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三章八話 牛人の帰郷

「あははは!速いねぇ、兄ィ!」

「ガハハ!まだまだ速く走れるぞ!」

小さな少女を背に乗せた牛男は街道沿いに走っていく。

よお、俺は牛の亜人でミスジってもんだ。

俺が今妹分のマルタと旅道具を背に乗せて走ってるのには訳がある。

それは昨日の昼のことだ。

「おいミスジ、何か悩んでるって聞いたが、どうしたんだ?」

貴族との交流会から帰ってきた俺の主であるアッシュのダンナがそう声をかけてきたんだ。もちろん俺にはダンナの読み通り悩みがあった。同族の事でな。

つい先週位から手紙が滅茶苦茶な量届いてたんだよ。

蓋を開けてみりゃあそれはそれは酷かった。

我が同胞、ミスジへ

 貴様が偉大なる某より名を賜り、立派に仕事を勤めていることを聞いた。貴様のその一族への貢献、誠に感動した。ここで一つ族長より命令がある。今すぐ帰郷し、族長選出の儀へ参加せよ。そして貴様の力を証明できれば、勘当を解き、一族の繁栄に力を貸すことを許そう。なお、土産の持参を忘れずにするがよい。

と、書いてあった。ふざけんな!あんな仕打ちをしといて…

俺の母親は牛の亜人の目線でいえばかなり美人の部類で、現族長は母親に恋をしてたんだ。だけどよ、俺の母親は俺の父親とくっついちまって、それで恨みを買ってたんだ。だから俺も村の現族長の子分からよくいびられてたし、大人たちも俺のことを保身のために認めようとしなかった。その事を話すと、ダンナは…

「つまり、自分たちが邪険に扱ったせいで乱暴になった同族を手に負えないからって追い出した癖に、出世したら一族に身を捧げろって言ってんのか?酷い話だな…」

すごく同情してくれた。しかし放っとくとダンナの迷惑になりそうだ。

「どうするんだ、従うのか?どっちにしろケジメをつけないといけないだろ」

「一度帰って、とりあえず儀には参加しますよ。で、その儀ってのが戦いで一番強いやつを選ぶってやつなんで、適当にやって、絶縁して帰ってきます。でも、俺もここでの仕事が…」

「わかった。お前の仕事は他に回すから、行って来い。なあに、困ったときはお互い様だろ?」

ということがあって、俺は今帰郷しているという訳だ。ちなみにこの妹分のマルタは、ついていきたいっていって聞かないから連れてきた。

「兄ィの故郷ってどんななの?」

「牛人だらけの森だよ。そんなに面白いとこでもねえよ」

「でも帰れるところがあるっていいね」

そうだ、マルタは故郷の村が邪教徒に滅ぼされてるんだったな

「まあ俺は勘当って言って追い出されてるんだけどな」

俺の場合は特殊な種族として生まれたからというところもある。ダンナと街に出たとき、街の人が俺と普通にしゃべってくれた時は驚いたもんだ。

「兄ィ、おなか空いたね」

「ああ、飯にするか」

マルタは明るい。その半生からは想像のできない元気さを持っている。

周りの子供たちは暗めのヤツが多かったからか、馴染めていなかったんだ。そんな時にあいつは俺のところに来て俺の仕事を手伝ってくれるようになった。アッシュのダンナはそういうのを否定するタチでもねえから、俺もそれを許してたんだが…

「マルタ。お前、他のガキ共と仲良くしなくて良かったのか?」

「うん。あたしあんまり皆とノリが合わないし、あたしは兄ィといた方が楽しいと思ったから」

「そうか、お前がいいならいいんだけどよ」

「それとあたし、人間じゃないし。じつはエルフの変異種なんだ」

「おぉい!?初耳だぞ!」

「だって誰にも言ってないもん。アッシュ兄さんにだって秘密にしてたんだよ?」

「あたしの母さんはエルフで、父さんが人間なの。でも違う種族の子供って…」

「聞いたことがあるぜ、無作為ランダムに何か異変が起きるんだろ?」

「そう。それであたし、生まれつきすごく力が強くって。それで気味悪がられて住んでた村を追い出されたの。あたしはあんまり覚えてないけど、それで旅して、大陸を越えて、その先で邪教徒の人達に捕まっちゃったんだ。だから、兄ィとお揃いだね!」

この底抜けの明るさは、自分を辛い現実から背けるためにマルタが自ら作ったものなのかもしれないな。アッシュのダンナに会ってから、よく勉強するようになったがその中で読んだ本にも似たような経験をした人物を見た。

「あぁ…そうだな、マルタ。俺達はお揃いだな。でもな?」

「なぁに?」

「もう隠さなくてもいいんだぞ?お前は家族を悲しませないように明るく振る舞っているんだろ」

「……」

「それはスゲェ事だし、誇ってもいい。でも今のお前は守る側じゃなくて、俺達に守られる側だ。辛かったらいつでも言っていいんだからな」

「…………うん」

昨日は火の前で歌をうたってそれから寝たというのに、今日のマルタはとても静かに眠りについた。

エルフ種は寿命が長いと聞くが、マルタが友達を作らないのはそれが理由かもしれない。俺は俺で長く生きられるが、どっちが先に死ぬだろう。

「おはよう、兄ィ!」

「ん〜。おう、朝か…」

「急ぐんでしょ、行こう!」

王都への道は馬車を引いていたから随分時間がかかったが、今回はかなり早く着きそうだ。体が軽い、かつてないスピードだ。まるで飛竜のような…

「いや、速すぎだろォ!」

「気づいた、兄ィ?あたしの仕業だよー!」

「支援魔法か!凄いな!!」

とんでもないスピードで森を抜け、谷を飛び越え、俺達は牛人の里に着いた。

「到着〜!!」

「相変わらずやかましい所だな、ここは」

実家に帰ると、両親揃って出迎えてくれた。

「ああ…帰ってきたのね」

「無事なんだな、我が息子よ」

「…ただいま帰ったよ」

村で唯一俺のことを可愛がってくれていた両親が、昔よりは老いたがいた。

「こんにちは!」

「あら、めんこい子を連れてきたわねぇ?」

「嫁か?」

「違ェよ!妹分のマルタだ」

ハァ…俺はなんだと思われてるんだ。

「とにかく今日は休んでおいき。族長選出の儀は明日だからね」

親戚達に挨拶をしたが、相手にされなかった。

やはり俺を一族の繁栄のために踏み台みたいな扱いにするつもりなのだろう。俺は道具じゃねえぞ…?

絶対に許さん、今回の族長選出の儀で吠え面かかせてやる。




こんにちは、一介です。今回の話は面白かったですか?

この物語が好き、このキャラが好きという方は是非いいねや感想、お待ちしています。有識者や先輩ユーザーの方々もアドバイスお願いします!では、また次回お会いしましょう。

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