四章十一話 魔王の夢遊
鳴り響く銃声と魔法の轟音。
俺は今、魔王と戦っている。一対一でな。
相手の攻撃を完璧に回避しつつ、魔法攻撃弾を自慢の拳銃から放つ。
オロコ曰く攻撃を受けると行動不能になるレベルの弱体化を受けるらしいので、ある程度の攻撃を回避できる間合いを保たなければならない。
「素晴らしい実力だな、まるで鬼神のごとしだ」
「褒めても銃弾しか出ねえぞ?」
拮抗する戦力。何かのタイミングで隙ができればいいが…
「お前、なんでこんな血気盛んに戦争したりするんだ。不満でもあるのか?」
「……」
「ダンマリか?お前の妹はウチに来たぞ。お前を止めたいんだとよ」
「エレーナ…」
「一体何に突き動かされているんだ?」
「……黙れ」
「おかしいな、優しい兄だと聞いたんだが勘違いだったのか。はあ…」
すると僅かに動きが鈍った。
「そこ!」
渾身の魔法弾を放ち、それは魔王の肩を貫いた。が、すぐに傷は再生して塞がってしまった。
「無駄だ」
「無駄なわけねーだろ。お前のエネルギーは無限かなんかなのか?」
「フッ、そう思ってくれて構わない」
煽ってまた隙を作ろうとしたが、効果はない。さっきのは何だったんだ?
『アッシュさん、聞こえますか?スーリヤです』
む、魔法通話だ。
『どうかしたのか?』
『おそらく魔王ですが…何者かに支配の術を受けています』
何だと?
『本当か?なんでわかったんだ』
『エレーナの側近が支配されていました。おそらく一部の部下を支配で黙らせる事で辻褄を合わせていたのでしょう』
うーむ、そんなことを言われてもなぁ…どうしようもないぞ。戦うだけでも手一杯なのにそれに気を使っていたらこちらがやられるぞ。
『手加減は多分無理だぞ。アイツ、めちゃくちゃ強いんだよ』
『魔法効果を解除できれば彼も味方するでしょう。なんとか弱点を作る事が出来れば…』
「何をしている。隙だらけだぞ」
おっと、危ない。話に集中していたらおちおち攻撃を受ける所だった。
突破口が見えてきたが、依然このノーダメージノーガード縛りの状況は変わっていない。
とりあえず皆に新しい指示を出さなければ。
ーーーーー
『こちらはアッシュ=ダイアモンドだ、現在の状況を報告する。
まず魔王と俺の戦いだが、一度持久戦に持ち込む。もうひとつは敵の状況だ。』
アッシュの手勢に一斉に思念が渡る。
『よく聞けよ、八魔将の一部と魔王は精神支配の魔法を受けており、完全に自由意志を操られている』
オロコはその言葉を聞いてハッとした。
(側近の表情が抜け落ちたようになっておったが、それが原因か。まったく、面倒なことじゃのう)
『魔法に詳しい者を支援してこちらに連れてきてくれ。それと、支配を受けていないと確認出来た魔将には事実を伝え、出来れば味方につけろ。以上だ、行動開始!』
第三者の介入という事実に一部の者は緊張感が高まった。
「なんで、兄貴が支配…?」
目の前の操られた腹心を見たからには信じずにはいられない。
「危ねぇ!何やってんだ嬢ちゃん!」
ミスジがそう叫びながらエレーナを突き飛ばした。
咄嗟のことで気づかなかったが、気配を消した魔将ソナタがナイフでエレーナを狙っていた。
「あ、ありがとう。悪いわね」
「奴さん、めちゃくちゃ強いぞ。油断してたらすぐ殺られるぜ」
「肝に銘じておくわ。ところで、協力してくれない?」
「勿論だ。俺の相手は説得しちまったからな。」
「誰ですかその者は、お嬢様?そんな牛風情…グッ!?」
不意に身体が動かなくなるソナタ。ミスジの妹分であるマルタのワイヤー拘束だ。
「兄ィ、やっちゃえ!」
「任せろ、闘牛…」
「小癪な人間が、こんなものでは止まるわけがないだろう!」
「うげ、バケモンかよ…」
「兄ィもちぎれるじゃん」
「そういうのは言わなくていいんだよ!」
金属製ワイヤーを途端に引きちぎるその怪力は魔人の種族特性だ。
「そろそろ目を覚ましなさいよ!」
エレーナは真正面から駆け出した。どこか覚悟が決まったかのような顔つきで。
しかしそれはソナタにとって隙でしかない。
「え、ちょ、本当に何してんだ!?」
エレーナの胸にナイフが刺される。と、思われたが…
「ほら、起きた?」
ナイフを持っていたはずの腕は地面に落ちていた。
もう片方の腕で自ら引きちぎり、彼の本当の自由意志が攻撃を止めていたのだ。
「感謝します、お嬢様。ご迷惑をおかけしまし…ブヘェ!?」
パァンと高らかな音でなるのはエレーナのビンタだった。
「心配させるんじゃないわよ!このバカ執事!」
「グッ…ひさしぶりのお嬢様のこのおてんば振り、ご褒美です…!」
「次は私がもう一つの腕を私がもぐわよ」
ソナタの素をみてミスジがドン引きしていると、周りに魔将が集まってきた。
それぞれ真実を知り、正気を取り戻した魔王の腹心。
「「「エレーナ様、申し訳ありませんでした」」」
「今はそんなことはどうでもいいわ。私の指揮下に入り、兄貴…じゃなくて魔王ゲーテを包囲しなさい」
「御意」
ソナタが魔将を代表し、そう一言告げた。
統率の取れた魔人軍は反旗を翻し、主を害し操る者へと敵意を向ける。
さらなる反撃の始まりである。
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