二章二十話 上位魔人との戦い
聖シルヴァー王国の王女にして聖女であるイザベラ。
選ばれし高潔な血筋であり、国の期待を背負うものである。
そんな彼女は今…
「待てやァ!」
「嫌に決まってるでしょォォ!」
逃げていた。
(何でこんな所まで魔人がきてるのよ!竜騎士団は何処にいったというの!?)
本来聖女というものは特別な力を手に入れることができるが、それはまだイザベラには備わっていなかった。彼女が今持っている聖女の「特権」は「真実を見透かす瞳」のみで、戦闘に特化した力を所有していない。来月に行われる儀式で初めて彼女は完全な聖女と成るのだ。つまり、今戦っても殺されるのみである。
イザベラは追手の攻撃をその瞳を駆使して回避した。
「諦めろ、お前の心待ちにしてる護衛は今俺達の仲間が相手にしてるんだ。お前を殺せば俺達はたんまり金がもらえるんだぜ?さっさと死ね!」
その台詞のあと、四方八方から魔法が飛び交う。
(これは、避けられない…!)
「金が欲しいなら、畑でも耕した方が良さそうだ」
魔法が搔き消え、一人の男が現れた。
「貴方は…あっ!」
いつかの記憶が思い出される。聖女はなんとなく気まずい気持ちと、ありがたい気持ちが混ざった複雑な気分になった。
「久し振りですね、聖女さん。また今度飲みにいきます?」
「何だてめえ!俺達の邪魔をするな!」
「金が欲しいのか?じゃあいい農業を教えてやるよ、焼畑農業って言ってな…」
その言葉を完全無視するように魔法が放たれたが、またもや消された。
「お前らの焚き火みたいな魔法でも簡単に出来るぞ。まあいいや、じゃあこっちの番だな」
アッシュが消え、また現れる。殴り飛ばされ魔人も消える。
ものの数秒で十体はいた魔人が殺されてしまった。
「これで終わりか、他には…いないよな」
「います!上!」
そうイザベラが叫んだかと思うと、咄嗟に上に構えた剣に重い衝撃が加わった。
「貴様、何者だ」
先刻の魔人とは比べものにならない程のエネルギーを宿すその魔人は、そう誰何した。
ーーーーー
なんだコイツ!めちゃくちゃ強そうだぞ。
聖女救出は間に合ったが、面倒な奴と出くわした。どうやら上位の魔人のようだな。
「俺はアッシュ=ダイアモンドだ。恐れおののいたか?」
「私はグラートだ。聖女の首、貴様を殺して頂こう」
相手は片手剣で切りかかってくる。隙のない動きをしてくるので、攻めにくい。それに聖女を守らないといけないのがキツい、仲間を連れて来るんだったな…
「そこの貴方、イザベラ様をお守り頂き感謝する。私は竜騎士団の団長をしている者だ。私が連れて行く故、その者の相手を頼んだ」
「逃さん」
「無視はいけませんよお客さん、俺の相手をしてもらわなきゃ」
一直線で聖女の方へ向かったので阻止した。
こいつ、なかなかにパワーがあって攻撃を受け流すのが難しい。
オロコも中々にパワフルだが、こっちには巨岩を押し付けられているような感覚だ。
「本気の力だぞ…?何故受けられる!」
この攻め方をされるとかなりダルいので、やめさせるか。
「無駄な足掻きを見届けたかったんだよ、やっぱりお前らは焼畑農…」
ん、怒ったか?なんだこのエネルギー反応。待て待て待て、こんな出力見たことがないぞ!
