四章六話 竜の開墾
森の中へ沢山の人が入っていく。
愉快そうな声を響かせながら、木を切り運ぶ。が、そこに忍び寄る多くの影
「魔物がでたぞ!」
「魔狼の群れだぞ、下がれ下がれ!」
その集団のリーダーは角笛を吹いた。
「援軍が来るまで防衛だ、絶対に焦るなよ…」
森の中を大きな剣を携えて走る一人の女性。
宙を蹴り、狼に狙いを付けると、鉄砲玉のように加速し命を刈り取る。
「ユキさんだァ!」
「逃げろ、巻き込まれるぞ!」
大剣を持ち綺麗な歩法で狼達の攻撃を最低限の動きで避け切り、一匹ずつ確実に仕留めた。
「あの強さ、流石はユキさんだぜ」
「アッシュ様が連れてきた謎の剣士だろ?やっぱりあの人見る目があるんだな」
魔狼は全て倒され、空気が弛緩した。
すると、後ろから数人の少女達が走ってきた。
「ユキさん、速すぎですよ!」
「そうです、コレじゃ私達ランニングしてるだけです〜!」
「ハァ、ハァ、もう無理…」
そう言いつつ周りを警戒し、調べる少女たちにユキは笑いかけた。
「ごめんね、ちょっと危なそうだったから。皆に怪我して欲しくないでしょ?」
彼女はユキ。アッシュのもとで働くしがない勇者である。
ーーーーー
開拓計画が無事に発動し、俺達は開拓予定地に到着した。
ブラックオパールが集めてきたスラムの者達や俺の計画に賛同した亜人種たちが力を合わせ、新たな街を作ろうとしている。
「アッシュ君、進捗はどう?」
「お疲れ、イザベラ。順調も順調だよ。見ればわかるだろ?」
「ふふ、そうね。ユキさんやちはやさんのお陰で開拓で出た魔物からの犠牲者も出ていないわ」
流石に全ての開拓隊に俺の手勢を随行させるのは厳しいし、効率が悪いから、開拓隊には魔法付与した角笛を持たせて危険があったら呼ぶ、というシステムにした。
人手が足りない。集めたスラムの人達もいきなり働かせられるわけではなく、教育が必要だ。今の今までサボっていたということはなく、使える人を使って少しずつやっている。
開墾ができた土地は王宮の測量士が地図を書き、俺達で区画整理を行う。主要幹部の家は大体木造になってきていて、本当に作業は予定通り進んでいた。
「それにしても、貴方は破天荒な開拓の仕方をするわね。従来の方法じゃ考えられないわ。スラム街の雇用問題まで同時解決するなんて。それに彼らの意識もとても高くて、そこら辺の作業員よりもよく働いているわよ」
「まあそこはあいつらの意思だろ。人はやる気があれば誰でも何かできるようになるものさ」
美味い飯と自分達が街を作っているという達成感、これだけで彼らは前の生活より遥かに幸せなようだ。
ちなみに俺の仕事は道具製作だ。
俺は龍人の里の機織りやエルフ相伝の魔法付与、それに牛人の鍛冶。色々な技術を吸収して便利な道具を作る。例を挙げると体温調整服、疲労回復アクセサリー、自動研磨斧など、便利グッズみたいな性能の物だ。
食料については竜人の里の人達が獲物を狩り、ベルやモノが調理して配って回る。
新しい俺の工房で、ある紙を見つけたイザベラは俺に質問してきた。
「これは何の設計図なの?この前からコツコツ描いてるけど」
「う〜ん、新兵器っていうか、趣味っていうか…」
「見せなさい」
有無を言わさぬ命令形。
「…これ、造る気?」
「勿論、かっこいいからな!」
「予算はアッシュ君持ちだからね」
「はい、わかってます…」
まあこの新兵器はさておきイザベラも行ってしまったし、仕事をしなければ。
書類に目を通してハンコを押す。
開拓を始めてからというもの、先見の明があるのか俺達の町に移転してくる者が多い。もちろん人手が足りないので働けそうな人やもうどこにも働き口がなさそうな者を受け入れている。
今まで指揮系統は有耶無耶な感じだったのだが、ここまで大所帯になってくると決めなければならないだろうな。
あぁ、忙しい!!
