二章十二話 聖女裁判
「これより聖女による裁判を始める」
裁判官が厳かにそう告げた。四角い広間の高めの所に聖女が座って、その左右に補佐する裁判官が座っていた。
右側にはアメジストとアメリ、左側には拘束された領主…グラドというらしい。
「原告側のアメリとやら。発言せよ」
アメリは以前集めた証拠を提出し、グラドの有罪を主張した。
「被告人、弁解するか」
グラドは必死で無罪を主張した。部下のせいにしたり、知らなかったことにしたり。証拠もないのに喚き散らす様は醜くい上に滑稽だった。
「聖女審問を始める。参考人アッシュ=ダイアモンド、原告人アメジスト、被告人グラドよ、前に出よ」
いくつか俺達は聖女に質問をされた。何故か他愛のない質問をされたが、ひとしきりされると聖女は判決を言い渡した。
「まずグラド、貴方の行動は目に余ります。これまでの民の被害も鑑みて有罪。死刑に処します」
「そんな…聖女様、私がいなくなれば誰がここを…」
「黙りなさい。貴方の後任はアメジストにやってもらいますこれで裁判は終わり。連れて行きなさい」
取り付く島もないとはまさにこのことだ。
そんな感じで裁判は終わった。グラドは人目につかないところで殺されたらしい。なんだかあっけないな、没落するときはほんの一瞬で落ちぶれてしまうのか。
まあ何にせよ解決だな。今まで稼いだ金は大事にとっておいて次の町を見に行くか。
夜になると俺は出発する前にもう一度お酒を飲もうと思って一人でバーに入った。混んでいたので空いていたカウンター席に座った。む?横に座ってる人、なんか見たことあるような…?
「あぁ!?聖じモゴモゴ」
「黙りなさい!」
俺の口を塞いでそう言ったのはまさに聖女イザベラその人だった。
「ハァ、バレるところだったでしょ?なにやってるのよ!」
「ゴメンゴメン、じゃなくて。申し訳ありません」
「酒の席なんだからタメ口でいいわよ」
よく見たらマスクをつけてサングラスをかけていかにもお忍びといった風情だった。しかしやけに機嫌が良さそうに見えるな。って、聖女の席の前には五本ほど空のボトルが置いてあった。めちゃめちゃ酔ってるんじゃねえか!
「貴方、一向に酔わないけど何か耐性を持ってるの?」
「まあ、そうだな。酒で酔ったことはないな」
「耐性の切り方って知ってる?」
え…?切れるもんなのか?
「知らないが、知ってるのか?」
「私も本当は酔わないんだけど、酔ってみたくて切ろうとしたのよ。そしたらなんかできちゃった。教えてあげるわね」
ということで教わった方法で切ってみた。
なんだか体温が上がって、同時に気分が少し高揚してきた。これが酩酊感か。
「すげえ、これが酔う感覚ってやつか」
聖女とはかなり話が合ったのでその日は二人で飲み明かした。
朝。起きるといつもと天井が違う。
「え?」
「う〜〜〜ん…」
「「…………?!」」
布団には聖女が寝ていた。
見つめ合う二人。しかしそこに甘い雰囲気は一欠片もない。
当たり前だ、二人とも状況を把握するのに必死だった。
「何も、なかったよな?」
「ええ、多分…だけど。いや、忘れましょう。とりあえず、出ていって」
部屋を閉め出された。
「えっと、昨日は楽しかったわ。あと…絶対に口外しないでね?」
「ああ、わかったよ」
支度ができたので店に挨拶に行った。
「行くのかい?せっかちなやつだね」
「ほら、連れてこいよ。新しい仲間を迎えに来たぞ」
「本当に仲間にするのか?アッシュ。今から断っても遅くないぞ」
「ベル嬢、もうその話は決まったじゃないですか。これ以上ゴネるとダンナに叱られちまいますよ?」
ミスジは大分理知的になったな。勉強熱心だし、素直なのは種族共通だったりするのだろうか。
「おまたせしました」
初対面時と同じ場所から出てきたアメリは大きな荷物を抱えて出てきた。
「改めて、アメリと申します。不束者ですがどうぞよろしくお願いします、アッシュ様とお二方」
ミスジはアメリから荷物を受取り馬車へ持っていった。
「姐さん、お世話になりました。ダンナ、準備をしてきますから、次どこに行くか話し合っててください」
ミスジが礼を言って立ち去った。
「さて、じゃあ次はどこに行く?」
「僕は特に希望はないよ、キミについていくさ」
「そうですね、私も行きたいところはないですが、アッシュ様はなにかありますか?」
なんだか聖女が気になるし、王都にでも行ってみたいかもな。
「王都でも見に行くか?」
「ジェムですか、ならこのルートが最短ですかね?まずはグエルに向かいましょう。詳しい地図がここなら売ってるはずですし、あそこは有名な観光地ですよ」
「よし、それでいこう!」
ルートも決まったことだし、楽しみだな。
「荷物よし、馬車よし、水神よし!出発だ」
「誰がお荷物だ!」
「水神?ベル様は水神なんですか?」
賑やかになったな、ひとりからこんなに仲間が増えるとは。
こうして大変だった事件も一段落し、娯楽の町を発ったのだった。
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