五章六話 渦巻く陰謀
ダイアモンド領は異様な活気を呈していた。
港では複数の飛空艦が造られ、あるところでは盛んに戦闘訓練が行われている。また、アッシュの屋敷では、一連の領主失踪事件の緊急対策委員会が活動を続けていた。アッシュという強大な力の穴を少しでも埋めるために、町は活気づいていたのだった。
「皆、とりあえず現状ある情報を整理しましょう」
もちろん議長はイザベラだ。
「まず、アッシュ君の生存と居場所がわかったわ。これはコーラル様からの情報だから、確実よ」
「おお…マジかよ。で、どこにいたんだ?」
「本当ですか…!よかった!」
ヘルメスが目を丸くして聞いた。
アッシュがいなくなった知らせを聞いて、王都から駆けつけたアメリも心配そうに場所を聞きたそうにしている。
「居場所は、ここからはるか東にある東方列島諸国連邦にいるそうよ」
「船で迎えに行こう、ダンナも困っているはず。いやまて、場所がわかったのに迎えに行けてないってことは何か理由があるのか?」
ミスジの鋭い指摘にイザベラは感心しつつも、彼女は答えた。
「そうよ。あの列島は大きな結界に囲われていて、諸外国の侵入を徹底的に拒んでいるの」
結界の強度はコーラルにすら破れないということも補足すると、皆は悩みうなった。
「あの結界は国が安定していない時に展開されると聞いているから、きっとアッシュ君も何か動いてはいるはずよ」
「封印と違って結界は解けるとしたら内部からしか解けないわ」
「なにか妾達にできることはないのか?」
キャンディスやオロコはなにかアッシュの役に立ちそうな行動は何かを考えているようだ。
すると、窓がひとりでに開き、コーラルが入ってきた。
「そんなことはしなくていいと思ったけど、役に立つ方法はあるよ」
そう嘯くコーラルに、アメリは食いついた。
「本当ですか!?」
「うん、かなり厳しいけどね」
イザベラも少し気になったのか、コーラルの席を用意し、お茶を淹れながら質問した。
「少し詳しくお話いただけませんか?」
「いいよ。じゃあ、ケーキ?、も持ってきてよ」
「ここにありますよ」
「気が利くね」
むしろそれが目当てだとイザベラは気づいていたが、黙って話の続きを促す。
「まず、あの国が安定する条件だけど、列島の政権が統一されることだよ。」
「そうか…だが外部からの侵入はほとんど不可能なんじゃろ?」
首を傾けるオロコ。
「外部からサポートすればいい、ってことですか…?」
アメリが閃くようにそうつぶやいた。
「よくわかったね。流石はアメジストの弟子だ」
「具体的に言うとダンナの力を俺たちで取り戻すとかか?」
話を黙って聞いていたミスジはそう尋ねた。
「うん、その通りだよ。私の力ならアッシュの力を奪還さえすれば結界内に無理矢理にでも送り込めるからね。まあ、大分無理をするから奪還作戦には参加出来ないけど」
魔王の連合に立ち向かい勝つのは厳しいが、アッシュの力を取り返すだけならば勝機はあるのではないかとイザベラは思った。
「私達ならできると思う?」
「うん、勿論だよ。ここには勇者や転生者、それに複数の強者がいる。それを総動員すれば泥棒くらいならできるよ」
会議に参加した者たちは闘志に包まれた。
「皆、覚悟はいいかしら?あの魔王達に一杯食わせてやりましょう!」
「「応!」」
「コーラル様、敵の情報をいろいろ教えていただけませんか?」
「いいよ、このケーキ美味しいね。もっとくれたら教えてあげる」
(私の弟子は愛されてるな、ここはいいところだ。)
一柱の竜に集った勇士たちは、決意をあらたにした。
ーーーーー
その頃、純正魔族評議会は、血の匂いに包まれていた。
円卓の中心には、アッシュを案内したはずの魔人の首が転がっていた。
席に座った強者たちは、不機嫌そうな表情で黙り込んで考えを巡らせていた。
そして魔王シュヴァルツはつぶやいた。
「なぜあの竜は評議会に参加しなかった…?」
「なんで案内に送ったはずの案内人が死んでるのかな?不思議だなぁ〜」
「奴の領地には奴の気配はしない。どうやら何か問題が起きているらしいな」
「どういうことだ?」
先日送ったはずの案内人は死んでいて、その案内対象は行方不明。
「魔神のフン共の匂いがするわね」
魔女帽子をかぶった女性はにやりと嗤いながら言った。
「私たちに喧嘩を売ってるみたいね。内通者も見つけなくちゃ」
「もう一度かの竜の部下に案内を出しておけ。ひとまず解散とする」
魔王勢力、魔神の崇拝者、そして竜の下に集う者。それぞれの思惑が交差するのだった。
ーーーーー
遭難してから五日が経った。その頃、俺は情報を集めていた。
どうやらこの島は鎖国されており、龍嵐とやらによって隔離されているようだった。
言い伝えによると、龍嵐は安寧がもたらされると共に去るらしい。里のばぁさんが言ってた情報だから定かではないけどな。
文献をできる限り漁ったが、今でこそ戦国時代のような様相を示しているが、かつては貴族が帝のもとで政治を行う体制だったようだ。しかし、武士の台頭によって乱世が訪れ、今のような龍嵐に包まれた島で戦の起こる時代になったらしい。
まるで前世の日本だ。
「おいケンシンよ、お前は必死に情報を集めているな。褒めてつかわす」
「お褒めにあずかり恐悦至極でーす」
「相変わらず経緯を感じない態度だ。いつか罰してやる」
それが不利益になることを察してるのか。意外と賢いやつだな。
「……」
「無視…だと?つくづく憎たらしい奴だ!」
面倒だから無視していたらどこかへ行ってくれた。
「ケンシンさ〜ん…本を持ってきましたよっ!」
今度はややがやってきた。
「あ〜ありがとう。そこに置いといてくれ」
「良くこんなに読みますね…」
とりあえずこの国には主な有力勢力だと十二人の武将と帝が強いようだな。
武将に関してはタケダ、ダテ、イマガワなど、聞いたことのあるような感じの氏がたくさんあった。運命や並行世界というものは存在するのだろうか。前の世界の大名と同じ姓が偉くなっているあたり、否定できないな。
「ケンシンさん、お夕飯がもうすぐできるので、いいところで中断してくださいね?」
「わかった、すぐ行く」
ややは何故か嬉しそうな様子だった。
居間に入ると、今日のご飯を女中さんとややが運んでくる。
今日は魚の西京焼きだ。味噌ベースのおいしそうな香りが食欲をかき立てる。力を失ったため、腹が減るから食事が必須になったのもいいスパイスだな。
「いただきます…」
これは、鯖っぽい味だな。皮の模様は魔物チックだったが、イケる。
「うまい!」
「やったぁ!」
俺の一言の直後、ややは何故か喜んだ。
「え?」
「あ…えっと…」
「お前が作ったのか?」
「恥ずかしながら…!」
いつもは女中さんが呼んでくれるのに、今日はややに呼ばれたので違和感はあったが、そういうことか。
「恥じなくてもいいだろ。これ、めちゃくちゃ美味いぞ」
「ありがとうございます。へへへ…!」
武家の娘なのに家事に抵抗がないのは驚きだが、この世界では普通なのだろうか。そんなことを思いながら、俺はご飯をおかわりしたのだった。
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