四章八話 進空せし方舟
雨の降るバルトの帝都では、魔王軍が人間を捜索していた。
「魔王様、帝都は完全に陥落しました」
「…うむ」
「これからどういたしますか?」
「北方の大陸を攻め取るぞ」
「シルヴァー王国ですか、彼の国には教会や竜騎士が所属していますよ」
関係ないといった態度で魔王は嗤う。
「ククク、私なら勝てるさ」
「あの…魔王様、失礼ですが本当に本人でしょうか?やはりいつもと様子が違いますが…」
「あぁ、興奮しているのだ。これからの戦いを想像してな」
魔王の腹心達は忠誠を誓っている。が、最近の行動は昔から想像できない変貌ぶりを見せているのだ。
もし、主が誰かに操られているとしたら…?
そんな事を思い、彼女を外国へと遣わしたのだ。
魔王の進軍は、続く。
ーーーーー
アッシュの町に新設された会議室に、幹部たちが総出で集まっていた。
「これから魔王軍対策会議を始める。お前らの知恵が必要だから、忌憚なく意見を述べてくれ。まず現在の状況だが、ヘルメスが文献を漁ったところ魔王というのはおそらくとんでもなく強い存在だ。勇者と同レベルの者が徒党を組んで挑んでも勝率は五分五分だってよ。それと魔王の妹で俺達の協力者であるエレーナからの情報によると、魔王軍には上位魔人が五千、下位魔人が一万所属しており、それらを統括する八魔将という一線を画すレベルの指揮官八人で構成されている。」
最初にツッコミを入れたのはオロコだった。
「その者の言うことは信用できるのか?何か罠に誘導する気ではあるまいな?」
「それはないな。これを話した時イザベラが側にいたから大丈夫だ」
イザベラは"真実を見抜く瞳"を持っている。相手の思考を少しだけ読み取り、発言の真偽を判定できるのだ。
「便利な力よ。して、こちらから攻めるのじゃろう?」
「俺の基本方針としては、俺が製造した船に乗ってバルト帝国本土へ少数精鋭で殴り込みをかける。」
追随してエレーナがさらに状況を説明した。
「現在長距離飛行が可能な千人の上位魔人がこちらへ向かっています。大人数いる聖騎士団や竜騎士団の方々はこの国の防衛に回るのが良いと思います。」
上位魔人が千体…めちゃくちゃだな。ちはややミスジすら手こずる相手が千体となると、厳しい戦いだと思うが…来てもらった聖騎士団の団長カナデは自信ありげに発言した。
「私が鍛えた聖騎士団はチームを組めば上位魔人に匹敵するだろう。防衛なら尚更だな。戦力は我々だけでなく教会の神聖魔法師団もいる。上位魔人千体程度我々だけでどうにでもなるぞ」
対抗するように、隣の黒が基調の鎧を着けた大柄な男である竜騎士団の団長ローランも俺に自分の指揮下にある軍の凄さを言い募る。
「我々竜騎士団および王国直轄軍も負けていません、その総勢は一万を超え、その一人一人が訓練を欠かさず、精強な軍隊となっております。お任せください!」
二人はライバルみたいだな。
「そうか、じゃあ両軍に防衛は任せる。それと追加の戦力としてイザベラとベルを派遣しよう」
イザベラは民衆に人気で軍の士気を爆上げするし、ベルにはめちゃくちゃな強化魔法がある。それに聞いた話によると、信仰者〜魔法効果を受ける者〜が多ければ多いほど効果が比例して上がるという。
それにあの二人を他国の戦場に出すのは少し怖いからな。
納得したのか皆その作戦で了承してくれた。
「ところで質問なんだが、どのくらいの戦力で殴り込むんだ?」
カナデはそう質問した。
「百いるかいないかくらいかな」
撤退はこの数なら俺の魔法で行えるため、人数少なく精強なものを選出した。
「めちゃくちゃだ…」
「負けたら逃げ帰ってくるからその時は防衛を頼むぞ」
言外に先遣隊に絶対に負けるなという圧をかけてしまった。
「では諸君、万全の用意をして事に臨むぞ!」
「「「オーーー!」」」
各勢力の息もあっているし、これなら勝てそうな気がする。
戦争が始まる。億劫だが、自らの大切なものは自分で守らねばならない。そんな思いに駆られたのだった。
ーーーーー
作戦会議から二週間。
バルト帝国へと出発する日がやってきた。
俺達は完成した移動式新兵器のお披露目をした。
「でっか…」
「何じゃこの鉄の塊は、本当に船か?」
「カッコいい…アッシュさん、これのモデルって?」
「もちろんかの有名なヤマトさ、流石に同じスケールではないけどな。でもこれは、飛ぶんだ!」
「マジで!?最高じゃないですか!」
そう、俺が造ったのは飛行戦艦だ。趣味でコツコツコソコソ造っていたやつを子ども達に見せたら、みんなで協力して運転するようになった。
大きさで言えば巡洋艦程度の大きさで、見た目の割に軽い。
管制室には八つの制御用水晶が設置されていて、これを使うと対応する箇所を操作できる。エネルギー源は大気中の魔力を中核に吸収させ、運用する。また、それだけでは足りなかったが、装甲に太陽光発電の刻印魔法と、電力を魔力に転換するシステムを構築することでその問題さえも解決した。これを思いついた時流石に俺は自分のことを天才だと思ったね。魔力を電力に変換することができるのは知っていたので、そこから逆算して考えてこの機構を作った。宮廷魔術師ですら目をみはっていたので、嬉しかったのを覚えている。
まだ攻撃用の兵器を積んでいないから移動式要塞としてしか機能しないが、魔法防御の結界まで完備していて防衛にはとんでもなく強い。
俺は一人で操縦できたが、子供達は一人一つずつ制御水晶をつかって操作していた。
そんなことを鼻高々に皆に説明したが、何故か胡乱な目で見られた。
「こんなものが世に出たら戦争の概念が変わるわよ、アッシュ君」
「これに武器が載って襲ってくるなんて想像したくないぜ、ダンナ」
すごい引かれて悲しい。理解者はちはやだけのようだ。
「まあいいや、乗れ。造っちゃったものは仕方ないんだから。出発するぞ!」
ゴウンと音をたてて戦艦は飛び立った。
「言い忘れてたな、コイツの名前は"汎用飛空要塞"だ。」
速度十分、制御盤正常。完璧な航行を見せている。
こうして俺達は意気揚々と戦地へ向かうのだった。
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