二章十九話 聖都へ迫る危機
聖女イザベラはある報告書を見て戦慄していた。
そこには、
大規模な邪教徒の侵攻、軍勢約一万にて進軍中。
中には 上位から下位の魔人あり。
と書いてあった。
「本当なの?カナデ」
「こんなところで嘘をついても仕方ないでしょう、イザベラ様」
私だって信じたくなかったといった雰囲気でカナデがそう答えた。
「まだ完全な聖女に至っていないのに…」
しかし敵は待ってくれはしない、そう考えたイザベラは命令を下した。
「全軍で防衛よ、防衛に徹しなさい。外から来た人たちも巻き込んで臨時の軍を編成しなさい」
「承知しました、すぐに。」
もうすぐに始まる戦争に憂鬱になりながらもイザベラはそれを顔に出さない。何故なら彼女が不安な顔をすれば士気が下がるからだ。
「勝てるわよね、きっと…」
ーーーーー
綺麗で神聖な雰囲気の都。聖シルヴァー王国の王都ジェムに着いた。のだが。入都審査が死ぬほど混んでいる。六時間前から並んでいるのだが
まだ列は長い。
「まだ妾たちの番にならんのか?いい加減飽きたぞ」
我慢の限界、といった様子でオロコがそう言った。
「そう言わないでくれよ、俺様も早く並べる様に衛兵に礼をしたりしてるんだからな。これ以上は法を抵触しちまうよ」
「ヘルメス様、賄賂の時点で違法だと思います」
ヘルメスとアメリのやり取りはさておき、待ち時間長すぎないか?ネズミの国のアトラクションでもこんなに待たないぞ。
「ヘルメス。聞いてた情報と違ってるが、王都で何かあったのか?」
「ああ、どうやらもう少しで戦争が始まるらしい」
「戦争?」
「邪教徒の侵攻が始まったようで、なんかいざこざが相次いで起きてんだと。それで混んでるようだな」
邪教徒というと、聖地グエルで会った連中か。ただのテロリストだと勘違いしていたが、一筋縄ではないようだな。
「アッシュ、戦争って…ここ大丈夫か?」
ベルが心配そうに俺に尋ねた。
「うーん、それはわからんけど今からここを離れるよりは安全かもしれないな」
「ダンナ、俺もそう思うぜ。ここにはあの栄光名高い聖騎士団や竜騎士団がいるし、下手に動くよりはここにいるのがいい」
俺の言わんとするところをミスジが解説してくれた。日々こいつの成長を感じるな。
その後しばらく待っていると、係の衛兵がやってきて
「待たせてすまない、渋滞緩和のためここで検問させてもらう」
そう言って検閲を始めた。
一通り検問がすむと衛兵は申し訳無さそうに紙を渡してきた。
「もう知ってると思うが今ここに邪教徒の軍勢が攻めてきている。そこで上からのお触れが出て、戦闘可能な入城者は戦争に参加してもらうことになったんだ」
きっと王都も猫の手も借りたいといった様子なんだろうな。
「そうなのか、俺達は何をするんだ?」
「二つの部門に分かれる。一つ目は後方支援で、二つ目は前線で戦ってもらう。どちらにしろ活躍すれば上から褒賞が与えられるとのことだ。どうする?」
一旦衛兵には退席してもらい、皆に意見を聞いてみた。
「妾は構わぬ。前線に出るのも悪くないのう」
あくまでも負ける想像はしていなさそうなオロコ。
「皆がいきたいなら…僕は見ててあげるよ!」
ビビっているベル。
「邪教徒には嫌な思いをさせられたことがありますし、参加していいと思います!」
アメリも戦争に抵抗感があるが、邪教徒を倒したいという意思を感じる。
「ダンナに従うぜ」
ミスジは端的だな
「へへへ、俺様は戦闘も華麗に行えるんだ!アンタに見せてやるぜ、俺様の力ってやつをなァ!」
やる気満々ってやつだな、ヘルメスは。そんなわけで俺達は前線に行くことになった。
ーーーーー
「見えてきたぞアッシュ。あれが邪教徒か、いっぱいいるぞ」
確かな邪気を感じるその集団はこちらに向けて前進している。
『貴様ら止まれ。これより先は聖シルヴァー王国の王都だ。これ以上進行するようならば、無事では済まさない』
魔法で拡声された聖騎士団長カナデの声。しかし邪教徒は止まらない。
『同志たちよ、攻撃を許可する。邪教徒を共に討ち滅ぼしてくれ!』
聖騎士たちを矢面に戦闘の火蓋が切られた。俺とオロコとヘルメスは前線に走る。ミスジはベルとアメリの護衛だ。戦場にはいろんな属性の魔法が飛び交っている。臨時の軍を編成してなお数の上では劣勢だ。なるべく魔法で敵を仕留めて減らしたいのだろう。
「多いな、油断するなよ」
「俺様に任せとけって!」
「当然じゃ。まあ、妾に敵う奴などおるまいが」
ヘルメスは海賊が持っていそうなサーベルを片手にアクロバティックな戦いを繰り広げた。
「アハハハ!遅いなァ、お前らは!」
オロコも太刀を抜いて敵をバサバサと切り刻んだ。
「ふむ、やはり烏合の衆じゃな。」
俺はというとオロコに習った剣術を駆使して戦っている。敵に通用して少し有頂天だ。
彼女の流派は彼女独自のもので、大蛇剣というらしい。ヘルメスに関しても盗華という師匠から習った戦闘の技術を持っているとか。
『アッシュ様、空から魔人が都の方向に飛んでいます。高度な幻影魔法を使っているようで誰も気づいていません、いかが致しますか?』
本当だ、空をよく見たら歪んでいるところがある。目に魔力を込めて見てみると確かに魔人が空を飛んで城の方向へ…
「お前ら、俺は一旦離脱する。ここは頼んだぞ」
「承知した。おいヘルメスよ、一度退くがよい」
二人は防御に徹するようだな。
凄いスピードだな、あいつら。急がないと間に合わないぞ。狙いはなんだろうか。王族かな?
俺も全速力で魔法を使って空を翔けた。
聖女は気まずいから会いたくないな…
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