「この私を侮辱したな…死ね!極大魔砲!!」
これをまともに食らえば俺もただではすまない、しかし攻撃の速度的に、回避不能。奇しくもカルシウムの足りないこの魔人の言う通り死ぬかも…
その刹那、アッシュは剣を鞘に収めた。
直後に光の如き抜刀。その剣技が致死の攻撃と交差した時、空間が歪む。
「大蛇剣・大鏡…!」
「何…!?技が、返って!?グハァッ!」
鏡に当てられた光の様に、放たれた光は跳ね返された。魔人の全身を焼き、魔人は辞世の句すら言うことを許されず消滅してしまった。こちらも身体に甚大なダメージを負ったが、仕方ない。未完成の技だったからな。
「成功して良かった。危うく死ぬところだったわ…」
「いや、何で生きてるのよ!?」
そうツッコんだのは聖女だ。あれ?避難したはずじゃ…
よく考えたら、聖女が逃げてしまったら体裁が悪いか。
「跳ね返したんだよ。見てただろ?」
「それがありえないっての…まあいいわ。助けてくれてありがとう」
その綻ぶような笑顔にドキッとした。やっぱり美人だなぁ…この人。
「じゃあ、仲間のとこに戻るわ。じゃあな、聖女さん」
アッシュはそう言って飛び去った。
「なんというか、とんでもない男ですね」
「そうね。見習ったら?」
「………」
竜騎士団の長は言外に無理だと告げた。
ーーーーー
王女を助けたのはいいものの、ダメージがでか過ぎる。戦場に戻ると前線の戦闘が激化していた。未だ戦況は拮抗しているが、いつ均衡が崩れてもおかしくはない。
「甘いのう、なまじ魔人は自分の力だけに頼り過ぎる。そんなことだからこんな目に遭うのじゃ」
「うるせえよババァ!じゃあ俺の力を証明してや…」
そのセリフは最後まで言うことはできない。オロコの居合によって首と胴が繋がらなくなってしまったからである。
「……妾だって種族にしては若い方じゃ」
なんだか怖いから触れないでおこう、うん。
「ふ、不覚…」
聖騎士団長は複数の魔人あいてに膝をついてしまった。
「へへへ、どう遊んでやろうかな!」
これって…あの伝説のシチュエーションか?いや待て、助けないと不味い!
「乱暴はいけません!」
そう言って魔法を放って魔人を消し飛ばしたのはアメリだった。
「僕も何かしら手伝うか。怒られてしまうからね」
ベル。お前は今まで何を…?
そう思っているとベルは魔法陣を展開した。それも特大の。
「水神の聖堂」
その魔法が発動した瞬間、全身からパワーが溢れてきた。これは攻撃ではなく、強化?!
何処から湧いたエネルギーかは知らないが、この戦場にいる味方全員の全ての能力に大幅な強化が入った。
「おいベル、どうなってんだ?その魔法は」
「僕が知るもんか」
え?
「お前が発動した魔法じゃないのか?」
「そうだけど…ほぼ感覚でやってるから実際に何をしてるのかは理解してないよ」
魔法は基本、仕組みを理解しない限りは発動できない。つまりコレは魔法に似て非なるもの。特権である。特権は獲得条件不明、詳細不明の超能力。生まれながらにベルはそれを身に着けているということだ。
兎にも角にも膠着状態が崩れ、邪教徒達が倒されていく。
「これはなんだ、余裕ってヤツだな」
ヘルメスがそう軽口をたたいた。
「まあ、そうだな。怖いくらいだ。」
「アッシュ様、敵陣で何やら大きな儀式が進行しています」
アメリが飛んできて、そう教えてくれた。
ぶっちゃけ気づいてはいたのだが、まだ他にも沢山城にいたような魔人が居るとしたら危険だから攻めずにスルーしていたのだ。
「そろそろ止めに…」
『いでよ!魂ノ巨人兵!!奴らを蹴散らすがいい!』
戦場に横たわっていた死体が溶け、撚り合わさった。ん〜。実にグロい光景だ。しかし、かなりデカいな。気配的にも俺以外には相手できなさそうだ。
「俺が戦る」
アッシュは立ち上がり、魔法で膂力を高めた。
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