四章七話 亡命者
城にて数多の戦闘音が響く。
シルヴァー王国のある大陸の南方の大陸の人間国家バルト帝国は、魔王の襲撃を受けていた。
玉座の間にてある親子が会話していた。
「スーリヤよ、お前は逃げなさい」
「お父様はどうするんですか!」
「バルトの帝王たる誇りをかの魔王とその一派どもに見せなければならぬ」
「死んでは意味がありません、一緒に逃げましょうよ!」
「まだ民が逃げている。私が逃げれば次に追われるのは民たちだ、しかし王家の血を絶やす訳にはいかんのだ。わかってくれ、私の愛しい娘よ」
入口の方で轟音が響く。
「早く行け!」
どうしても決意が鈍る。何が正解かを考えて頭の中でループしていた。
すると、小窓が割れて同じ年くらいの魔人の少女が入ってきた。
「あなたは…まさか!?」
「逃げるわよ!私に任せて、バルト王」
「…行け!」
その魔人は王女であるスーリヤを連れ、その場を脱出した。
「お父様…」
「悲しいわよね。ごめん、ごめん…」
二人の女性は涙を流しながら海の方向へ逃げていった。
ーーーーー
で、ここまで逃げてきたというわけか。
「魔王に滅ぼされたってこと!?」
「はい、無念です…」
俺の向かいのソファで涙ながらに事情を話してくれたのは、隣の大国バルトの王女スーリヤだ。なんでも祖国は魔王ゲーテ軍を名乗る軍隊に蹂躙されたという。そして…
「ムゥーーーッ!」
その側で拘束されているのはその亡命を助けた魔人の女性だ。
どちらも齢は十八くらいで、とても美人だ。
何故拘束されているかというと…
俺がこの二人がいるテントに入ろうとしたまさにその時、この魔人娘が飛び出してきて攻撃してきたのだ。
『なんて大きな気配なの…スーリヤに近づかないで!』
いきなり小柄な二本の剣を操り、綺麗な構えで斬り込んでくるのでつい…
『びっくりした、落ち着け!』
と叫びながら本気の速度で首を掴み、弱体化魔法をかけた。
『せっかくここまで来たのになんであんたなんかに負けないといけないのよ…!』
何もかもが急すぎて状況が飲み込めなかったが、とりあえず説得を試みた。
『お前さ、一回落ち着けよ。まず負けたとかはどうでも構わないんだけど、突然襲ってくるのは違うだろ?それに俺はお前の敵じゃないんだよ』
『うるさい…うるさいうるさい!私に出来ることはもう彼女を守ることだけなのよ、離しなさい!』
とまあこんな感じで聞く耳を持たなかったので拘束させてもらった。
「アッシュ殿、本当にすみません。彼女、色々と嫌なことがあって気が立っているの」
まあ俺の正体がわかって、更に人を守ってて、俺の人となりを詳しく知らないやつなら警戒しないほうがおかしいか。
「まあいいよ。他のやつに危害を加えてたら流石にぶちキレたと思うが、殊更お前たち…じゃなくて貴殿ら?の抱えている事情も深刻みたいだしな」
「寛大な措置に感謝を。アッシュ殿、私達に敬称は不要です。気軽にお話していただいて構いませんよ」
ありがたい。まだそういう礼儀作法は勉強中なのだ。
「スーリヤ!」
ドアがバンと開いてイザベラが入ってきた。息切れしているあたり、走ってきたのだろう。
「イザベラ…」
「辛かったわね、生きててくれてありがとう」
「ええ、私も貴方に会えて良かったわ」
二人は昔から親交があり、仲良しだったという。
「アッシュ君、お願いがあるの」
む、お願い?多分スーリヤさん関係だが、俺がこの子にできることなんてあるか?
「できることならなんでもドンと来い」
「この子の敵討ちに付き合って!」
「おう!任せ…え?」
敵討ちに付き合う…それで他国で挙兵するって、流石に越権行為じゃないか?
「ウチとバルト帝国は同盟を結んでいるから対外的にも大丈夫なの、このままじゃバルト帝国は魔王に軍事力を背景に支配されるわ」
「救けるという体で挙兵するんだな?」
「そういうこと」
「わかった、任せろ」
「そんな、貴方たちを戦いに巻き込むなんて!」
葛藤があるようだ。
「まあどうせ次に狙われるのは俺達だろ?本国に攻め入られる前に潰すのがいいだろ」
さっき聞いた話だと、魔王軍は武力で世界を獲ろうという雰囲気だったしな。
「そんな簡単な話ではありません!」
「うん、わかってるよ。でも本土で戦うよかマシだな、デカい被害が出るから」
「…わかりました、では私も協力します。それでいいよね、エレーナ?」
エレーナと呼ばれた女性はコクンと頷いた。
「拘束を解いてやれ、モノ」
拘束具と轡を外すと、エレーナは頭を下げた。
「早とちりして本当にごめんなさい」
「いいよ。誰もケガしてないし、頭を上げてくれ」
「ありがとう、私はエレーナ。私の兄を止めたいの。よろしく頼むわ」
兄?
「あ、言うの忘れてたけど私は魔王ゲーテの妹よ」
衝撃の一言。
「「えええええ!?」」
モノが再び拘束しにかかったが、それを俺が止めた。何故なら、敵だとしてここでその正体を明かすメリットが一つもないからだ。何よりこの距離なら何をしようが俺ならこいつを殺せるだろう。
「兄上はあんな非道な人じゃなかったはず…幼いときからすごく優しくて、半年前までは誕生日を祝ってたくらいなのよ?絶対におかしいもの」
本性を隠してた、とも言えるがいつも一緒にいる兄妹からそれを隠すのは至難の業だ。
「なんとなく事情は察したよ。よろしくな」
流石に驚いたが、ここで俺が警戒した態度をとれば彼女の立場が悪くなると可哀想だから、毅然と受け入れる。
そんな事があって、厄介事を一つ抱えてしまった。
「まずは情報収集だな。おい、ヘルメ…」
「聞いてたぜ、俺様に任せとけ!」
察しが良くて優秀だ。
「あとイザベラ、アレの製造許可願を義父さんにあげといて!」
「う〜ん、仕方ないわね…いいわよ」
うん、俺の趣味も叶って、国も守れれば一石二鳥!お、それに厄介事を押し付けたあの国王さんに嫌がらせもできたから、一石三鳥か!
あの設計図を見たら国王は頭を抱えるだろうか…
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