二章十六話 竜の邂逅・妖怪大蛇
「ここが大蛇の洞窟です、お気をつけて」
兵に警戒された洞穴。その中からは確かに強い気配を感じる。油断してかかると痛い目を見そうな予感がする。
「じゃ、行くか」
「押忍、兄貴」
龍巳も覚悟が決まったようなので中に入ると一本道が長く続いていた。特に何も起こらず奥まで進んだ。
「なあ、兄貴」
「なんだ?」
「小咲って、どんな男が好きだと思う?」
「誰?」
「ええっと、姫だよ。姫様。実は俺、あいつと幼馴染で…」
重い雰囲気が一気に弛緩した。なんだよ急に、好きな人のできたことのない俺に対する当てつけか?
「好きなのか?」
「あ、ああ。好…きだ」
「実際交際できるのか?」
「厳しいな。姫の結婚相手は基本両親が決めるから」
叶わない恋とは、なんと悲しいことか。
「おい兄貴、何ニヤついてるんだよ」
「いや、なんでもないさ」
「もしかして兄貴にもいるのか?想う相手が」
ふーむ、いないっちゃいないしいるっちゃいるんだなあ。聖女?いや、あれはノーカンだ。お互いなかったことにしたし、何もなかったからな。
『貴様ら…妾の無限回廊の術を無視して色恋話などに花を咲かせおって…いい加減にせよ!』
「なっ!?奴さん、姿を現すつもりですよ!」
既に侵入には気づかれていたのか。にしても道が長すぎると思ったらそういうことか。
「ごめんなさーい!なんとかかんとかの術、気づかなかったよ!」
『なんじゃと!?ぐ、ぐぬぬぬぬぬ…馬鹿にしおって!こうなったら二人まとめて非礼を償うがいい!』
戦闘は避けられなさそうだ。と、突然周りが広くなった。
「元から広いところをぐるぐる回らされていたようだな」
「幻術か!?こんな規模は聞いたことないぞ!」
『クックック、貴様らはこいつの餌にしてくれる!』
現れたのは八つの頭を持つ大蛇。
「八頭之大蛇だ!!兄貴、どうする!?出口も塞がれてるぜ…」
『そこの貴様、凄まじい力を持っておるな。妾が相手してやろう』
緑がかった長い黒髪を靡かせて襲ってきたのは一人の女性だった。しかしその気配は大蛇よりも大きい。大太刀を両手で操りとんでもない速さで斬り込んできた。
「おまえが化物の飼い主か…」
「左様、妾が大蛇の頭領じゃ。知られたからには死んでもらうぞ」
取り出した剣で応戦するも、技術に差がありすぎて剣では勝てない。ん?なんだコレ…?攻撃を食らった瞬間から行動が阻害されている。しかも周りには幻術で偽物が沢山いるように見えて上手く戦えない。
「お前…嫌がらせが得意なのか?」
「ククク。エネルギーがデカいだけでは勝てぬぞ、小僧」
なんか腹立つな。よし決めた!全力で対策するぞ!
まずは幻術の解除。体内エネルギーを外へ放出した。こうすることで密室であるこの洞窟は俺に支配権のあるエネルギーに包まれる。実体や物理的な干渉力のある魔法以外はこれだけで消滅してしまう。
「聖属性じゃと!?いや、そうでなくても幻術は破られておるな…」
こいつ意外と頭がいいのか?
「兄貴、俺にこいつの相手をしろっていうのか!?」
龍巳は折れた剣を持って涙目で俺にそう叫んだ。仕方ないな。少し時間を稼いでもらうか。俺は落ちた剣先を拾って龍巳の持った折れた部分をくっつけてエネルギーを注入して剣直した。
「何だこの妖刀…」
「まあそれでなんとかしろ、こいつを倒したら助けてやるから」
「わ、わかった!でもそんなには持たないぞ!」
そんなやり取りのあと、俺達は五分ほど戦った。膠着状態が続いている。
「妾の剣の速さに適応し始めたのか…?末恐ろしい奴じゃ」
「そのうちうかうかしてると負けるかもな、蛇女さん!」
軽口を叩きつつ、切り結んでいる。こいつの動きは洗練されていてブレない。だから勉強になるのだ。
「うおおおおおッ!!」
雄叫びと断末魔の叫びが洞窟内に響いた。
「おっと、やったのか?」
「まさか…討ち取ったというのか!」
龍巳は全ての首を斬られたヤマタノオロチの上に立っていた。
「お前、戦闘中なのを忘れてないよな」
俺は女が龍巳に気を取られている間に拳銃を取り出して肩と脚に撃った。
「ぐっ…卑怯な真似を!」
すぐに反撃に出ようとするがそれはもう手遅れだ。
「動かん…体が反応せんぞ?」
「俺は地頭が良くてな、参考にさせてもらったよ」
「馬鹿な!今の戦闘で妾の魔力行動阻害を真似したというのか?!」
少し訂正させてもらうが、実はこれ。自己流でアレンジしてある。アイツの技は魔力に由来する場所のみを妨害するが、俺の模倣技は肉体の電気信号すら停止させる。つまり相手の魔力操作がどれだけ巧みでも確実に動きを止めることができるのだ。この世界の人体に対する知識はかなり低いので、その足りない知識のある俺ができることは他のやつよりかなり多いだろう。つい饒舌に語ってしまったが、自分の勉強が役に立ったのが嬉しかったし仕方ないかな。
「ま、そういうことだな。大人しくお縄につけ、文字通りな」
そう言って俺は魔法付与で強化した縄で縛り付けた。
「お疲れのところ悪いが、こいつを俺が見張ってるうちに人を呼んできてくれ」
「ハァ、わかりました…しんどいですが行ってきますよ」
嫌そうだったな、アイツ。
とりあえずは皆をここで待つとするか。
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