四章十話 燃え盛る戦火
バルト帝国に到着したので、オロコを使者として送り込んだが監視していた敵軍が動き出した。交渉は決裂のようだな。
「お前ら、戦いが始まるから警戒しろ」
皆にそう命令した。
「へへ、腕が鳴るぜ」
「俺様がいれば百人力よ!」
「船の操縦は私達にお任せください!」
モノたち少女連隊は置いて行きたかったが、どうしてもと言って聞かないので連れてきた。
「船の防衛だけだからな、お前ら。深追いせず船から出るなよ」
「「はい!」」
返事はいいんだが、行動が伴うことを祈るしかない。
なんだかんだ言ってこれが戦争の指揮官としては俺の初陣か。
「では子ども達以外全員で攻撃を開始する。俺から言えることは二つ。絶対に死ぬな、それと俺の攻撃に巻き込まれるなよ。行くぞ!」
相手の士気を下げるのは大切だ。そういう理由で俺は初手から必殺技を放つ。人を殺すのは嫌だけど、そのせいで俺の仲間が死ぬのはもっと嫌だ。人を殺さずに無力化…?そうだ!
「無属性魔法:磁気操作。拡張魔法:効果増大、これでどうだ?」
より強力に、より広範囲に発動した回転する電磁波は敵の武具を吸い寄せる。下位の魔人は対応できず武器を失った。
「何だコレ、俺の武器が!」
「魔法で保護してるのに何故効くんだ!」
当たり前だ。魔法で保護できるのは魔法だけ。俺はあらかじめ物理的にも効力のあるように発動したのだ。なぜなら物理を保護するやつは少ない。守ろうとすると重力も適用されなくなるため、使い勝手が悪くなるからだ。
成功だな。さて、他の奴らも今のところは大丈夫みたいだし、この武器を船に積みに行くか。
ーーーーー
バルト帝国跡地は戦々恐々としていた。
「武器を失った者は全員降伏し、一度西に寄り道を開けなさい!」
そう叫んだのはエレーナだ。
「姫様だ…」
「早くしなさい、なんであなた達は普通に戦争しようとしてんのよ!明らかに兄様の様子がおかしいでしょ!?」
「…確かに、そうかもしれん」
「なぜ私達はこの状況を飲み込んでいるんだ?おかしいだろ、だって魔王様は誰よりもお優しい方だった…」
エレーナは確信した。この騒動には何が暗躍する者がいる事を。
しかし中にはそれに気づかず暴れる者も沢山いる。
「スーリヤ、これまさか…!」
「おそらく精神操作の類いです、心してかかりましょう。何者か第三者がこれに関わっているとしたら…我々の敵は魔王殿ではないわ。その者よ」
「殺してやる…」
その時だった。若い執事姿の男が細剣を携えて歩いてきた。
「お嬢様、帰ってきてもらいましょう」
エレーナは違和感を感じた。送り出したのは彼だからだ。
「目を覚ましなさいよ、ソナタ」
「目を覚ます?なんのことやら」
操られていることすら認識できない高等の魔法。
「魔王様の命により、拘束させていただきます」
「私がおてんばですっごーく強いこと、忘れちゃったのね?殴って目覚めさせてあげるわ!」
主従対決が始まった。
一方その頃魔王軍本陣では…
「何者だ、魔王様に近づくな!」
ユキは先行し、魔王と対峙していた。
「私はユキ、貴方を止めに来た。」
「その眼差し、本気のようだな」
魔王が立ち上がろうとすると
「何こいつ、単身で向かってきちゃってさ」
「殺しちゃお、お姉ちゃん」
双子の姉妹にして、八魔将。ニースとフレースはユキに斬り掛かった。
「ごめんね。あなたじゃ敵わないから…どいて。"霊斬"」
そう技名を言うが早いか、何かの魔法を放ったニースとフレースは魔法をかき消され、真っ二つになった。そしてその死体すらも凍りつき消滅する。
「何をした…?」
「斬った」
「フッ、化け物め。私が相手してやろう」
ーーー
戦況はかなり優勢に運んでいるようだ。
皆もめちゃくちゃに強いからか、一定の体力温存ができている。
それにしてもミスジ…なんか強くなりすぎじゃね?
マルタとのコンビネーションは勿論、個としての実力さえもオロコに追いつかんばかりだ。殴っては敵が吹っ飛び、攻撃はほとんど避け、当たっても傷一つつかない。というか、避ける攻撃を選んでいるようだな。
ヘルメスは戦闘訓練をあまりしていないにも関わらず大暴れ。相変わらずのサーベルさばきで敵を刻んでいく。
キャンディス、オロコは最近仲が良く、今回は共闘しているらしい。
オロコが前衛として敵の攻撃をいなし、キャンディスが魔法攻撃で敵を焼いたり、封印したりする。
「アッシュ様は前に出ないのですか?」
モノが尋ねてきた。
「今は様子見してるんだよ。見えるか、あそこ?」
「アレは…ユキ様と魔王ですか?」
ユキを駆り出してみたら、遠目からみてもとんでもない戦いを立ち回っている。軽く幹部らしい二人を切り捨てていたし、勇者の力はやはり伊達ではない。
「異常なエネルギー波形を確認しました。発信元は魔王です!」
ユキが危ないかもしれない。そう思った時だった。
「え…?なにこれ、身体が!?」
魔王の剣を受けたユキが突如動けなくなったのだ。
「ヤバい!」
トドメとばかりに振り下ろされた一撃を受け止めたのはオロコだった。
「ふん、妖しい力を使わぬか。最後の一撃で手を抜くとは…愚かじゃのう」
俺とモノは胸を撫で下ろした。そして…
「いや、ふざけんなよ!仲間を殺したらただじゃ置かねえぞ魔王コノヤロー!モノ、俺が出る。船を死守しろ」
「了解しました!」
このままではオロコまでやられる。間に合うか…?
全速力で戦場を駆けている。するとちはやが目の前に魔法を発動した。
「アッシュさん、これを通って!」
空間移動魔法だ。
「ありがとう!俺も使うの苦手なのに凄いな」
空間系の魔法は演算や魔法陣構築が複雑で難しいのだ。ちはやは努力家だし魔法の才があるようだな。
魔法をくぐると目の前でオロコが戦っていた。
「待たせたな、お前ら!」
俺は割り込むように片手に持っていた拳銃を撃ち、剣を取り出した。
「妾はユキを連れ退く。奴の攻撃は受けるな、何らかの効果で弱体化するぞ」
撤退するオロコがすれ違いざまにそう教えてくれた。
「わかった、俺に任せろ」
「万が一にも油断するでないぞ」
「おう!」
「待って!私はまだ…!」
ユキがそう言いかけていたがオロコに運ばれて離れて、聞こえなくなった。
「魔王ゲーテっつったな?俺が相手してやる。負けたくなきゃ降伏しやがれ」
「虎の子の勇者が負けたが、まだそんなに余裕なのか?」
「俺は虎の子どころか、竜だからな」
近くで見ると、やはり異常なエネルギー量と波形だ。慎重にいかなければ負けるのは俺だろう。
大将戦の開始である。
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