「ぎゃあああ!町中で戦闘だ〜!」
はぁ?何が起きてるんだよ。
外に出てみると、魔法使い同士が町の上で魔法戦を繰り広げていた。
ん?これ、なんかその辺の冒険者じゃ出せない火力だぞ。一体誰だ?
「何してんだ、やめろ!」
と、注意すると魔法が飛んできた。
「女同士の真剣勝負に水を差さないで下さい!」
こいつら、被害を何も考えていない。
とりあえず俺は一人を掴んでまだ舗装していない道に叩きつけた。
もう一人の魔法を俺に撃ったバカもお仕置きである。
「お前、こいつを食らってみるか?」
取り出したのは赤くて跳ねるバネのような小さな槌。そう、ピコピコハンマーだ。魔法で壊れにくくてよく音が鳴るようになっている。
防御魔法を張ってきたのでピコピコハンマーでひたすら殴る。
ピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコ。
あまりのパワーに防御魔法は砕けた。
「ハァ!?そんな攻撃アリ!?ぶっ!ちょ、痛…」
ピコピコピコピコピコピコピコピコピコピコ。
おもちゃのような武器で滑稽な音を鳴らされながらボコボコにされ、魔法使いの女のメンタルはボロボロになった。
「ご、ごめんなさい、すいませんでしたー!」
あえなく土下座する女性。
「お前、誰だ?」
「え、えと、エルフ族のパールです…」
よくみたら耳が尖っている。もしやこいつ、エルフ族のなかで厄介者扱いされてるやつか?
ちなみにもう片方はルーシーという派遣された宮廷魔術師だった。
「何で揉めてたんだ?」
「「あいつが悪い!!」」
話を聞くと、俺の魔道具直売所で売ってたラスト一個の杖を取り合っていたらしい。
「お前らにはお仕置きが必要だな」
「「えぇ!?」」
「おーい、商店のおっさん、店にしまってるあのチョーカー持ってきてくれ!」
「ア、アッシュ様に話しかけられた…お安い御用です!」
持ってきたのは二つのチョーカー。
これに刻まれているのは、図書館で見つけた魔法だ。これを食らうと…
「え?なにこれ、体中冷たいっていうか、やばいっていうか」
「ギャー!なんか全身スースーする!」
全身に濃度百倍の冷却スプレーみたいなのを掛けられたような感覚になり、しかも急に強くなったり弱くなったりするのだ。
俺も食らったが、これはマジでヤバイ代物で、あ…失禁してしまった。これは大分地獄絵図だ。雇った衛兵に運ばせた。
「ちょっとやりすぎたかな…?」
「これ、どうしますか?」
「ぶっ壊して捨てとけ。やっぱりこれロクなもんじゃねぇわ」
厄介な奴も千客万来にしたは良いものの、あんまりこういうトラブルが続くと困るな。
「さて、昼飯でも…」
と思っていたらモノが走ってきた。
「アッシュ様、国王様から手紙とお客様です」
おいおい、なんてタイミングだよ。
「誰が来たんだ?」
「隣国からの亡命者です」
「亡命者?どういうことだ?」
隣国といっても海の向こう、そう簡単に来れないだろ。何で俺のところに?
「奥様のお知り合いで、傷心の為ここに来たとのことです」
ふむ。つまり…
「王族ってコト?」
「だそうです」
めんどくさァーい!そう叫びたくなったが、それは流石に不作法過ぎる。とりあえず会って話を聞くとするか。
俺は教えられた客用テントに向かった。どんな人が来たんだろうなぁ…
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