぎゃあああ!!!」
それは2人を包む、強力な熱い一撃。
火蓮の腕が火傷するほどに。
しかし、その攻撃をもろに受けたフラメルはと言うと
ポロポロ。
灰のように体が崩れていきそして死んだ。
(くっ……まだ、私にはこれが限界ってこと?小さい頃に見せてくれたあの父の技が出来れば私も)
火蓮は静かに剣を収め
「鈴風……ごめん……救えなかった……うぅ……」
「私があんな誘いに乗らなければ……断っておけばよかった……ごめんなさい……ごめんなさい…」
(火蓮…)
!?
突然火蓮の頭に響く鈴風の声。
(え?!鈴風!?)
(火蓮、そんな事言わないで。
火蓮は僕の為に戦ってくれた……ありがとう)
(でも!!でも!!鈴風……私が先に入っていれば……貴方は死なずに)
(でも、それだと火蓮が死ぬよ……それだったら僕も今の火蓮と変わらないと思う。
それに闇の使者を倒せたのは火蓮だからだよ、見てたよ。
火蓮の剣技……凄いね)
(……父親にね、教えてもらったの。
でも、闇の使者に殺された、私が弱かったから)
(そんな事無いよ、火蓮は強い。
それに元王女なんだから、しっかりしてよ)
(私に王女なんて似合わないよ、私は愚かな敗者の王女……何も救えない……愚かがお似合いよ)
(……火蓮、もう僕のような犠牲を出させないようにしてね。
火蓮ならきっと出来る、もう弱い火蓮は居ない)
(……私には無理だよ……鈴風が居たから強くなれたんだよ)
(火蓮、君の事を想ってくれている人は僕以外にもいるでしょ?
雷土、あの子なんて火蓮が託した子でしょ?コールドスリープさせたのも君なんだから、だから7ブレイカーとして務めを果たして欲しい)
(私に7ブレイカーなんて似合わないよ。
仲間を目の前でみすみす失ったんだから)
(火蓮……そんなに自分を責めなくていい、僕は火蓮の事をずっと見てる、暴剣も君の事をずっと見てくれているよ。
だから、僕と暴剣の思いを火蓮に託す。
この世界を平和にするため)
(思いを託す?……私に?)
(うん、火蓮ならきっと出来る。
炎の奥義もきっと出来るよ、だから……ね)
(……鈴風、最後に聞かせて。
鈴風は私と居て幸せだった?)
(ふふっ、幸せだよ。
7ブレイカー達との日々、楽しくて毎日が早く過ぎていった。
だから、幸せだよ)
(………鈴風、私……頑張るよ)
(うん、火蓮ならやれる。
この先もきっとこんな風に心をえぐるような事があると思う、けど絶対に負けちゃ駄目)
(うん!)
(それじゃあ、僕は逝くよ……見ているからね)
(うっ……)
(火蓮)
(何?)
(僕の恋人なら笑っていて欲しい、泣かないで)
(……鈴風、私もそっちにすぐに行くからね)
(……それは平和にしてからだよね?)
(うん、きっと)
(………じゃあ……ね)
そうして鈴風の声はこれ以上聞こえなくなった。
火蓮は膝から崩れ落ち泣いた。
耐えきれなかったのだろう。
一緒に居た時間もあったけど、それでもそれ以上の事がある。
(マリン……ごめん……鈴風を守れなかった……だから……)
その頃、
氷火と雷土はブレスト街に来ていた。
「なぁ、確かここには鈴風さんと火蓮さんが来ていたぞ?
何で来たんだよ」
「何か……嫌な予感がしてから!」
(こっちからみたい……何か感じる!!)
氷火はずんずんと進んでいきそして
「ちょ!待てよ、氷火。
どうしたんだよそこ突っ立って」
!
氷火は直ぐに走り近くの木に何かあるのを下ろした。
湯気が立っていて雷土は前が見えていない。
………。
「氷火!どうしたんだよ!……え?それって火蓮さん?」
「……手紙……」
マリン……ごめんなさい……鈴風を守れなかった……私は……愚か者……
と書かれていた。
氷火は息をしていない火蓮を生き返す方法を試していた。
……。
「氷火!無理だよ……」
氷火は無言でひたすら蘇生活動を行っていた。
「うっ……」
「……!?
息を吹き返した!?」
氷火の蘇生活動がこうをそうしたのか、火蓮は息を吹き返した。
「……なぜ……〇〇をしたの?」
「………私は……鈴風を守れなかった……手紙……見たでしょ?」
「……私はあんまり、カリンと話していないのでよく分かりませんが貴方が死ぬなんて許しません!!」
「…………私を断罪していいわよ……」
「分かった」
氷火は剣を鞘から抜く。
「ちょ!マリン!」
「この女が言ったの、雷土、邪魔をしないで」
氷火は言う。
「やめろ、火蓮さんを殺した所でカリンは戻ってこない!!!
