第1話 始まりの街と逃れた者の枷
「やああ!!」
「ふふっ、まだまだね!」
私は今、ハーベルさんと魔法の特訓をしていた。
(はぁはぁ)
「今日はここまでよ、私も高齢だから連続は出来ないからね。
それにしても最初の頃よりも強くなったんじゃない?」
「本当ですか?」
「ああ、昨日のあんたって言ったら怯えた顔で私を見てびくびくしながら話してくれていたでしょ?
こうも人間って変わるもんだなって、まぁあんたは今、幸せでしょ?」
「はい、ハーベルさんの所について色々と知って、沢山の事も学んだし、魔法の本も面白いし、毎日が楽しいです」
「ふふっ、幸せそうで良かったわ。
ミナミ、あんたはこの先どうしたい?」
「この先?」
「ああ、ずっと私の家に居るのもいいんだけどあんたはまだ子供で若いし、幼い。
しかし、私は高齢で老いが更に来る、いずれは私の家を出てもらうことになるわ」
「え、何で」
「若いあんたがこんな森の中に居るのは良くない、私みたいに高齢になったらいいかも知れないけどね。
それでだ、冒険者になるのはどうかな?」
「冒険者?」
「ああ、ギルドって言う建物の中に依頼板があり、そこに依頼書が貼られているんだよ。
そこで自分がやりたい依頼の紙を取り、受付嬢と呼ばれる人に渡して受注するんだ。
そしたら、依頼に書かれている内容を達成する。
そうすれば依頼を達成したと言うことでお金がもらえるんだよ。
報酬金って言われるよ」
「魔物とかあるの?」
「あるよ」
「私、魔物とか怖い。
私は争い事とか嫌いだもん」
「採掘や採取依頼もあるよ」
「それは危険じゃない?」
「危険では無いが絶対安全とも言えない。
弱い魔物とかを倒す事もある」
「そんな〜」
「大丈夫さ、お前さんなら倒せる実力も持っている。
自信を持つのじゃ、私の若い頃なら冒険者になったら早速魔物退治をやっていたぞ」
「むぅ〜私、まだ子供何ですから〜」
「そこまで心配ならパーティに入るのはどうじゃ?」
「パーティ?」
「リーダーが作るグループをパーティと言う。
そこに入れば仲間と共に魔物を倒したり出来るぞ?」
「仲間………いや、やっぱりパーティはいいです、一人でやります」
「そうか、悪かったな」
「ハーベルさんは悪くありません、私がうじうじだからです」
「そうか、もしもお前さんの心が安らぐ仲間に会えたらいいのぅ」
「そうですね………会えるのなら……会ってみたいです」
「それじゃあ私はギルド?に行ってきます」
「気をつけるんだよ、街にも変な輩も居る。
付いていこうか?」
「大丈夫です、私もハーベルさんに迷惑はかけれません。
私は力を手にしたんですから」
「ふっ、それじゃあこれを持ってお行き」
ハーベルさんが渡したのはお金の入っている袋だ。
「お金ですか?」
「街には色んなアイテムや食べ物がある。
お金が必要じゃろ?」
「ありがとうございますハーベルさん、それじゃあ私、行きますね。
勿論、依頼とかしたらここに戻ってきますけど」
「気をつけてな」
「は〜い」
私は元気よく家を出るのだった。
私はお金と一緒に渡してもらった地図を開け街の方角へと向かった。
(ふーんこの先にあるのがセラス街って街なんだ。
どんな街だろう)
(そう言えば、私………何でこの森の中に居たんだろう。
あの時、首絞めをされて……その後……目覚めたら森だったはず………)
「考えていてもしかないか、行こう街に」
私は元気よく、足を進め街を目指すのでした。
その頃
クルクック村では
「はぁ〜、そう言えばアイツは?」
一人のクソガキが言う。
「知らないわ、家に引きこもってるんじゃない?」
「ふーん、いじめるやつが居ないからつまらんな」
「ねぇねぇ、アイツの家ってどこだっけ?」
「あれだよ、あの赤い屋根の家。
ボロボロだろ?」
「みすぼらしい家ね、ちょっと声かけてみましょ?
居たら引っ張り出してまたいじめてやるんだから」
「確かにな!行こうぜ」
2人のクソガキがミナミの家に勝手に入る。
廊下の先を進む2人。
「なぁ、なんか暗くね?」
「確かに、でもアイツもこんな感じで性格とか暗くない?
お似合いでしょこの家みたいに」
「確かにな」
2人は先を進むそして
…居間へとたどり着く。
「………うわあ!!!!」
「え?何驚いt・・・ぎゃあああ!!!」
そこには胸を貫かれ死んでいるミナミの両親が居た。
2人は走る、玄関へと走る。
しかし
ガチャリ。
!?
突然玄関の扉に鍵がかかる。
「ちょ!おい!」
「開けてー!!開けてよ!!!」
2人は扉をどんどんと叩く。
その時
ドカ。
?
不意に2階から音が聞こえた。
音からして足音だろうか?
「もしかして、ミナミが2階で何かしてるんじゃない?」
「確かに!アイツが魔法で私達にイタズラしているんだ!許さない!!」
2人はズカズカと2階へと向かう。
そしてミナミの部屋と書かれた部屋を見つけ
「えい!」
2人は扉を開けた。
………。
しかし、そこにはミナミの姿は無く、荷物だけが置かれていた。
「あれ?」
2人は部屋へと入る。
「居なくね?アイツどこ行った?」
「隠れそうなのは押し入れかしら!!」
メスガキが押し入れの扉を思いっきり開けた。
…………!
