四章十二話 滑稽な悪魔
戦場に異変が起きている。魔王の軍勢は突如動きを変え、アッシュと魔王を取り囲んだ。
どうやら魔将達の説得および支配解除が完了したようだ。キャンディスが魔将にかかった支配系の魔法を封印し、除去して回ったみたいだな。俺特製のライフル型の杖を使って有効射程ギリギリからの魔法狙撃をすることで解除したようだ。アレを作るのには苦労したからな、役に立って俺も鼻が高い。
「アッシュさん、私も手伝います!」
ちはやが走ってきた。
「人遣いが荒いったらないよ、まったく。」
この憎まれ口はキャンディスだな。
「アッシュさん、回復してきたから一緒に戦わせて。」
ユキも復帰したみたいだ。
「じゃあ指示通り動いてくれ」
俺はできるだけ詳しくやりたいことを魔法通話で伝えた。
『『ーーーッ!?』』
『本気で言ってる?』
『そんなの魔力が足りませんよ!』
すぐさま反論が始まった。
『俺がいるから大丈夫だろ』
自信満々な一言で黙らせた。いや、呆れたのかな?
『いいから行動開始!やるったらやるんだよ!』
そして俺達四人は動き出した。
まず俺は被弾覚悟で猛攻を仕掛ける。
「ここからは俺のターンだ…!」
多段多属性に及ぶ上位魔法の乱れ撃ち。さらにユキとの戦いで目覚めた竜人形態を発動させ、目にも留まらぬ速度での殴打や蹴撃。
「まだここまでの力を隠していたのか…!?」
「違うな、使う必要がなかったんだよ!」
こちらが攻めに回れているが、あっちの弱体化の効果もなかなかのものだ。でもな…その効果も弾いてしまえば関係ないのだ。
「私の術が効いていないだと?」
当たり前だ。この形態になれば俺の莫大なエネルギーが血潮の如く循環を始める。プロペラが水滴を弾くように、相手の魔法は掻き消されてしまう。
「俺の勝ちかな、まだ猫を被ってるみたいだけどお前さ、魔王じゃないだろ」
「何の話かな…?私も奥義を使おう」
相手の魔力出力が高まった。いや、弱まっているのか?見た感じ、回避は不能。
これは…弱体化魔法?いや違う、これは!
「果てて死ぬがいい、"怠惰衰弱波"」
「大蛇剣:幻夢霧散」
この技は剣に纏った気によって放出系の技を限りなく受け流す技。"大鏡"を使わなかったのはこの技の方が成功率が高く、リスクも低いからだ。
反射して味方に当たっても面白くないしな。
この技が功を奏しほとんどダメージはゼロ。
「ふざけるな…ふざけるなよ…!」
「あれ、素が出てるぞ偽物。はやくその体から離れろよ」
「黙れ!お前さえいなければ私の計画は成功していたというのに!!」
「うん、そうだね。どうでもいいよ人を支配するような奴の企みなんて。でも一つ聞くぞ、今はまだ戦闘中だが、わかってるか?」
「……は?」
その時、俺と、三方向に散った仲間たちを頂点に魔王を取り囲む結界が出来上がる。
「アッシュさん、準備完了です!」
「最後の大仕事だ、気張れお前らァ!」
特殊結界への干渉を開始。
内部での魔法発動、良好。
魔法発動用情報提供、完了。……………
ーーーーー発動。
「郷愁幻想回帰」
魔王を包むこの魔法は、対象の大切な記憶を強め、精神への攻撃に転じさせる。エリアを限定することで威力を高め、効果を深く与えるように設定した。この力によって、魂を縛る精神支配の術式は破られる。
魔王の体からなにやら黒いものが出てきた。支配が解除された魔王ゲーテを結界の外へ出した。
黒い塊は邪悪な気配を漂わせながら、異形の人型へと変化した。
「ご…ごきげんよう。私は魔人評議会より派遣されました悪魔族の魔人、スウェートと申します。」
なんだコイツ、ずいぶん下手に出てきたな。
「そうか。じゃあお前これから殺すけど、良いよね?」
「お待ち下さい!命だけはお助けを!!私は誰からかは言えませんが、指示を受けただけなのです!」
「だから何?」
「は、はい…?」
「それって、関係あることなの?」
「え…ええと…」
狼狽したな。
「お前が何らかの形で支配を受けてたりするなら納得できるけど、お前は最初から自分の意志で動いてるよね。だとしたら何でお前はそいつの命令を聞かないといけないの?」
そもそもそんな幼稚な言い訳でこんな重大な戦争犯罪を見逃すわけがない。
「それはあの方が強大で…」
「取り入りたいからだろ?」
「お話を聞いていただきたい!」
「はあ、何の話を聞けばいいんだよ?お前は自分からこんなことをしでかしたんだろ。理由がどうだろうが、けじめをつけてお前は死ぬんだよ」
「お、お待ちを!私を殺せばいろいろな方々に喧嘩を売ることになりますよ!」
最後は虎の威を借りたか。どこまでもクズだな、コイツ。
「知らねぇよ。もういいや、じゃあな。"呪炎獄"発動っと。」
「う…グアアアアァ!!私が死ぬ…?!馬鹿な…許さんぞ!アァアァアァアァアァ!!!」
魂までも燃焼させ、地獄のような苦しみを味わう事ができる炎。それが呪炎だ。なんて言ったか忘れたが、災厄の元凶は文字通り灰燼に帰した。
「終わったか…」
そこでこの戦争は終幕を迎えた。
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