二章十四話 聖堂の騒動
ここは、どこ?暗いよ…
『聞こえるか?』
何か声がする。男の人の声だ。
『もしも〜し、聞こえてますかー?』
なんだか優しそうだな。
『おい!聞こえてるなら返事しろよ!』
「あ、はい!聞こえてます!」
怒鳴られたが返事をすると安心した様子で、
『良かった、自分の事を覚えてるか?』
と訊いてきた。えっと、私って…誰だっけ?思い出せないや、なんでだろう?
『覚えてないか、まあそこは重要だがあとでゆっくり思い出せばいい。それより状況を説明するぞ?』
その男の人?が言うには私は森の中で多重の呪いを伴う火傷で黒焦げの状態だったらしい。呪い…?
「あの、呪いって?」
『ん?あ、呪いってのはな、魔法由来の状態異常の総称だよ。基本は魔女とか邪教徒が使う魔法だな』
「魔法?アニメの見過ぎじゃ…?」
『アニメ!?まさかお前…いや、何でもない。ともかくここはそういう世界だ、そう思っとけ』
「わかりました…」
もしかしてこの人、ヤバい人なのかな。
『話をもとに戻すぞ?とりあえずお前の怪我は命を取り留めるくらいには治ったから、もう少しそこで療養してもらうぞ。で、……』
私の怪我が治ったら、この暗い幕が取れて世話をしてくれる人がくるらしい。それで色々説明してもらえ、しかも勉強までさせてくれるとか。
「なんか、ありがとうございます。えっと…」
『俺の名前はアッシュ=ダイアモンドだ。そうだな、お前の名前を決めてやるよ。どれ、一つ顔を拝んでやろうか…ってお前!?』
「なんか変ですか?」
『いや、別に変ではないが…決めた。お前の名前は、絡繰ちはやだ』
絡繰ちはや。それが私の名前になった。何故か妙にしっくりくる。
「わかりました!」
『そうか。じゃ、そこで安静にしときな』
そこで彼の声は聞こえなくなった。
外には何が待っているんだろう、気になるな。
絡繰ちはや。彼女のこの世界での人生の始まりであった。
ちはや、か。顔を見たときにすぐ思いついた。彼女の顔は昔推してたバーチャルライバーにそっくりだったのだ。だからその名前にした。毎日SNSを確認して配信日を楽しみにしていたのを今でも覚えている。
「アッシュ様、もう着きますよ」
「お、そうか。じゃ、支度しろ皆」
ようやくグエルに着いたようだ。町の装飾も豪華で奥には大きな聖堂が見える。まさに観光地って感じだな。
宿を取ると馬車をおいて散策を始めた。
「あの大聖堂を見るから、あとでアレの前で集合しよう」
「わかりました」
「了解!さ、いくぞミスジ!」
「はいはい、じゃ、ダンナ。ベル嬢は任せろ」
そんなわけで俺はアメリと町を見て回ることにした。
色々と生活雑貨や本を買い込んでまわっている。
ん?なんだあいつ…
「アッシュ様、あそこに怪しい集団がいます」
その一団は魔法で自分の存在を隠蔽していた。勿論俺には効かないが、アメリは人間なのによく見抜いたな。
「ホントだ、よく気づいたな。なんだあいつら、見るからに怪しいな」
「あ、でももうすぐ集合時間ですよ」
なにか不安な予感がしてきたな、さっさと全員集合しておくのが最善かもしれない。
聖堂の前で合流するとベルが真っ先に、
「アッシュ!なんか隠れて行動してるやつが居たぞ!?怖いから離れないでくれ!」
「なんだか厭な予感がしますよ、ダンナ。どうします?」
「まあとりあえず、聖堂を見てから考えよう」
「気楽なもんだな、アッシュ。あれは絶対ヤバい奴らだぞ」
「大丈夫だろ、なんとかなる。気にすんな」
「アッシュ様がそれでいいなら、いいです」
聖堂に入ると豪華な内装で、ステンドグラスに色々と意味ありげな絵が描かれていた。
奥の方では高位の神官が集まって何か話し合っている。またその隣には怪しげな頭巾を被った…
「大人しくしろ、ガキ!」
ベルとアメリは後ろから羽交い締めにされナイフを突きつけられた。俺には直接刺してきたが、身体のスペックがドラゴンである俺は簡単にナイフを弾いてしまった。
「おいそこのクソ牛と男、動くんじゃねえぞ」
おい、面倒臭えな。
「聖堂で味見ってのも乙だなぁ!」
ファッ!?おいこいつ等、ベルとアメリ相手になんか始めたぞ!
「ふざけんな、今すぐやめろ馬鹿共…」
「ハハハ、守れなかった雑魚がなんかいってるぜ」
よし決めた、こいつら殺そう。
俺は縛られた腕に力を込めて引きちぎった。
「何ッ!?ま、待て!こいつがどうなっても…」
「うるせぇ!そいつを離せこの性欲爆発男!」
距離を詰めて二人に突きつけられたナイフを素手で握り潰した。
「バ、バケモノだ!」
その言葉を最後に男は人間が放てるとは思えぬ速度で殴られて意識を失った。
解放されるとアメリは煙幕を張った。作戦なのか服を脱がされて恥ずかしかったのか。いや、どっちもか。
煙の中で一方的にテロリスト?は伸されて捕まった。
こちらは魔法で感知できるから、目の見えない相手を卑怯にも不意打ちで倒した。でも俺達に卑怯だとか言われる筋合いはないので大丈夫。
「ほら、ほっといたら面倒だって言っただろ!」
「こんなことされたらお嫁にいけません!」
「ダンナ、こいつ等どうします?」
そうだな…俺たちの判断で殺すのはまずい気がするな。
「とりあえず衛兵が来るまで待つか」
と言ったその時、衛兵を呼びに行った神官たちが戻ってきた。
「旅の方、この度は邪教徒の襲撃から聖堂を救っていただきありがとうございました」
「え?ああ、はい。で、こいつ等はどうすればいいんですか?」
「我々が預かります。どうやらこの者たちは雇われの盗賊だったようですね、そこの方々も申し訳ありません…」
聖地と言う割に警備がガバガバだったが、大丈夫なのかこの地域。絶対にマズイだろ。
「実は聖騎士などの主戦力が辺境の村に出現した邪教徒を討伐に行っていたのです。一日程度で帰って来られるので何ら心配はないと思っていたのですが…」
なるほど。というか邪教徒とかもいるのか。ベルが埋まってたアレを信仰してるのか?正気を疑うぞ…
「あの、これはお礼です。ぜひお収めください」
差し出してきたのは金貨の入った袋だった。
「ありがたく頂こう」
「こういうのって謙遜して貰わないものでは…?」
このあと俺達は神官長のガイドを受けながら聖堂を見学した。コーラルが美化され過ぎていてなんだか変な感じがしたが、まあまあ面白かった。
特に見るものもなくなったので俺達は明日出発することにした。次こそ王都だ。いや、特に目的もないのだが。楽しみなのは確かだけどな。
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