三章七話 竜少女と思わぬ再会
「最高よ、アッシュ君!」
「お兄さん、こっちもお願いします!」
「これはどうじゃ?」
「アッシュさん。この服、着て欲しいな…なんて」
今日も俺の家は賑やかだ。
「それは露出が多すぎだ!」
「まあまあ、着てやればよい」
逃げようと思っても逃げられない。なぜなら…
「結界から出るなよ?」
異常がないか検査すると言われて結界に閉じ込められたからだ。それとこの姿だと筋力が全然なく、イザベラにすら力負けした。
魔法も文句なく扱えたのだが、貧弱過ぎる。
「キャー!可愛い!」
はあ、なんだこのおしゃれな服。イザベラが着たほうが可愛いだろうに。ん、なんだこれ?黒くて、布面積が小さくて、うさ耳?
「おい!?誰だバニースーツなんか用意したヤツは!」
「ほらほら、早く着るのじゃ。まだまだあるぞ」
「お前…覚えてろよ?」
「おーおー怖いのう、お嬢様。……プッ、クククク、ハハハ!」
うん、こいつお仕置き決定。
「終わったわよ」
助かった。
「アッシュ君、じゃあ仕事に行きましょう。その恰好じゃいけないから、このドレス着てってね」
ハァ…ヒラヒラしやがって、このドレス。
「サボっていい?」
「ダーメ!」
ーーーーー
「あの方は誰だ?」
「美しいな、王女殿下がエスコートしていらっしゃる」
「外国の姫君か?そんな御方が来るなんて聞いてないぞ」
貴族の集まりに行ったらイザベラが手を取ってくれた。
「おいで、アッシュ君」
正直これは役得かもしれない。カッコいいな、俺の奥さん。
しかしざわざわしている。視線が集まっていてしんどいが、我慢だ。
「何の集まりだっけ?」
「交流会よ。貴族同士で縁談を持ちかけたり、自分の立ち位置を確認したりして親交を深めあうのよ。地方の貴族達も集まる、年に少ない行事なのよ?」
「この状態で親交を深めてどうすんだよ、次来た時、『誰?』で終わるぞ」
「あ、父上が出てきたわ。少し静かにしましょう、アッシュ君」
話を逸らしたな!?と、会場の全員が跪いた。
「今回も、変わらぬ顔触れで貴公らと相まみえることができて余は嬉しく思うぞ。まず、領地の良き指導者として表舞台に立っている地方貴族の者達よ、感謝する。これからも励むが良い」
王にしては砕けた感じの口上だったな。だが確かな誠意を感じる、これがカリスマってやつか。
「次に国全体の政治、外交を担う中枢貴族達よ。私の下でその才能を腐らせず発揮しているな。感謝する。これからもこの国を、私を支える柱となるがいい。」
「「「「我らは御身のために、愛する母国のために!」」」」
忠誠心の高い臣下が多いようだ。この中の者達からは王に対しての悪意が全く感じ取れない。いつの間にかイザベラは国王の隣に移動していたようで、何か発言しそうだ。
「さて、ここからは無礼講。積もる話もあるでしょうから、お楽しみ下さい」
そこからは宴会のような様相を見せ始めた。
広間の真ん中で、若いものは舞踏を嗜み、そうでないものも酒を飲み近況報告に花を咲かせた。
派閥の重鎮は若い地方領主の挨拶を受けたりした。
「久しぶり、で合っているかしら。立派な地位になったものね、坊や。いや、お嬢さん、と呼んだ方がいい?」
俺にそう話しかけてきたのは、アメジストだった。そういえば地方領主に任命されていたな。
「フッ、人の悪い。あんたも板に付いてるな」
「アメリは元気かい?」
「大学で楽しそうに魔法の研究をしてるよ」
「そうか。ありがとうね、嬉しいよ。あの子は我が子の様に育ててきたんだ」
とても安心した様子で微笑んだアメジストは、さながら子を想う母親のそれであった。
「他の派閥と関わらないのか?」
「貴族の会話はあまり楽しくないわ。さっきも何人か話しかけて来たけれど、社交辞令ばかりで魂胆が多いから、苦手よ」
そういうの得意そうだけど、そうでもないのか?
「そうだ、アナタに言っておかないといけないこともあるんだった」
「何だ?」
「教会の上層部が何か動いてるみたいよ。キナ臭い動きをしているようだし、注意を払いなさい」
教会?イザベラが所属してる組織か。
「それとアナタ、教会に敵視されてるわよ」
「マジで?じゃあその動きって、俺が標的?」
「そこまで詳しいことはわからなかったけど、気をつけなさい」
そういってアメジストは去っていった。新しい問題が…動きを見せるならこの封印が終わってからにして欲しい。
イザベラがこちらへ駆けてきた。
「アッシュ君、誰にも寄り付かれなかった?」
「ああ、さっきまでアメジストと話してたけど」
「ふふ。気が利くわね、あの人」
「ん?」
「だから、アッシュ君に変な虫がつかないように守っててくれたのよ」
変な虫?
「気づいてないかもしれないけど、結構美人よ?今のアッシュ君」
あ、そういうことか。他の貴族たちは俺がこうなってることを知らないのか。
「わかった、一人にならないよう気をつける」
「うん、折角のパーティーなんだから、一緒に楽しもう?」
その日は、二人で色んな人に挨拶に回った。俺が名乗ると驚く人も多かったが、状況を把握した上で俺が女性貴族の作法をしっかりと理解しているところが結構高評価だった。
屋敷に帰ると、外でキャンディスが魔法の指導をしていた。
「もっと素早く魔力を練れ、戦場に出たら死ぬぞ」
この子供達に俺は戦闘技術を教え込んでいるが、どこを目指しているのか自分でもわからなくなってきた。
ただ分かるのはオロコの指揮、キャンディスの魔法、俺の装備、武器の提供やここにいる連中との戦闘訓練のお陰で、聖騎士団並みの戦力になっていることだ。まあ簡単に言うと、前の邪教徒の集団と対等に渡り合える、ってくらい強い。
俺は俺で仕事のない日は魔法を最大限利用したカッコイイ武器や兵器を造っている。
「子供たちはどうだ?キャンディス」
「優秀だな。まだまだ知識不足なところもあるが、今のままでも小国の軍隊なら相性関係なく余裕で勝てるだろう」
「まあそこはどうでもいいんだ。全員元気に訓練に出てるか?どこか思い詰めたようなやつとか」
「それは一人もいない。廃人と化していた者も少しずつ回復していってる。皆アナタの為にって一生懸命勉強しているよ」
むず痒い感じもするけど、元気なのはとてもいいことだ。ましてや寝たきりの子供も復活し始めたなんていい知らせでしかない。
「あ、関係ない話だが、牛の亜人が何か悩んでいたぞ」
ミスジが?珍しいな。なにかあったのだろうか。
「そうか。ありがとう、今度声をかけてみるよ」
今日は濃い日だったな。教会のことも調べなければいけないこともわかったし、来週には封印も解ける。それにしても何故俺は教会から敵視されてるのだろう。聖地であるグエルでは人助けもしたし、何なら邪教徒の軍団と戦って善戦したというのに。
まあ考えすぎても仕方ないな。今日はしっかり寝て、明日に回そう。
別に時間はたっぷりあるのだし、少しくらいサボっても悪いことはないだろう。
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