二章十話 竜と強欲領主の攻防
館に行くと、三人とも広間に通された。高いところに豪華な椅子があってそこには先日店に来た太っちょのおっさん領主が偉そうに座っていた。内装はきらびやかで、あまり俺の趣味ではない。しかし金は死ぬ程かかってそうな広間だった。
「よく来たな、下民よ。私は貴様に用があるのだ」
下民とは酷い呼び方だな、民衆を下にしか見ていないらしい。
「御用とは何でしょうか」
「貴様の仲間の女、ベルを私に寄越せ」
まあ、予想通りっちゃ予想通りだな。勿論お断りだけど。
「お言葉ですが…」
「一つ教えてやろう、この町で私に逆らえば死刑だ。考えて物を言うがいい」
おーい、暴君ですか?勘弁してくれよ。と、なんかベルから魔法通話がきてるな…
『おいアッシュ!あいつに僕を渡すなよ!絶対いやだからな!』
『じゃあどうする、死ぬか?』
『う…ヤダ!なんとかしてくれ!』
『わかった、任せろ。なんとかするから取りあえず従っとけ』
『え、でも襲われたら…』
『自分で自分を封印するか、殺すしかないだろ…』
『そうか、じゃあ早く頼むよ!僕はなんとか耐えるから』
そこで魔法通話を打ち切った。
「わかりました。では、どうぞ」
そう言ったら城からつまみ出された。
「あの野郎…癇に障るやつだ!ダンナ、暴れちゃいけないんですか?!」
「そんなことしたら極刑だよ、バカ。それに店に迷惑がかかるだろうな」
下手したら店に騎士を差し向けてくるかもしれない。
「なるほど、じゃあどうしたらいいんです?」
「何か俺達が暴れても合法化される大義名分があればなあ…」
店に行くと、何やら騒ぎが起きていた。
「姐さん!あいつにはもううんざりだ!反乱しよう!」
「…勝てる見込みは?」
「み、みんなで乗り込めば勝てるだろ!」
無策の若者が反乱を起こそうとしていたらしい。それでこの町で力のあるアメジストを味方につけようと考えていたようだ。取りあえず話を聞いてみることにした。
「おい、お前。一旦座って話を聞かせろ」
なんだか胡乱な目で見られたので、さっきの事の顛末を説明してやった。
「俺達は両親があいつに奴隷みたいな扱いを受けてるんだ。だから、あいつは騎士を使って解放を求める俺達を厄介払いしたんだ。この国での奴隷所持はご法度だから、なんとかあいつを裁判の場に出したいんだ」
しかしこいつ、裁判の意味や仕組みを把握してるのか?まあこの騒ぎに乗じてその犯罪の証拠を手に入れて提出すれば…
「その話、乗った。俺が協力してやるよ」
「え?あんた、何様なんだ?」
あ、そうか。この町ではただのホストだったな。どうするかね。
「わかった、アッシュが協力するというならアタシも手を貸してあげる」
「姐さん!」
お、アメジストが手を貸す気になったらしい。
「そうだな。じゃあ作戦としては、俺が館の前で騒ぎを起こして暴れまわるからその隙に屋敷を制圧してくれ。」
「じゃあダンナ、ベル嬢は俺が連れて帰ってくるぜ」
ミスジ、俺の言わんとする所を察してくれたようだ。
「頼んだぞ?」
「応ッ!」
作戦決行は明日となった。
店から出る前にアメジストが俺とミスジを呼んだ。
「貴方達、お願いがあるのだけど」
恩もあるし、これを断る訳にはいかない。
「なんでも言ってくれ」
「アメジストの姐さん、ダンナと俺にできることならなんでも!」
すると、アメジストは奥から人を呼んだ。それは占い師のような風貌の少女だった。水晶を持ってこっちをみている。
「挨拶なさい」
「ハジメマシテ、アッシュ様。私はアメリと申します、以後お見知りおきを」
けしからん体つきだなぁ、とか思っていたら丁寧にお辞儀された。いかんいかん、ボーッとしてたな。
「よろしく」
「で、この子がどうかしたんですかい?」
ミスジが俺の聞きたいことを聞いてくれた。
「この子も貴方達の旅に連れて行って欲しいの、頼めるかしら?」
「その心は?」
「この子はね、アタシが我が子のように育ててきた子なの。でもずっとこの町に置いていたらいけない気がして…それで貴方達について行って世界を見てきてほしいのよ」
「アメジスト様…」
可愛い子には旅をさせよ、ってやつか。別に困ることもない、連れて行ってやるか。
「お前の子は優秀なんだろうな?」
「当然でしょう、この作戦で認めてもらいなさいな」
「はい!」
「じゃあ行くぞ、お前ら!」
俺は館に魔法をぶっ放し、大声で兵の気を引いた。
「おい!出てこい領主の腰巾着共!それともお前らの主と一緒で重くて腰が上がらないのか?税金泥棒が!」
これは効いたろう。かなり酷いことを言ってやった。
お、向こうから顔を真っ赤にして走ってきている。
「ハハッ!作戦通りだな!おもしれー!」
闘いの火蓋は、切って落とされた。
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