本当にそれが正しい答えなのかよ!!!」
「あんたなんかに何が分かるのよ!!!」
「俺だって!!!全てを失ったんだぞ!!!」
!
「全て……」
「親も妹も、師匠も恋人も……そして仲間も」
「記憶が段々戻ってきたんだね、私もよ」
「……火蓮さんを始末したら俺が許さない、今回の原因は闇の使者達だろ!
悪いのは火蓮さんではない!!」
「……分かった」
氷火は剣を収める。
「……何で……生かすの?私はもう……生きたくないの」
火蓮さんが顔を上げると目は虚ろで、絶望に落ちている顔だった。
「……鈴風を救えずにあんたが死んだ所で鈴風は戻って来ない!」
「火蓮さん、ここで何があったかは知りませんが絶望している暇はありません。
闇の使者達がこの世界を支配しようとしているんです。
抗うんです!」
「……もう……いいの……心が壊れちゃいそう……だから……」
火蓮は立ち上がり温泉の方へと歩く。
(あの温泉!何か嫌な予感が!)
氷火は火蓮の体に抱きつき必死に止める。
「あれだけ言ったのに何で止めるの」
「その温泉、何かあるんですよね!入らせる訳にはいかない!」
「そう……この温泉ね、石化する魔法が付与されているの、あとかなり強力な毒もね。
あそこで止まっている鈴風も温泉に浸かって死んじゃった……だから……私も……隣に……鈴風の隣に行かなきゃ……」
「行かせない!!!」
「がふっ!」
雷土が火蓮を吹き飛ばす。
「貴方って人は!!!」
(雷土がキレている、私、初めて見たかも)
「……どうし・て止めるの……ロム」
「貴方は弱い、本当に弱いですよ!!鈴風さんが助けてくれたんでしょ!
なのになぜ、抗わない!鈴風さんの分まで生きなきゃならない使命がある!貴方には!!!」
「……使命……」
「マリンが怒る理由は分かる、でもそれでも貴方が死ぬ理由ではない!!
全ての元凶は闇の使者達じゃないか!!!そんな事がなければ鈴風さんも生きていたし!
天雨さんのお姉さんも生きていたんだ!!!だから……命を無駄にするな!!!」
「……天雨の姉……会ったんだね……」
「ああ、俺はそれを知らず首を斬ってしまった。
そして後悔して俺は死を選ぼうとしたら天雨さんに本気でキレられた、そして俺は決意したんだ。
もう2度とこんな悲しい事は起こさせないって!だから!死ぬな!!!」
「……ロム……私は7ブレイカー失格だと思う?」
「俺はそんな事思いません!
俺の知っている火蓮さんは弱くないですから!」
「……火蓮…さん……私は貴方が憎いのかもしれない。
でも、火蓮さんが亡くなったら……それは辛い。
だから……一緒に元凶を倒しましょう……」
「マリン……」
「……ケッ何だこれは!」
!?
すると温泉に入ってきた悪そうな見た目の男。
「ちっ、生きていたか。
洗脳して絶望させたのに、クソガキ共が!」
(コイツ、闇の使者か!?)
(火蓮さんを殺させる訳にはいかない!!この外道野郎が!!)
「……マリン、ロム……ここは私がやる……」
立ち上がる火蓮。
「火蓮さんは離れててください。
僕とマリンで倒しますから!」
「やらせて、こいつは私が倒さなければならない」
「でも!」
「雷土、やらせてあげましょう」
「いや、だが……」
「大丈夫、覚悟は決めたから」
「おしゃべりは死んでからやりなぁ!!!」
闇の使者が斬り込んでくる。
ガキン!!
火蓮は自分の持つ剣で攻撃を防ぐ。
「お前、絶望しろ……お前の性で仲間が死んだ。
この先も隣に居るお仲間も死ぬ!!だから……死んだほうがいい!」
「……そうかも知れない………でも!!!」
(な!?コイツ!一気に魔力が上がった!?)
「私はもう迷わない!!私が愛したううん、みんなが愛するこの大陸は滅ぼさせたりなんかしない!!!
終わりよ!!!炎の太刀……炎風」
「ぐわあああ!!!」
火蓮の放った剣技はとてつもない暑い疾風。
それは速く鋭く、鋭利な風。
それを受けた闇の使者は木っ端微塵となりカスになった。
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