三章九話 牛人の帰郷・其の二
里の中心にある広場は飾られており、祭りのような様子だ。
「よお、よく帰ってきたな」
「誰だ?」
「おい忘れるなんて酷いじゃねぇか、オレは族長の息子だよ。よく遊んでやったろ!」
嫌がらせされた記憶しかないが、コイツはどういうつもりだ?
「じゃ、お互い頑張ろうぜ。良い部下になってくれよ?」
「む、それはどういう…?」
質問しようとすると、高い台に
「静粛にせよ!儀式の掟を説明する。挑戦者は腹心達と共に森に潜って貰う。最後まで生き残ることが出来た者を次期族長とする。また、この儀式に参加する代償は次期族長への忠誠だ。では、試練の場所、竜の森へと向かうがよい」
腹心、部下の参加が可能なのか?
「おい兄弟、そのガキなら連れてっていいぜ!ガハハハハ!」
族長の息子がそういうと、他の奴らもどっと笑った。
「てめぇら…最初から勝たせる気なんかねえだろ!」
俺を負かして部下にしたいだけだったようだ。
「兄ィ、あたし出るよ!」
「よし、お前の力を見せてやれ。武具はあるか?」
「持ってきてあるよ!任せてよ!」
「無理はするなよ、これは俺の闘いだからな」
竜の森に行くとその周りには結界が張ってあった。それと神殿のような物と魔法装置。かなり古いもののようだな。しかし魔法効果は強固に発動しているようだ。
「この結界内に入ろうとすると森の中のどこかに飛ばされる。最後の一人になるまで戦い続けろ。そして中にいる飛竜を倒すことが出来れば試練は終了だ。なお、中で死んでもこの祠に無事に戻ってくるのみ。勇敢な戦士として大胆に攻めるが良い!」
「兄ィ、大丈夫かな?」
「死んでも大丈夫らしいが…信用できん、死ぬな」
「わかった!」
意を決して結界に触れると、森のどこかに跳んだ。
「マルタ?」
マルタがいねェ!何処に…?まさかバラバラに跳ばされるのか?
「兄ィ、何探してるの?」
あ、頭の上か。
「そこにいたのか!返事しろい!」
「あはは、あたしがいなくなってびっくりしたの?」
「油断大敵だぞ、マルタ。俺達は半分よそ者だから狙われやすい」
よくダンナは
『戦闘のありそうな所では絶対に警戒を解くなよ?死ぬから』
と教えてくれていた。
「兄ィ、索敵してみるね?」
「おう、俺が守るから素早くやれよ」
「無属性魔法:温度感知索敵」
周りには音がしない。が…
「静か過ぎる、誰かが」
「兄ィ!囲まれてる!」
ガッデム!
「今更気づこうが遅ぇ!やっちまえ!」
族長の息子のグループではないな。
俺は盾と片手斧を取り出した。どちらもダンナが作った高性能な物だ。
『お前は、小細工とか向いてないから単純に使いやすい丈夫な斧と盾な。ただどちらも色んな握り方ができるようにしたから上手く扱えよ』
切れ味抜群の斧は魔力を込めるとリーチと速度が格段に上がる。
盾も槍による突きの衝撃すら和らげる。
これ、ただの武具じゃねえだろ!
マルタは短剣を二本、アッシュに教えてもらった特殊な持ち方で扱って戦う。腿や足の建を狙って切り裂き、動けなくなった相手の首を刈り取る。元気いっぱいのマルタには似合わないような戦い方だが、堂に入っている。時々ワイヤーとかいう金属線で敵の動きを封じたりと、手数が多いな。
「コイツら、強いぞ!」
「三十人で戦ってなぜ勝てねぇ!?」
マルタは魔力が少ないせいか、支援魔法や魔力消費の少ない無属性の魔法しか発動できない。しかし、その代わり人間離れした体の軽さと、それに見合わぬ怪力を持ち合わせている。エルフ種は魔法が得意な筈だが、何故だろう。
何はともあれ、俺達は一つの団体を皆殺しにした。
「兄ィ、勝ったね!」
「そうだな、よくやった!本当に生き返れるんだろうな、コイツら?」
「それはわかんないけど…負けたらそれを試されるのはあたい達だったよ」
続けて森を警戒しながら進むと、争う音がする。
二人で草葉の陰に潜伏して見ていると、戦っていたのは飛竜と族長の息子とその仲間たちだった。
族長の息子は飛竜を相手になんとか片手剣で渡り合っているが、ついに倒したようだ。
「行くか。マルタ」
「待って兄ィ!何か飛んできてる!」
「ん、あれは…?」
赤く大きな体躯に一対の羽、四本の足には鋭い鉤爪。
「嘘だろ…赤竜か?!」
その魔力総量は上位魔人に匹敵し、空の覇者と呼ばれる生物である赤竜が、結界の外側に姿を現した。
そして、口から高出力の熱線を放ち、結界はいとも簡単に破壊された。これでここから蘇生の効果は発動しないだろう。
「ば、バケモノだ!逃げろ!」
族長の息子はそう叫び、武器を捨て全力で逃げた。
しかしその素早い判断も虚しく、脚をもがれた。
「嫌だ…死にたくない!オレはこんな所で死ぬような…あああ!」
振り下ろされた鉤爪は、ガキィンッという甲高い音を上げて防がれた。
「痛え!なんつー威力だ!」
「兄ィ!なんで出ていったの!殺されちゃうよ!」
当たり前だ。勝てないことなんてやらなくてもわかる。
「でもな、マルタ。俺はそれがたとえどんなヤツだろうと、同じ故郷で暮らした友を見殺しにすることはできねェ!」
「兄ィ…!」
「それが、漢ってヤツだからなァ!!」
ミスジは吼えた。内なる恐怖を振り払うため。
「かかってこい…決闘だ、デカブツ!」
「グルァァァァァァ!」
そして、無謀な戦いは始まった。
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