五章四話 主君を探して三里
「起きてください、アッシュさん。朝ですよ!」
「………」
「アッシュさん!天下の道も早起きからというでしょう?寝坊はいけませーーん!!」
パチン!と一閃。
「痛ぇ!?」
寝坊したのか、俺?こんなことは初めてだ。この人間並みの身体、いやもはや人間と言ってもいいだろう。今は睡眠を必要としているようだからな。
「ちょっと…ちょっと!!二度寝は禁止!!」
再びパチンという甲高い音が響いた。
「だから痛いっての、そう何回も人の顔を叩くんじゃねぇよ!」
「起きないのが悪いんですよ。支度ができたら行きましょう!」
行き…ましょう?
「え、お前ついてくるのか?」
「あ、そうです。よろしくお願いしますね!」
「聞いてないんだが…?断っても…」
パチンッ!
「やーめーろ!だから叩くなァ!!」
「連れて行ってください!後学のためついていきたいんです!!」
こんな感じで、俺は半ば強制的にややを仲間に加えさせられた。
平蔵さんまで断れない雰囲気を出してきたのだ。
『連れてゆかないのですか。ふ〜〜ん?』
なんで連れて行くことになってんだよ!そんでおっさんの『ふ〜〜ん?』は気色悪いんだよ!!
「アッシュさん、娘をお頼み申します。ややよ。迷惑をかけるなら、最小限にするのだぞ。」
あ、迷惑は掛けるんだ。
「はい、父上。行ってまいります!」
「ありがとうございました。娘さんはしっかり無事に帰しますのでご安心を」
平蔵さんは満足とさみしさの折り混ざったような複雑な顔をしていた。
徒歩移動で俺の旅は再び始まった。
「ふふふ…」
「お前はにやにやしながらくっつくな!」
やけに馴れ馴れしいやつだな。そんなに平蔵さんがうっとうしかったのか?
「すいません。あ、アッシュさん。今向かってる城下町に入るにあたって、名前はどうしますか?この国、異国人は迫害されるので」
「そうなのか。じゃあなんて名乗ろうかな…」
ふーむ。元の種族モチーフでいくと…
「私が考えてみま」
「じゃあ俺はケンシンと名乗るか。」
越後の龍、ってやつだな。
「ちょっと!今のは私が考えるとこでしょ!」
「シラネーヨ」
ちょっと面倒くさいな、こいつ。
「じゃあケンシンさんと呼びますね?」
「ああ、それで頼むよ」
この国は差別があるのか。昔のニホンも身分差での差別が酷かったと聞いたし、おかしくもないか。
「うへへ、名前呼びかぁ…」
「おい、見えてきたぞ」
「うひゃあ!」
「あれが城下町ってやつか?」
遠くから見ても立派な城が建っている。タイムスリップしたみたいでワクワクするな。
「あそこの大名様はこの列島屈指の武将なんです。ノブナガ様と言って、とても気高く、お強いんですよ」
ノブナガ…なんだか嫌な予感もするな。
「子供時代は大うつけと呼ばれていたりするのかな」
「え、その通りですよ。ここに来たばっかりなのによくそんな事知ってますね、どこで聞いたんですか?」
「いや、なんとなく予想だよ。天才は異端ともいうからな」
なおさら嫌な予感がした。絡まれたらすぐ死刑にされそうだ。
「あれ、なんですかあのお寺、燃えてますよ?それにいっぱい人がいるし…」
寺、火事、たくさんの兵、ノブナガ、ね…
「本能寺の変!?」
「ホンノージ?」
「行くぞ!」
「えええ!はいぃぃ!!」
ノブナガってことはつまりだ。あいつを助ければ天下に近づけるわけだな?寺に近づくと、足軽のような恰好の兵たちに囲まれた。
「何者だ貴様!」
「ノブナガ様の侍じゃぁ!!」
まあ、嘘だけど。
「敵か!ならば出会え出会え、奴を討ち取ってしまえ!」
ややが追いついて来て俺の後ろに構えた。
「こんなところで喧嘩を売って、死ぬ気なんですかぁ〜!!」
「じゃあ外から見ていたらよかっただろ」
「そんな事するほど薄情じゃありませんよ」
逆に義理堅すぎると俺は思うけどな。
「自信満々に出てきたんですから、倒してくれるんですよね?!」
「勿論だ、大蛇剣:九龍連斬!」
竜の力を失ったものの、俺の身体はその莫大なエネルギーに耐えうる肉体がある。持てる技術 (もの)を使ってどこまで戦えるのか、自分事ながら見ものだな。
一薙ぎ一薙ぎに洗練された技術を使い、俺は最初に迫ってきた三十余人を倒した。
「もう勝てぬと踏んだが、この儂にもツキが回ってきたようだな」
出てきたのは、覇気に富んだ長身の男だった。その体は鍛え抜かれ、鬼のようだ。
「おぬしらが騒ぎの種か。名を申すが良い!」
「俺…某はケンシンと申す浮浪人。ノブナガ殿とお見受けする、助太刀に入らせていただこう。」
「妹分の藤田と申しますケンシンさんと共に助太刀に致します!」
さっきまで炎と兵に囲まれていたとは思えない態度だな。
「苦しゅうない、奴らを蹴散らして参れ。ミツヒデの首を取ってくればさらに褒美をとらすぞ」
なんだか腹が立つ気もするが、従うか。
「「承知!」」
俺とややは二人で兵を斬っては進み、進んでは斬っていった。
「なんだお前…割と強いな」
「私は気功法の使い手ですので、常人より膂力が強いんです。もっとも、ここに来るまではあまり自信がありませんでしたが…」
「気功法?」
「丹田に大地の力を貯め、己の気と混ぜて身体を強くする技です。それを知らずその動きが出来ていたのですか…?」
「あぁ、じゃあやってみるか」
「はい?バカにするのも大概に…」
俺は立ち止まった。下腹部に力を込め、感知力を上げていった。すると、地面の地脈からエネルギーが伝わってくる。
自分の身体を巡る命の力を織り交ぜ、循環させた。
「これが気功法か」
身体が軽くなったような感じがする。
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