三章六話 竜の邂逅・封印の魔女
特別警戒されたテントに入ると、その中には牢屋があった。
「お前が魔女か?」
拘束されていた人物はローブを着て、いかにも魔女といった帽子を被って、
「バケモノ野郎、解放されたか…」
いきなり失礼なヤツだな!誰がバケモノだ。ムカついたので担いで尻をひっぱたいてやった。
「やめろ!痛いんだよ!…いや、痛ッ!わかった!やめてくれ!やめて下さい!!」
離してやると、めちゃくちゃ睨んできたがそれを完全無視して
「お前、調査によるとこの地域の資源を封印魔法で封じていたらしいなその理由を聞かせろ」
「何でお前に話さないといけな…いや、話す!だから降ろせ!」
反抗してきそうだったので担いでみた。効果てきめんのようだな。
「ハァ、私はただ…ただ振り向いて欲しかっただけよ」
「誰に?」
「決まってるでしょ!神よ!」
神、誰のことだ?まさか…
「コーレイアのことか?」
「あなた、呼び捨てにしたわね!?殺してやる…私は不届き者の首をいくつ捧げても司教にすらなれなかったのよ!」
こいつ、ヤバすぎだろ。まあ、コーラルの信者なら簡単に話を聞ける。
「俺はコーレイアの弟子だ」
「は?あんた舐めてんの?じゃあ名乗ってみなさいよ」
「俺の名前はアッシュ=ダイアモンドだ。ダイアモンドという姓はコーラル…いや、コーレイアにもらった。これで満足か?」
「う、嘘よ…あなたみたいな怪物が弟子…?」
だから、怪物じゃな…いや、人間からしたら怪物か。
「で、お前はお前の信仰する神の弟子に手をかけようとした訳だが、何か言い訳はあるか?」
「え…えと…ごめんなさい!神よ!見捨てないで下さい!何でもするから敵視しないで!」
こいつ、なんとかすれば利用できるのでは?
子供たちの先生となれば子供たちの実力も上がり、俺の知らない魔法まで披露してくれそうだし。仲間にしない手はないのかもしれない。
「わかってると思うけど多分お前死刑になるよ。俺ならなんとかできるかもしれないが、どうする?」
懐疑的な視線が飛んできた。
「……何が望みだ、禁術か?」
「魔法の先生かな」
「は?」
「お前を捕まえた子供たちに魔法を教えてやってくれないか?」
「………」
「疑ってるようだな。勿論禁術には興味あるが、それよりもお前が魔法を子供たちに教えてくれたらあいつら喜ぶと思ったんだよ。それに、俺はコーレイアの弟子だから俺に協力してるってことはコーレイアに協力してるみたいなもんだしな。」
「………」
考え始めたか。俺もこいつの死を免れる方法を考えなくては。
魔女、か。前にいた世界では魔女は迫害の対象だったな。何なら罪のない者までこじつけで処刑していたとか。こいつもどこか他の人から差別されたりしたことがあるのだろうか。
「わかった。提案を受け入れよう。何をすればいい?」
「そうこなくっちゃな!ぶっちゃけ、まだ考えてないんだけど…いいアイデアが少し浮かんでるんだ…あ、お前そういえば名前は?」
「私はキャンディス。元は人間だが故あって魔人になった。」
まあ禁術のせいだろうがな。
「じゃあ俺も改めて。アッシュ=ダイアモンドだ。俺はお前の命を預かるんだから、覚えとけよ?」
「フフ、死ななきゃ覚えてるだろうな」
良い教師も手に入った。西の地域の問題も解決した。一件落着だな。
ーーーーー
俺達は国に戻り、事の詳細を報告した。子供たちにケガもなかったし、俺も五体満足だ。弱体化させられた時はヒヤヒヤしたが、無事に帰ってこられてよかった。
そして、今。
「ふざけるな!これがいいアイデアだと!?いい加減にしろ!」
「だから、早くしてくれよ。斬首、火炙り、串刺し、どれがいい?どれを選んでも復活の確率は同じ。切腹ってのもあるぞ。俺の故郷で昔行われてた自刃の方法なんだけど…」
「御託はもういい。斬首にする。本当に大丈夫なんだろうな?」
「こっちには聖女もいるし、なんとかなるさ。潔く死んでこい。」
ということで、キャンディスの処刑が決定した。
裁判所に王女の夫である俺の権威をフル活用して大分ゴネたが、魔女が及ぼした被害は洒落になっておらず、公開処刑にでもしないと国民が納得しないため、死刑は免れないそうだ。全く、権力に屈しないいい裁判しやがって。なので俺は裁判長に一つの提案をした。「一旦死刑にして、蘇らせて贖罪させよう」と。
頑張って理屈をこねくり回して裁判長を納得させることに成功した。幸い俺の妻は聖女だ。死にたてほやほやなら多分蘇生できると言ってたし、上手くいくだろ。
手順はこの通り。
①キャンディスを処刑し、国民に首ちょんぱを見せる。
②目隠しの結界を張り、イザベラの魔法で蘇生する。
③オロコの幻術で死体の偽物をつくる。
これなら国民にバレずキャンディスを助けられる。
それにしてもこの作戦はスピード勝負だ。どこかのゲームと違って死体さえあれば魔法一つで復活するほど人の命は軽くない。
血液が欠乏したり、体の損傷が多すぎれば生き返れる確率は下がるし魂が何処かへ行ってしまうと人格が消滅して即アウトだ。
キャンディスにはああ言ったものの、割とギリギリなのだ。
そもそも死刑の予定のやつを助けるのだからそれでも構わないよな?
