五章五話 天下餅のつき始め
「これが気功法か」
俺の空っぽの体に少しずつエネルギーが巡る。
「嘘…私が身につけるのに五年間もかかったのに…」
この技はエネルギーの循環効率がミソのようだな。
俺は敵の多くなる方へ走りながらややに質問した。
「お前、魔力を感じないけど排出したのか?」
「魔力…あ、邪気のことですか?」
邪気?
「邪気は妖術を使うのに必要なものなんですが、私の一家は気功法を扱う家柄なので気功が通りやすくなるように訓練するんです」
訓練の一環で魔力を排出し、人間に本来備わった魔力を封じるのか。
この鎖国状態の国では魔力のことを邪気っていうのか。まあ魔法とか武士からしたら卑怯な飛び道具だもんな。
もしかしたら妖術は独自の魔法体系を築いているのかもしれない。ああ、調べてみたい…
「コラ!妖術に興味を持たないでくださいよ!」
バレた…?
「いや、そんなことはないぞ…なあ?」
「嘘下手か!」
「まあそれはともかくとして、もうそろそろ着くぞ。ほら、あれが本陣だろ」
「うまく話をそらしましたね…?まあいいです。どうするんですか?」
考えていなかったな。よく見ると、兵の質も上がっていそうだ。俺は今竜の力がないんだから、もっと慎重に動くべきだったかもしれない。ここに来るまでも何度か危ない戦いがあった。
ややの痒いところに手が届くようなサポートで、なんとかここまで来ることが出来たが、ここからは厳しいだろう。
「どうするかって?正面突破に決まっておろう」
「「はい?」」
突然後ろに現れた男は、火を纏った刀を携え、敵陣へと向かっていった。
「あれ、ノブナガじゃね?」
「呼び捨てとは不敬ですね…でもあれはノブナガ様ですよ」
「「お、大うつけ者ーーー!!!!」」
俺とややは全力で追いかけた。
「このノブナガの怒りの炎を食らうがいい!"猛炎遁・火縄銃"!」
本陣を囲む布は焼き切れ、前線の敵は貫かれた。
まるで俺の熱線砲のような火力。あれは魔法、というより妖術か。
「グワーッハッハッハッ!"雄田家直伝気功術"で貴様らを一人残らず打ち首にしてくれるわ!」
妖術と気功術は同時に使えるのか。
「ええ…なんで?」
ややは引いてるな。
「やっぱあれ、なかなかできないことなのか?」ほ
「はい。てか絶対ムリです。つまりあの人は天才です」
馬鹿と天才は紙一重とは、よく言ったものだ。
俺もやってみたらできたりしないだろうか。まあ妖術の使い方を知らないからできないが。
そうこうしているうちに敵兵は全滅してしまった。
「なんか、あっけなかったな」
「そうですね……って!?いや、おかしいでしょ!!なんで戦が三人で片付くんですか!?」
ノブナガはこちらに何か声をかけながら近づいてきた。
「お主ら、やるな。見どころがあるぞ、褒めてつかわす」
「そりゃどーも」
そう答えると、ノブナガは眉間にシワを寄せた。
「お前、不敬だな。この俺を知らないのか?俺はノブナガといって、この土地を治めているのだぞ」
「そうですぞ!この方はこのオオワリの地を治める大名の跡継ぎ、ノブナガ様ぞ。平伏せ!」
何だこのおっさん、いきなり出てきて平伏せと言い出したぞ。
「何呆けてるんですか!早くひれ伏してくださいよ」
ややは焦って言った。俺は跪きながら
「はは〜っ!」
と大げさに言ってみた。
「ふん…敬意を感じないが、まあいいだろう。して、お前たちはこれからどうするのだ?」
「特に決めてはいませんが、ノブナガ様。あなたに問いたいことが一つございます」
「いいだろう、申せ」
「あなたにはなにか望みがおありですか?」
もしかしたらこいつなら天下を統一できるかもしれない。なぜなら名前と境遇があの武将そっくりだからな。
「それはもちろん…天下統一よ!!」
「ならば私どもを雇い入れてください。必ずやその夢にご助力いたしましょう!」
「ほう、お前を雇えとな。素性を知らぬ浪人を?」
流石に疑うよな。
「雇っていただけると言うのならば、このケンシンの素性明かさせていただく次第です。何卒!」
「…相わかった。俺の腹心である明智はいま謹慎中だし、このままでは城の士気が下がる。貴様らが武士を統率せよ」
あいつを生かしたのか、俺はこの人なら速攻で殺すと思っていたのだがな。
「よろしくお頼み申します」
ややは…なんか固まってるな。
「おい、大丈夫か?」
「ハッ!?私、もしかして出世しました?」
「はは、出世だろ。未来の大将軍の部下になれたんだからな」
「やったぁぁぁ!父上も大喜びです!!」
さて、これからどういう風な戦略を取ろうかね。
坂落とし、粥落とし、水攻め!!
「なんか悪巧みしてませんか?」
「ん〜?そんなわけないだろ…グヘヘ」
「面白いやつらだな!お前たちは、あれだけの大言壮語を吐いておきながらここまで気楽になれるとは」
かくして、俺の武士の国脱出計画の第一目標、担ぎ上げる神輿をゲットした。
早く天下をとらねば。シルヴァーに帰って皆と再会し、あの魔王共をボコボコにしてやるのだ。
こんにちは、一介です。
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ではまた次回の話でお会いしましょう。




