五章一話 竜と魂
満月の夜、闇夜に光が差し、竜の寵愛を受けた都の中心に、大きな門が現れた。
「お迎えにあがりました、私はシーラーと申します。」
不敵な笑みを浮かべる案内人、シーラーは宙に浮いたまま慇懃無礼にお辞儀をした。
「これより招く場所には、高貴な者のみがご入場いただけます。アッシュ=ダイアモンド様以外に、その資格を得ているものはいませんので、単独にてご案内させていただきます」
アッシュは少し緊張しながらも前へ出た。
「じゃあ…行ってくる」
「アッシュ君、気を付けてね」
「おう!」
ここから先は、未知な世界。
ーーーーー
門を抜けると、大広間に出た。後ろを振り返った頃には、その門は消えていた。
開けたところにある円卓には、数人が座っている。
当然のように全員強者だ。俺と同等どころかそれ以上の気配がする。
「そこに掛けたまえ」
円卓に一つだけ空いた席に俺は座らされた。
周りを見渡すと、数百人の強そうな魔人が上から覗いている。コイツらからは特筆すべき力は感じないが、高位の魔人であることは確かだ。
向かい側に座った角を生やした赤髪のイケメンが
「私の名前はシュヴァルツ=ノール。この議会の筆頭魔王六柱の一人にして、筆頭を務めている。君…失礼、アッシュ殿は招待者として来ている身だ。自由な発言を許そう」
へりくだるのが苦手そうだな。
「はい、ありがとうございます。よろしくお願いします。」
とりあえず下手に出ておくか。といった感じでこう返答した。
「アッシュ殿を呼んだのは他でもない。貴殿をこの純正魔族評議会への入会をさせるためだ」
へえ、割と友好的だな。
「なるほど、じゃあいくつか質問をしていいですか?」
「もちろん、構わないよ」
「まず、この会は何を話し合って何を成そうとする会なんですか?」
すると、シュヴァルツの横に座る大柄の男が発言した。
「その質問には我が答えよう。この組織は、魔人社会の上層に位置しており、均衡の維持を目的としている。近頃の議決では、魔人集団による人間界での暴走への制裁などだ」
てっきり人間ぶっ殺す!みたいな風潮の場所なんだと思っていたが、案外そうでもないのか?
「そうですか、ありがとうございます。ではもうひとつ、この会に入る上での義務、それに対する恩恵は何ですか?」
シュヴァルツはにっこりと嗤いながら答える。
「いい質問だね、この組織での義務は議会の参加や戦争への協力だ。恩恵は…他の魔族と関係が持てる点かな」
魔族との関係か…
「どうだ、参加してもらえるかね?」
「……少し考えさせてください」
周りがざわついた。
「理由を聞こうか、私は待たされるのは嫌いなんだ。」
納得しない理由なら許さない、と?
「まず理由だが、あまりこちらに利益のある提案ではないから検討の余地がある、と思ったからだ。」
「ほう…」
続けろとばかりに相槌を打つシュヴァルツ。
「俺は立場上、あまり魔族と関係を持つことは好ましくないんだ。参加したとして、義務を果たすことができない。」
「………」
え…怖っ!めっちゃ睨むじゃん!
「それに、いいえと答えたら俺はどうなる?帰してもらえるんだろうな?」
会場は沈黙に包まれた。そして…
「ふふふ…」
「くっ、ガッハッハッハッハ!」
「ふん…」
嘲笑の雨。
「君はいいね…賢いじゃないか。でももう遅いんだ」
遅い?
「ここに来た時点で命の保証はないというのに…!」
「何…?」
不穏な気配だ…
「参加を即決してくれれば君を殺すことにはならなかったのになぁ!」
シュヴァルツは突然剣を取り出し、斬り掛かってきた。音速を超えた一撃だ。
「おいおい、随分暴力的だな!議会で剣を抜くとか、ナンセンスだぞ!」
危なかった、不意打ちだった上に椅子に拘束用の魔法が仕掛けられていた。
「議会に入らないとするならば君の力は危険すぎる。奪わせてもらうぞ?」
奪わせてもらうって、どういう意味なんだ?
その時、身体が動かなくなる。
「なっ…?!」
向かってきた剣が、俺の心臓を刺した。
何かがおかしいぞ!
痛みが走る、そして魔法が展開され、発動された。
そして、心の奥底、魂の中枢が破られ、力が剥がされるような気配がした後、俺の魔力総量が激減した。
「君の仲間はどう思うだろうなぁ…?ククク、力を失った貴様に価値を見出すだろうか」
俺が何をしたっていうんだよ!このバカ野郎!
「竜帝の力、私が有効活用してやろう」
「あー!シュヴァルツずるい!」
「君はコイツの家族で遊び給え、そういう約束だろう?」
「う〜ん、わかったよ…」
………どういう意味だ?
「お前ら、元々俺を殺す気で呼んだのか?」
「当たり前だろう、お前のようなバカは私達に力を渡すだけの道具なんだからな。こんな力を持ったものが台頭しては、私の権力が落ちる。」
「本当に仲間に誘われていると思ったのかしら?」
魔女のような長身の女はそういって嗤った。
「安心しろ、君の仲間も私が使ってやる」
こいつら、とことんクズだったんだな。
「お前ら、仲間に一つでも傷をつけてみろ。一人残らずぶち殺すからな?」
「黙れ、お前は此処で死ぬんだよ!」
俺の首に剣が触れようとしたその時。
『静寂を切り裂く炎』
「なっ…外部からの魔法だと!?」
議会の外部から一条の炎が差し、辺りを焼いた。
これはまさか…
「助かったよ、師匠!」
『よく聞いて、愛弟子。いまこっちに何故か邪教徒と魔王が襲来している。私はその相手をしなきゃいけないからこれ以上の助け舟は出せない。それに君、魔力反応が死ぬほど小さくなってるから迎えに行けなさそうなんだ。だから…』
「わかった。自力で戻って来る!」
「ふふ、死んじゃだめだよ」
「当たり前だ!!!」
俺は空いた穴から飛びだした。穴を出ると…上空。
「おいおい、今日はとことんついてないな…!」
俺は落ちて、落ちて、落ちた。
あんなに啖呵を切ったものの、魔力の奪われ方がすごすぎて意識が飛びそうだ。目覚めたときに生きてるかな。
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