三章三話 掃除
「金髪の少女!農家の娘につき労働力あり!買った買ったァ!」
司会役が奴隷の情報を説明し、売っていく。
胸糞悪い光景だな。怒りが湧いてくるが、ここは我慢だ。
少女は買われていった。
「い、いや!」
少女が引っ張られ嫌がる購入者に殴られた。
「黙れ!お前は俺の奴隷になったんだぞ!逆らうな!」
『おい、聞こえるか?ヘルメス』
『うわァ!なんだよ旦那、急に話しかけられたらビビ、ビビってはねえけど…失礼だろォ?』
『今から俺が奴隷市場を全部潰す。衛兵に連絡して王都から一人も出すな』
『ハァ!?もっと落ち着いてから…』
『頼んだぞ』
やはり奴隷制度というのは見ていて気分が悪過ぎる。
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「おい、ぼーっとしてんじゃねえ…グアッ!?放せ!何だこの野郎!」
近くで俺に因縁をつけてきた売人の胸ぐらをつかんだ。
「結界魔法:隔離」
「何…!?魔法だと!」
「一人も逃さないからな」
頭を地面に叩きつけ、絶命寸前に追い詰めた。
刀を抜き放ったアッシュは奴隷以外の人間を全て瀕死においやった。
「次行くぞ」
指定された位置の拠点に乗り込み、鏖殺する。
「何だテメ…」
そのセリフを言い終わる前に戦闘は終わる。
たった五分で奴隷市場は制圧された。
ーーーーー
大体潰す事が出来た。
最後の奴隷商人の拠点の前に、白が基調の服を着た一人の女が立っていた。ただならぬ雰囲気がする。
「誰だ?」
「私はオパールと申す者。我が主の御命令により、貴方様のお手伝いに参りました。アッシュ様でお間違いないでしょうか」
オパール…?宝石の名前か。つまり…
「コーラルの配下か?」
「はい。私ともう一人の者が任務を仰せつかり、手助けに参りました」
やはりな。それにしてもコーラルの配下には何故宝石の名前がついているのだろうか。しかし手助け、もういらないのだが?
「もうやる事も無いんだが、どうするんだ?」
「はい?」
「いや、だからもう奴隷市場全部つぶしちゃったんだよ」
「ふぇ…?まさか私、遅刻して…?」
なんか、いきなりキャラ崩壊が始まりそうな口調になったぞ…?
と、影の中からもう一人黒尽くめの男が現れた。こっちはダンディーな雰囲気のイケオジで、黒いコートを着こなし、いかにも仕事が出来そうだ。
「大丈夫だ、オパール。俺達の仕事は後始末だからな。アッシュ様、私はブラックオパールと申すこのオパールの同僚です。我々はこの国の裏社会を平定するためにコーラル様に派遣されました。どうぞ自由にお使いください。」
へえ、なんかいいタイミングで来てくれたな。
「じゃあ、この国で奴隷制度を廃止することになったから、今回助けた奴隷達とかならず者を教育して、デカイ組織を作ってくれる?」
「承知しました。その組織を利用し他の組織の奴隷売買を抑制し、奴隷落ちになっていた筈のものなどを集め職業を斡旋すればよろしいですか?」
サファイアさんといい、コーラルの部下には優秀な者が多い。
「うん、そんな感じ。頼んだよ?」
「「金剛の後継者よ、承知いたしました。」」
む、金剛の後継者?なんだそれは。
聞こうと思ったが、行ってしまった。
一週間後、カナデがまた屋敷にやってきた。
「何だか子供が増えた気がするが、何かあったのか?」
「ああ、奴隷市場を全部潰したからな。その中から子供だけ貰ってきたんだよ」
「…………え?」
絶妙な空気感が流れた。
「終わったのか!?」
色々とあったことを報告すると、カナデは目を丸くして驚いた。
「聖騎士級の用心棒もいたはずだろ…?あなたはめちゃくちゃだな」
「竜だからな!」
「……そうですか、じゃあ私は王に報告してくるよ。お疲れ様」
疲れた顔でカナデは帰っていった。
ちなみに、ブラックオパールは病院を作って、そこでならず者を教育しつつ働かせ始めた。犯罪率も圧倒的に減ったので、大成功である。
オパールは地方の村を回り、食いっぱぐれたやつや、才能がありそうなやつを連れてくるようになった。
そして俺はその中の子供を引き取って屋敷の近くに作った学校〜と言っても一つや二つ教室がある程度の物だが〜で勉強を教え、軍人として出世したい者にはオロコが兵法を教え始めた。
勉強については、イメージや感覚を共有する魔法を使って効率的に学ばせ、人が増えたという問題は回復魔法を利用して休みなしにぶっ続けで勉強させることで解決した。
とは言っても普通の人間だからな。一日で覚えられる事には限界がある。教育に関しては少しずつ少しずつ着実にしていくのが大事なのかもしれない。
「この問題をわかるやつはいるか?」
「「「はい!」」」
「じゃあラムダ、お前が答えてみろ〜」
「簡素化魔法陣です」
「正解、よく勉強してるな。おっと、頃合いだ。次は実習だから兵法の授業を受ける人は運動場へ、魔法の方は教室に残れ」
「こんにちは、アッシュ様」
アメリが帰ってきた。アメリはこの間から王都の魔法学園に通っている。がこと魔法の授業は俺が教えているものもタメになるとのことで、受けに帰ってくるのだ。
「今日は無属性魔法の実習をやるぞ!」
この国の学会では無属性魔法は基本だと思われがちだが、俺が調べた感じだとそれぞれの人間、魔物の体内に流れるエネルギーはそれぞれ属性をもっており、それを無属性の波長に変換していることがわかった。
魔法には+の波長と−の波長がある。その数値の高低で魔法発動時の属性が決定するのだ。無属性に関してはある一定の法則性のある波長でしか発動しない。ちなみに人が魔法を使う時属性によって向き不向きがあるのは、生来の波長が真逆なのが原因だ。なので無属性魔法を使う時も自分の魔力の波長に最も近い波長の数値の無属性魔法を使わなければ効率が悪い。
面白いだろ?魔法って。この世界に来てから一番ハマっていることが何かと聞かれたら、俺は間違いなく魔法と答える。
奴隷制撤廃後の俺の生活はまぁそんな感じだな。明日は何をしようか。まだ謎はたくさんある。俺の欠落した前世の記憶とかな。
今日もアッシュの屋敷は賑やかな空気が漂っている。
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