四章十四話 魔界からの招待状
仕事が落ち着いて一ヶ月ほど経った。俺は作っておいた工房に入り浸って、いろいろと研究をしていた。
「何作ってるんですか、アッシュ様?」
「お、セノか。なんだと思う?」
「破壊兵器、決戦級の大魔法、う〜ん…」
「そんなもん作らねえよ!」
「え、そうなの?」
コイツ、俺をなんだと思ってるんだ?
マッドサイエンティストじゃないんだから、そんなむやみに殺戮兵器を作ったりはしない。
いや、面白そうなら作ってしまいそうだけど…
「アッシュさん、悪い顔してますよ?」
突然背後から話しかけてきたのはちはやだった。
「おぉ!ちはや、来てたのか。気づかなかったよ」
「ちはや姉さん!訓練お願いします!」
「ごめん、今報告があるから後でやろう」
「むぅ、わかった。外で待ってるね!」
そういってセノは出ていった。なんの用できたのやら。
「で、報告って?」
「妙な手紙が届きました。しかも私の前に突然魔人が現れて渡してきたんです!『領主殿に渡してください』って言ってどこかに消えちゃって、アッシュさん見当たらないから直接来ました」
「悪いな、ありがとう。それにしてもなんだかきな臭いな。」
面倒事ならお断りなのだがな…
「そうですよね、届けてくれた人も怪しい格好でした。紳士のような格好でシルクハットを被った魔人だったんですよ」
魔人だからと疑ってかかっている訳では無い。根拠はないが、どうにも嫌な気配だ。
「じゃあセノが待ってるので私は行きますね」
「ご苦労さん、任せたぞ」
「えへへ…」
なんだアイツ、変なテンションになったな。まあいいか。
手紙の封を早速切ってみた。
「なっ…光ったぞ!?」
中の紙には魔法陣が刻まれており、それによってホログラムのように人が映し出された。
『ご機嫌よう。突然のお手紙申し訳ありません。私は純正魔族評議会の使者、シーラーと申します。以後お見知りおきを。アッシュ=ダイアモンドさん?』
紳士然としたスーツにシルクハット。間違いない、ちはやに手紙を渡した男だ。
『貴方は偉大な御方々からの命令で、評議会への参加が決定しました。おめでとうございます』
「新手の詐欺か…?」
「ご困惑のことかと存じますが、出席しない場合、評議会への敵対とみなし、シルヴァー王国へと侵攻させていただきます」
会議に出ろ、出なけりゃ殺す。ってことか?とんでもない連中だな。
「評議会は次の満月の夜。お迎えに上がりますので、ゆっくりとお待ち下さい……」
ホログラムは姿を消し、手紙は燃えてしまった。
色々と疑問が残るが、これは俺だけでは身に余る事態かもしれない。
ーーーーー
会議室に幹部が集まり、緊急会議が始まった。
「純正魔族評議会…?」
みんな知らないようだ。オロコあたりは知っているかと思ったが、そうでもないようだな。
「ここ数百年でできた機関のようじゃの、妾は聞いたことがない。洞窟にいる間に色々あったのかもしれぬな」
そうだ、こいつは元々引きこもってたんだった。
「問題は、これに出るかどうかってやつか?」
ヘルメスが発言する。
「怪しいし何か怖いよ。でも出ないと戦争…?アッシュ、どうするんだい!」
「そもそもダンナ一人でいくのか俺達もついていけるかもわからないのがヤバいな。」
ベル、ミスジもそれぞれ意見を述べた。
「次の満月の夜といったら一週間もないわよ、アッシュ君」
うーむ。相手がどの程度の勢力なのかによってはばっくれるのはまずいだろうし、悩ましいところだな。
「じゃあとりあえず出ることにしよう。問答無用で襲ってこないあたり、敵意は薄そうじゃないか?」
「人族も魔族もそうだけど、狡猾なものほどその謀略を隠しとおすのよ、アッシュ君」
ゲーテの魔王軍を支配してしまうほどの存在がいることからそれは痛感している。ただでさえ相手の戦力は不明なのだ。もし俺達と同等以上の勢力だった場合、シルヴァー王国全土を防衛するのは不可能だ。
「そうだなイザベラ、でもどこから現れるかもわからん敵を待つよりも俺が行ったほうがいいだろ?」
現状では、この策が一番リスクが低い。
この後も会議は続いたが、俺が招待を受けることになった。
しかし、なぜかベルが終始不安そうな顔をしていたな。まだ時間はあるし、少し話を聞いてみるか。
「アッシュ、僕はキミに話があるんだ。聞いてくれないか?」
と、ベルから話しかけてきた。
「俺も今そうしようと思ってたところだ、人に聞かれたくない話なら場所を変えようか」
ーーーーー
俺とベルは街の外へ出かけた。そして歩きながら、話を始めた。
「こうして二人で歩いて回るのは久しぶりだな」
「うん、そうだね。二人で冒険したり、お店をやったりしたのはとても楽しかったし、凄く印象に残っているよ」
あの頃の俺たちは自由気ままにに旅をして、仲間を増やしていた。
「アッシュ、僕はなんだか嫌な予感がするんだ。キミが行ってしまって、帰ってこないような」
水の神子の予感か…根拠はないが、たしかにそこはかとなく不安だな。
「大丈夫だよ。襲われても死ぬようなヘマは多分しないし、俺がヤバいことになってもここを守ってくれるだろう人に手紙も送ったからな」
すると、突然立ち止まり、ベルは叫んだ。
「違うよ…違うよ!僕はこの町の心配をしているんじゃない、キミを心配しているんだよ!!」
「な、何を…」
「キミは昔からそうだ!自信家で、いつでも駆けつけてくれて、お人好しで、自分のことを全然考えたりしない。それでいて少しビビりだし、甘ったれてる!」
その少女の瞳は、いつもより少しうるんでいた。
「僕たちをもっと頼っていいんだぞ!バカヤロー!お前が何かを頼んで、応えないやつなんかこの町にはいないんだぞ!」
確かに俺は今回の件にしても、人に頼らなすぎたのかもしれない。
「ありがとうな。でも俺はなるべく戦争は避けたいんだ。大丈夫、絶対に帰ってくるから。約束するよ。それに、俺が負けるように見えるか?」
すると、ベルはふくれた。
「ふん、どうせそんなことだろうと思ったよ。人の話を聞きやしない。それを持ち出したら、反論できないだろ」
ベルは懐から何かを取り出した。
「これ、お守りだ。キミにあげるよ」
それは指輪だった。銀でできた洗練されたデザインのものだった。
「水の神子様からこんなものをいただける日が来るとはな。加護でも付いていそうだ」
「ふん、死にかけても命くらいは助かると思うよ。なんせ僕は神様なんだからね!でも無茶はしてくれるなよ?」
照れ隠しなのか、彼女はふんぞり返った。
「ハハハ、わかったよ。肝に銘じておく」
「「…………」」
気づいたら日も落ちそうだな。
「帰ろうか、飯にしよう」
「今日は僕が作ってあげるよ!」
なんとなく、気が楽になった気がする。
ベルは不思議な魅力を放つ神子だ。いつ生まれたのか、どんな過去があるのか、それは知る由もない。
俺は決意を新たにして、満月の夜を待つこととなった。
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