「ひぃ!」
メスガキは腰を抜かす。
そこには沢山のお人形が出てきたのだ。
しかし、人形にはほこりがかぶり汚れている。
「おい!俺は逃げるぜ!」
「ちょ!」
クソガキはメスガキを置いていき、一階へと向かう。
「ちょ!待って………よ……」
メスガキの足に何やら感触が。
メスガキは恐怖の顔で振り返る。
「ぎゃはははは!!!」
「いやー!!!」
そこには立ち上がる人形達が。
そしてその人形はメスガキの足を掴み押し入れへと引きずり込む。
「ちょ!やめ!!いや!死にたく……ない!!いやだ!やめて!!!
誰か!誰か!!!助け………」
その時メスガキの頭の中に記憶が入る。
それは数ヶ月前
教室内
「嫌!やめて!」
ミナミがいじめられている。
「おらおら!!弱々ミナミだ!ざまー」
「痛い……ヨウコちゃん………助け……」
ふん。
「え……ヨウコちゃん!助け……ごふぅ!」
「ヨウコ、コイツ痛めつけようぜ?」
「………ぺっ!」
ヨウコは倒れるミナミにつばを吐きどこかへ行った。
・・・・・・!
「は!?私は………あの時……これは………ミナミの呪いなの?」
……
「嫌だ!!死にたくない!!生きたい!ごめんなさい!!私が悪かった!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」
人形の掴む力が強くなる。
「痛い!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!いやー!!ごめん………なさい………もう……しません……」
!
すると突然掴まれていた感触がなくなった。
「え?」
そこには何も無かった。
さっきまであった人形はどこにも無い。
コツコツ。
?!
振り返ると光り輝くミナミが居た。
「ミナミ、ごめんなさい!私が助けていれば……怖くて私も同じようにやられるんじゃないかってそれで……でもごめんなさい……私は弱い……子です」
「………ヨウコちゃん顔を上げて?」
ヨウコは顔をあげる。
!?
そこには不敵な笑みを浮かべたミナミが。
「許すとでも思う?いじめられた方は一生相手を憎むんだよ……ごめんなさいで済むとでも?」
「ひぃ……殺さないで……もうやりません」
「一つ言うけど私はミナミでは無い、ミナミの闇の一部なの。
そしてそれが実態となり私が居る。
ミナミを苦しめるやつは私が始末する………誰であろうと」
「ミナミの偽物?」
「偽物………じゃない………まぁ、心の一部が具現化しただけに過ぎない。
私はここから出られない、そこで……ヨウコちゃんだよね?」
「はい」
「私の代わりにミナミを守ってほしい」
「守る?」
「ああ、簡単な事だろう?」
「でも、私には力も魔力も無い……それに子供だし」
「子供でもとてつもない奴も居る、おかしな事ではない。
そうだな、私の光の力をお前に与える。
それでミナミを守れ……それがお前の生きる道だ」
「こ、断ったらどうなるの?」
「知りたい?」
「え?」
クイッ。
ミナミの闇の一部が手を動かすと地面からズリズリと出てくるものが。
「ひぃ!!!これは!!」
それは私と一緒に入った男の子だ。
その姿はひどく、体中にナイフが突き刺されており、目玉にも鉛筆が突き刺さっている。
「こうなる………よ?」
「ミナミのパパやママを殺したのも貴方なの?」
「そうさ、奴らはクズだ。
ミナミに全てをやらせ、そいつらはぐうたら三昧。
ミナミがミスすれば、物が飛んできてミナミは泣く。
しかも、母親はそれを助けずに呑気に化粧までしている始末。
クズは居るべき存在ではない……」
「酷いんですね」
「言っとくがお前も傍観者だから許せる存在ではないぞ?
まぁ、お前はつばだけで済んだから右足を負傷だけで済んだがこのガキや両親は違う……やり過ぎたからこうなった………クククッ」
「あの、それで力は?」
「あ~忘れていたな。
手に触れろ」
「はい」
ヨウコはミナミの闇の一部に手を触れる。
すると強い苦しみが流れる。
!
いやだ死にたくない!やめて!どうして助けてくれないの?
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で。
(これは!ミナミの心?)
「………終わったぞ」
!
(私の中に何かが流れている、これは!)
「お前の魔力をかなりあげた、しかも力も。
それ魔力と力で守れ……」
「守ってどうするの?」
「ミナミが朽ち果てるまでそばに居ろって事だ。
ミナミは多分、セラス街に居るはずだ。
夜、ミナミを外に連れ出した者が居たのを見たからな、多分生きているはずだ」
「もしも死んでいたら?」
「その時はお前も死ぬ」
!
「何で私が?!」
「一つ言うが嫌なら今ここでコイツのようになるがいいか?
力を与えたとて私の力はこんなもんじゃない、死にたくないなら急いだ方がいいだろう、もしもミナミが死ねば終わりだ、お前も………お前の大切な人間もな……」
!
(まさか)
「妹まで殺るつもり?」
「さぁ、どうだろうね。
さ、速く行きな……手遅れになる前に」
「い、行くに、決まってるでしょ!」
「後……最後に……ミナミがお前を受け入れるかはお前次第だ。
嫌われたら終わり……じゃあな」
そう言い消えた。
(………妹まで……くっ!これが私の罪………急いでセラス街に向かわなくちゃ!)
ヨウコは部屋を出て階段を降りる。
玄関の扉を開けると外に出られた。
(空いた!?やはり鍵をかけていたのはアイツか………でも!今はセラス街に!)
ヨウコはセラス街へと向かうのでした。
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