「これより大罪人である封印の魔女の死刑を執行する」
処刑人が口上を述べた。あいつは変装したヘルメスだ。
「待てー!まだ心の準備が!待て!あぁ゙ーもう!マジで覚えてろ、アッシュ=ダイアモンド!」
「あいつ、アッシュ様に捕まったから呪詛吐いてるぞ」
「惨めなやつだ。これで西の奴らも浮かばれるだろう」
民衆は色々といってるが、彼女は俺の滅茶苦茶な作戦にブチギレているだけだ。
そして、音もなくキャンディスの首が落ちた。
首が地面に着くか着かないかというタイミングで用意していた魔法陣が発動し、暗幕の結界が展開された。処刑台の下に待機していたイザベラが出てきてすぐさま蘇生の魔法を唱え始めた。
その間の三分で、俺は出来る限りキャンディスの遺体を修復する。
解析すると、魔人であるキャンディスの魔力の流出とともに予想以上に身体が損傷している。脚部が壊死し始めた。魔人の遺体の足は速いようだ。
「ヤバいぞ、色々と足りない…」
イザベラは詠唱と魔法陣の展開で手一杯。
血液と魔力の流出は止めた。しかし足はどうにもならない。いや…一つ…試すか!
「ヘルメス、黙って五秒数えたら俺の足を落とせ!」
「…わかったぜ、任せろ」
「封印魔法、起動」
俺の生来の足では拒否反応を起こす。せめて同じ性別、同じ血液型の脚を移植しなければ。
封印魔法を利用した性別の変更は禁術だ。あらゆる生物には男、女、どちらにもなる可能性を刻まれている。そのうちの男になる可能性を封印するというプロセスによって行われる。
俺の身体は男性型である可能性を封じられみるみる女性型に作り変えられた。
「いくぞ…旦那!」
「ーーッ!!」
クソ痛い。痛覚を切る余裕もなかった。気が狂いそうだ。
すぐさま脚を手に取り、魔法で接着させる。拒否反応は……ない!
「聖女ノ奇跡:生命復活」
神の力によって全身の死によって乱されたエネルギーは調和し、心臓は再び動き出した。次第に血色が良くなっていく。魔力循環も正常なところまで回復した。まさに人間…
「え、こいつ魔人だよな。人に戻ってるぞ?」
「え?」
「うーん…私、復活できたのか?」
「ああ、手術は成功だ!」
俺達はとりあえずその場から去った。
オロコは人形に幻術を掛けてヘルメスに渡した。
「封印の魔女は死亡が確認された!これにて公開処刑が完了したことをここに宣言する!」
結界が消えると、ヘルメスは高らかに民衆にそう告げた。
「なんとかなったな」
「ところで、貴方誰?」
と、イザベラがこっちを向いて言った。
「誰って…アッシュ=ダイアモンドだけど?」
「え!?いつの間に女性になったの!?」
あ、そうだ。封印を解かなければ。
あれ、おかしいな。出来ないぞ…?
「ねえ、あなたもしかして封印魔法を真似したの?」
呆れたような顔でそう言ったのはキャンディスだ。
「ああ、咄嗟にやった。これ、解除ってどうやるんだ?」
「禁術は解除できないから禁術なんだぞ?」
「「「………」」」
「ん〜。でもお前の封印魔法未熟だな。これなら二週間もすれば勝手に解ける」
「そうか、よかった!!」
危ないところだった。
「てか、アッシュ君…」
「何だ?」
「可愛い〜〜!!」
「喜んでいいのか?それ」
しかしよく見たら俺の顔、かなり美人かもしれない。
「もちろんよ、ていうか、服もサイズあってないでしょ?私の貸してあげる!」
「いや、帰ってから自分でジャージでも作る…」
「だ〜め!そもそも明後日貴族の集まりがあるからどっちにしろ服がいるし、ありがたく貸されなさい!」
「わかったよ…」
この後、俺はイザベラや子供たち、しまいオロコやちはやの着せ替え人形みたいにされて二週間を過ごすのだが、俺はまだそれを知らない。
「締まらない恰好のとこ悪いけど、私のこと忘れてないわよね?」
キャンディスだ。
「助かってよかったな。じゃあ来週あたりから授業してほしいから、教材でも用意しといてくれ」
「わかった。よろしくね、アッシュ様」
「様?」
「当たり前でしょ。コーレイア様に私を一歩、いや数百歩近づけてくれた恩人よ?それにあなたのことが気に入ったわ、臣従させて頂戴」
「わかった。よろしくな、キャンディス」
新たな仲間も加わり、更に賑やかになりそうだ。今度は何があるだろうか。早く封印、治らないかな…
こんにちは、一介です。
最近、作品の字数を調べてみたら、五万文字を超えていました。なんだか感慨深い気持ちになりました。最初一話はあんなに短かったのに、キャラも増え、ストーリーが増えて嬉しいです。 アマチュアのド素人が書いた作品ですが、これからも温かい気持ちで読んでくださると幸いです。先日、一話に友人に描いて頂いたイラストを挿絵として挿入させていただきました。是非見ていって下さい。自分のキャラが絵になると感動しますね。自分は絵心もないので、尊敬します。本当にありがとう。
では、また次回お会いしましょう。




