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四章二話 式典と大義

慌ただしい聖地グエルでは、礼服のような物を着た一団が馬車から降りていた。。

まあ俺達なんだけどね。引っ越しの件などで忙しくしている中でキナ臭い動きをしている教会の式典に出席しないとならないなんて、かなりいい迷惑だ。

式典では武器の携行は禁止なのだが、念の為俺の空間収納にみんなの武具を詰めて出発した。それにしても前に来た時と違って人が多く騒がしい。

「あの方がアッシュ=ダイアモンド公爵様なのね」

「周りの人もえらい綺麗だな。それに本人も良い器量じゃないか」

「あんなに女性を侍らせてるぞ、おしどり夫婦という噂だが、好色家

なのか?」

「それにしても聖女様はいつもお美しいな…」

俺達も目立つようで、色々と聞こえてくる。

「面倒なことが起きそうだな」

「ふむ、怪しい気配も仰山感じるのう」

「そうなんですか、式典で盛り上がってる賑やかな町にしか見えないですけど?」

「ちはや、油断するんじゃないぞ。僕がいるから大丈夫だけど…一応離れないでくれよ!」

何に興味を持ったか、ベルまで付いてきた。

ちはやが強いことを知ってるのでちはやにくっついて離れようとしないが、怖いなら何故来たんだろう。

周りを見渡すと、この前の集まりで見かけた貴族の顔もちらほらあるな。ちなみに今日のメンバーはイザベラ、ちはや、ベル、オロコ。あと馬車要員でミスジとマルタだ。

護衛としてセノ、モノ、ラムダが付いてきた。

「もうすぐ式典よ、アッシュ君。身だしなみには気を付けて」

そう言ってイザベラは襟を直してくれた。

「ありがとう、イザベラ。これは内密にしてくれ。式典中に十中八九騒ぎが起きるから俺のそばを離れるな。教会のやつらが何かしでかすようなら、証拠を掴んだ上で潰すから、気づいてないふりをしろ」

実は馬車移動中、ブラックオパールの使いに会ったのだが、その時に渡された文書には、式典で事を始めるということが書いてあった。どれだけ調べても詳しいことがわからなかったことから、本気でまずい魔法を使ったりする可能性がある。

「ええ、わかったわ。頼もしいわね」

「それと、ベルには言うなよ?」

「当たり前よ。絶対に騒ぎ出すわ」

緊張感が走りながらも、俺達は会場へと向かった。


ーーーーー


大聖堂の隣に造られた広場のひな壇の上から、白いヒゲを生やした長老の一人が挨拶を始めた。

「皆様、お集まり頂き誠にありがとうございます。今回の式典で、我らが主神への信仰をさらに深めていきましょう。では、ーー様の式辞から…」

コロッセオのような構造の建物の本来なら試合でも行いそうな広場には、沢山の人が何か祈りを捧げている。あの人たちは外でも見たな。"救いの会"といってまあ一言でいえば狂信者。いつ見てもどこか様子がおかしい。屋敷の邸内に侵入していたこともあり、少し苦手だ。それと、馬鹿に人数が多い。

「アッシュ君、なんか…あの人たちおかしくない?」

「あの者達に変に神聖力が蓄積してます、アッシュ様」

目を凝らすと、渦巻くように神聖力が集まっている。

床には…魔法陣?見たことがない術式の魔法だ。

すると、後ろの席に座っていた長老達が立ち上がり、集積されたエネルギーを制御し始めた。

「では今回の式での最も重要な儀を行わせていただこう。さて、アッシュ=ダイアモンドよ。貴様が邪悪なる竜であることはわかっているぞ。まんまと誘われおって、ここで処刑人を呼び出し、始末してくれる!」

まずい、何かの魔法が発動している。中央で祈りを捧げていた"救いの会"の人達が一斉に倒れた。

「アッシュよ、奴らの息が絶えたぞ」

死んだ?まさか…生贄?何をする気だ、こいつら。

「「勇者召喚!」」

数十条の光が走り、高い席にいた人達をも飲み込んで消滅させた。俺が防いだところにいた人達は助かったが、会場に出現した繭は、周りのエネルギーを取り込み、密度が上がっていく。勇者召喚だと?

勇者といえば…

ミスジとベルと旅をしていた時の昼下がりである。馬車を走らせながら、昔やっていたRPGゲームの事を思い出していた。

『なあベル、勇者とか見たことあるか?』

『なんだい、いきなり。勇者?』

『そう、勇者。実在するんだろ?』

『うん、見たことあるよ。なんなら僕の知り合いにいたよ、死んじゃったけどね』

『へえ、やっぱりいるのか。詳しく教えてくれよ』

『いいけど、皆知ってるようなことしか知らないと思うよ。まあいいか。勇者はね、世界が存亡の危機に陥ると彗星の如く現れる異界の戦士なんだ。』

何を以て危機なのかはさておき、伝承によると、人々の助けを呼ぶ声に誘われてどこからともなく現れるという話もある。

災い、人の助けを呼ぶ声、突然現れる強大な戦士。一体そのエネルギーはどこから生まれるんだ?

「まさか、勇者の出現には災いで犠牲になった人の魂を利用してるのか…!」

集められた"救いの会"は生贄で、災いへの助けを呼ぶという行為を祈りと魔法によるエネルギー集積で擬似的に再現する。

そして()()は反応し、そこに適性をもった魂を異界から呼び寄せ、魔王をも屠る戦士を生み出す。

「お前ら、人の命を何だと思ってんだ?」 

「かけがえのないものだと思うぞ、駄竜よ。しかしこれは大義だ。この国を完全に主神に譲渡するためのな。」

そのくだらない台詞が終わった直後、光の繭の中から一人の女性が現れた。

長い黒髪を靡かせ、トレンチコートのような構造の装備を身にまとったたその姿は美しく、その背には両手で持つような大剣が用意されていた。勇者召喚の魔法に刻まれた、支配の術式が発動し、それを通して長老の一人が命令を降した。

「勇者よ、アッシュ=ダイアモンドを殺せ!」

理不尽に支配されたその刃が俺へと向かう。

こうして勇者と竜の戦いは、不本意にも始まってしまった。


こんにちは、一介です。今回の話は面白かったですか?

この物語が好き、このキャラが好きという方は是非いいねや感想、お待ちしています。有識者や先輩ユーザーの方々もアドバイスお願いします!では、また次回お会いしましょう。

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