二章二十一話 竜、顕現す
戦場に現れた大きな影、魂ノ巨人兵。聖騎士陣営も水の神子ベルの強化を受けて勢いづいていたが、その巨躯とパワーに吹き飛ばされている。
「これはヤバいな…」
「アッシュ様、奴隷がいましたので助けました。いかがいたしますか」
奴隷?そんなものまで駆り出してたのか。
「助けながら撤退できるか?」
「大丈夫、ってうわああっ!」
魔人の攻撃か。逃げるのは無理そうだ…
どうする、この状況で何をするのが最善だ?
奴隷を助けられて、巨人の相手ができて、勝てる作戦か。
一つしかなさそうだ。
「アメリ、奴隷を全員連れてこい!それ以外は俺から離れろ!」
「アッシュ様、連れてきましたが、何を…?」
結局、こうなったか。目立ちたくはなかったが、人の命には代えられない。
膨れ上がる気配、比例して大きくなる身体。背中についた一対の翼。
今ここに顕現した、最強の種族。
「皆!俺ったら実は竜なんだよね!暴れるぞ、どけェ!」
口から謎の液と火を吹いて魔人を黒焦げにしてしまった。
するとすぐさま奴隷の少女たちを口に放り込んだ。
「「「ええええええええええええええ!?!?」」」
色々と驚くことが多すぎて、敵も味方も絶叫した。
「アッシュ様、奴隷達は大丈夫なんですか!?」
あれ、あまり俺がドラゴンだったことに驚いてないな。なんでだ?
教えてなかったはずだが…
「さっき胃液をはいて、胃を魔法で保護したからそこに保管した。それにしても驚かないのか?」
「アッシュ。不思議そうな顔してるけど、君は人間離れしたことばっかりするから薄々気づいてる奴もいたと思うよ?」
ベルがそう言った。そうか、俺は常識を知らなかったのか…
この一行で一番の常識人だと思ってたのになぁ。
「グオオオオオオオ!!」
おっと、こいつがいるのを忘れてたな。
魔属性のエネルギーの塊で構成されたこの化け物は、ほとんどの攻撃を受け付けない。こういう時は聖属性で浄化してしまうのが一番良い。
「聖拳乱打!」
強靭な竜の肉体から放たれた単純なる聖エネルギーを込めた拳の連撃。少しずつ少しずつ巨人はその力を弱めていった。
そんな感じがするが、どうもおかしい。エネルギーの総量が減っていかないのだ。どうやら拡散した邪気を再度吸収して補填しているみたいだな。
「聞こえるか、私は聖騎士団長カナデだ。ヤツを倒すのを手伝ってくれ」
「何かあてがあるのか?」
「貴方の仲間と一緒なら出来るだろう」
ならば、協力するしかあるまい!そして、俺の仲間が集まった。
「いくぞ!」
向かって行ったのはオロコとアメリ、そしてカナデ。ベルの強化が三人に集中した。
「大蛇剣、絶斬重竜ッ!」
「聖炎の傑剣!」
「無属性魔法・破砲」
狙い澄ました位置に放たれた三人の攻撃により、敵の核が露出した。そして俺の拳に乗ったヘルメスはパンチの勢いに乗り、核めがけて飛んでいく。
「盗華・英雄刺突!」
核をもぎ取り、敵を貫いた。しかもヘルメスは核を下敷きに着地した。
「そんなに懐を開けてたら、なんでも盗めちまう。気をつけな、デカブツ」
魂ノ巨人兵は核を砕かれ、拡散した。膨大な邪気が拡散したので俺が相殺して浄化した。ミスジはオロコたちが邪気に飲み込まれないように皆を担いで走った。
奥の手が破られた邪教徒たちは戦意を失い、降伏した。
「我々の、勝利だ!!」
カナデは勝鬨をあげた。
「終わったな。よくやった、お前ら」
仲間たちに声を掛けた。そして、人目につかないところで口から奴隷扱いされていた少女たちを吐き出した。って、なんか服が溶けてる…
「おいおい、大丈夫か?肌とか焼けてないよな!?」
「アッシュ、目を閉じろ」
「ん?」
「アッシュ様、目を閉じてください」
「…ハイ」
なんだか逆らっちゃマズい感じの語気だ、コワイ。
「その子たちは私が預かろう。なに、悪いようにはしない」
竜騎士団長の声がする。
「あー、頼む」
その日は国が提供してくれた宿でゆっくりと休んだ。
明日は城に来るように言われた。何かご褒美でも貰えるのかな?
ーーーーー
「これより勲章授与式を始める」
なんだか偉そうな人が開始の合図をかけた。
俺達は勲章をもらった。なんだか誇らしいような、むず痒いような。
「それとアッシュ=ダイアモンド。貴様は王が呼んでおられる故、我らが国王陛下の私室へ来るといい」
謁見の間でなくて私室?個人的な話なのかな。
仲間たちをとりあえず宿に帰して、俺は授与式のあった城にもどった。
「アッシュ=ダイアモンド様ですね?ご案内します」
立派な雰囲気の扉の前に通された俺はドアをノックした。
「入れ」
「失礼いたします」
なんだか受験のときのことを思い出すな。
「君がアッシュ=ダイアモンド君か」
国王はヒゲを生やして、いかにも国の王様って感じの見た目だ。しかしその瞳の奥には大きな威厳が秘められていた。
「はい、そうです。わたしがアッシュ=ダイアモンドです」
ん?恥ずかしいことを言ってしまった気がする。気のせいか?
「君をここに呼んだ理由、心当たりがあるかね?」
「…ありません」
「本当に?」
「はい」
「本気で言ってる?」
「え?」
なんか地がでてるぞ、このおっさん。
「聖女、酒場。この言葉に心当たりは?」
な、何…!?まさか成り行きでこの人の娘と寝ちゃったことがバレてるのか!?いや、おかしいな。お互いのために秘密にしたはずだが…
「ふん、顔色が変わった。黒だな?貴様」
「えーっと…し、白です…」
「嘘つけ!!この泥棒が!」
この一言のあと、洗いざらい情報を聞き出された。しかし疾しいことは特にしていないので、説教を受けた後は敵対心は解けた。
「で、本題だが。私の娘であるイザベラはああだから、貴族の男とは馬が合わないんだよ。私に似て、お世辞を言ったりするのが苦手だからな。」
へえ。王族としてはそれは困ったことだな。
「結婚、してくれないか?」
「え?俺は男色家じゃないですよ」
「断じて違う!!」
「すいません、じゃあどういう…」
「私の娘と結婚してほしいのだ」
頭がクラクラしてきた。聞き間違いか?
ああ、ぶっ飛んだことになったぞ…!
こんにちは、一介です。今回の話は面白かったですか?
この物語が好き、このキャラが好きという方は是非いいねや感想、お待ちしています。有識者や先輩ユーザーの方々もアドバイスお願いします!では、また次回お会いしましょう。




