三章四話 西の騒動
町中で騒ぎが起きる。何故かって?
「へへへ、ガキは貰ってくぞ!」
「だ、ダンナァァァァ!」
俺が攫われたからだ。笑えねー話だよ。
ミスジと一緒に聞き込みをしていたのだが、西の町はそこまで治安が良くなかったようで、チンピラみたいな奴らに俺がひったくられてしまった。首元にナイフを向けられて人質にされたのだが、ミスジは焦ってしまって取り逃がしたのだ。
そしてどことも知れぬ地下の牢屋に至る。
この地域の奴隷商はまだ生き残っていたのか。
「おいガキ共、この首輪と轡をつけろ。逆らったら殺すぞ」
首輪には反逆防止の魔法が、轡には外れにくくなるように構造強化の魔法が付与されてある。自殺させないように口を塞ぐのだろう。後は魔法の詠唱止めかな?
まあそのうち助けが来るだろうから気長に待っていよう。
………それにしても暇だな。
まさか誘拐されるとはな。竜の中では俺が初めてだろう。
左右に座ってる奴らは騒いでいる。全く、どうしたものかな…
ーーーーー
取った宿に戻ったミスジは報告をした。
「はあ!?攫われた?!」
戻ってきたヘルメスは驚愕した。
「まあ仕方ないわよ、取り敢えずもっと人員がいるわね」
「面目ねぇ…」
「ミスジさん、私は悪いのは誘拐した人達だと思うよ!」
セノはミスジを慰めた。きっと自分でもそうなったろうと感じたからだ。
「とりあえずセノは屋敷に戻って、援軍を募ってちょうだい。」
「わかりました、行ってきます!」
「ごめんくださ〜い」
ノックの音がする。
皆顔を見合わせた。
「誰か来たぞ?」
誰も心当たりはないようで、不思議な顔をしている。
「あの〜?アッシュさんはいますか?」
「ダンナの知り合いか?」
ドアを開けると、赤い髪を後ろに束ねた十七くらいの女の子が入ってきた。
「こんにちは、どなた?」
「え、あ、はい。絡繰ちはやと申します。アッシュさんの仲間の牛さんがいらっしゃったのでもしかしたらいるのかなぁ…と」
イザベラは信用できそうだと判断したのか、自分の正体を打ち明けた。
「私はイザベラ・シルヴァ・ダイアモンド。アッシュ君のお嫁さんよ。確かにこのミスジはアッシュの配下で合ってるけど、何処で知り合ったのかしら?」
嫁というワードを聞いてちはやはとても驚いたが、それよりも先に言葉が出た。
「実はアッシュさんに一度命を救われていまして、あの人の役に立ちたいと思って旅をしていたんです。少し方角を間違えちゃってこんなところにいますけどね」
決してやましい関係などではないと納得してほしかったちはやは色々と情報を補足していった。しかしイザベラには"真実を見通す瞳"があるため、そんなことはとっくのとうにわかっていた。
「そんなに緊張しなくていいのよ。落ち着いて聞いて欲しいのだけど、アッシュ君ね。弱体化させられちゃって、その上攫われちゃった」
「……?」
理解が出来ないという様子だ。
イザベラが詳細を伝えると納得したらしく、ちはやは立ち上がった。
「私もお手伝いさせてもらいたいです!」
「あんた、華奢な女だが大丈夫なのか?」
「私はアッシュさんの妹弟子です。つまり、アッシュさんと同じ師に師事しました!」
「ということは…」
「めちゃくちゃ強いってことか!?」
魔法のノウハウは全て師匠と呼ばれる人物に習ったというアッシュ。実はイザベラはその人物の正体に心当たりがあったのだが、色々な事情から信じきれずにいたのだ。
「うん、わかった。一緒にアッシュ君を探しましょ!」
そして、アッシュ救出が開始した。
ーーーーー
店を開けようとしていたベルの前に、セノが走ってきた。
「えええ!?セノ!」
「ハァ、ハァ、すいません、とりあえずこれを…」
それはイザベラからの手紙だった。開いて見てみるとそこには衝撃の事実。
「攫われた?なんの冗談なんだ?」
「こんなに頑張って走ってきて嘘なんかいいませんよ!」
「わかった、みんなを集めよう。僕に任せてくれたまえ」
「は、はい…」
少し不安になったが、ベルが声を掛けると皆集まってきた。
話を聞いた子供達や仲間はとんでもなく驚いたが、すぐに対応を考え始めた。
「助けに行くしかあるまい!そんな面白…じゃなくて大変な状況なのじゃからな」
オロコは別の動機でノリノリだ。
「私たちも行きます。お兄様やオロコ様に鍛えられた私達ならば魔女の位置を炙り出し、始末することも可能です!」
息巻いた子供達はそうベルに進言した。
「ええ!?やめてくれよ、それで行かせて殺されでもしたら僕の責任だぞ!?」
ベルはその案を即刻却下しにかかった。
「わかった。では妾が指揮を執りこやつらを率いて魔女とやらを討ち取ろう。お前さん達のことだから、既に場所は掴んでいるのじゃろ?」
「え?魔女?なんで魔女を討ち取ろうとしてるんですか?」
意図が掴めないセノがそうつぶやくと、オロコは呆れた様子で
「我らの主は力を封印されておるのじゃろ?解放してしまえば、誘拐犯など一捻り、いや多分指一本で皆殺しにできよう。それで解決じゃ」
ハッとしたような顔になったセノ。
(おい!やめてくれよ、結局行くことになったじゃんか…僕は知らないからな!!)
少女たちは彼らの恩人に報いるため、武装し始めた。
ーーーーー
数日が経った、と思う。地下生活もいい加減飽きた。身体をもとに戻そうと色々試したが無理だった。
「へへへ、ガキ共。良い値がつきそうだぞ、良かったなぁ!」
まずい、買い手がついたようだ。
「魔女にしては珍しく、ガキを買ってくれるとはな。全く、なんの儀式に使うんだか…」
魔女?まさか俺のことを消しにかかってるのか?
………
……………
誰か早く助けに来い!!
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