二章九話 竜、接客す
「いらっしゃい」
「アスタ君〜飲も〜」
「勿論。何にする?」
「そうね、高いやつ!何でもいいから、開けちゃって!」
「お?どうした、何かあったのか?」
女皇の箱庭は今日も繁盛している。俺が何をしているかというと…
時を遡ること2週間前。町を出る時に払わなければならない税が払えないので、前知り合ったアメジストに相談した。
「じゃあウチで雇ってあげるから働きな」
「おお、ありがたいな。俺の仲間も雇ってくれるか?まあまあ顔のいい女と牛の亜人なんだが」
「いいわよ。じゃあその牛くんは用心棒、女の子は接客をお願いしようかしら」
「……この店は枕営業とかあったり?」
「ないわよ、娼館じゃないんだから。そういうことを求めてくる客もいるけど、この店では禁止よ。安心なさい」
そんなわけで、向こうでは男客の相手をベルが。俺は女客の相手をしているのだ。「ホスト」みたいな感じだな。正直俺は掃除とか雑用でも良かったのだがな。
「お前はこの町じゃなかなかの男前だよ、接客しな」
と言われたのだ。解せぬ。きっと人手不足なんだな、この町。まあ特に俺が女客相手にとんでもない稼ぎを叩き出しているのだが、金貨十枚のきつさが浮き彫りになるな。ちなみにベルはというと天然キャラで浸透してしまっている。それにノッたベルがアホの子感を全面に出すので騙された男達が
自分の宿に誘い出そうとする。勿論ミスジはそういう輩に容赦なく制裁を下すのだが…そのせいであいつは天然姫とか名前がついてしまった。
その日の夜。
「アッシュ、今日は領主の相手をしたんだ。すごいだろ?」
「そうか、税を死ぬほど取る奴だし肥えてるか?」
「そうそう。でも汗臭かったりはしないよ、だってめちゃくちゃに香水を撒いてるもの」
やはり想像通りの銭ゲバ領主のようだな。するとミスジが、
「あいつ、ベル嬢のことをえらく気に入ったみたいで。色々詮索してくるから少し怖いですよ。それで頭の回転もはやいから少しずつ情報を抜いて来るんでさあ」
結構ヤバそうだな。う〜む、羽振りがいいのは良いことなんだがな。
「よし、ベル。なんか嫌な予感がするから明日からこの宿で待機な」
「わ、わかったよ。ミスジはどうするんだい?」
「そうだな、まだ宿まではバレてないだろうし、ミスジは店で用心棒を続けてくれ」
「了解だぜ、旦那」
方針が決まったので店に行き、アメジストに事情を説明してからいつも通り働いていた。夜には人が増えて、賑やかになったので俺はグラスパフォーマンスを披露したりした。これが案外ウケがいいのだ。
「どういうことだ!早く連れてこい!!」
なんだか横柄な雰囲気のおっさんが店の入口で騒いでるな。
いつもは睨んで殴ってつまみ出すミスジが困ってるようだ。
そこにいたのは領主だった。なんでもベルがいないことを知って呼んでこいとブチギレているらしい。
「お気に入りなんだぞ?おい、早く連れてこい。わからんか無能共が!」
ひどい言い草だな、カルシウムが足りていないんじゃないか?
「領主様、まあまあそんなに興奮しては身体に悪いですよ。ほら、こちら新メニューの焼き鳥串です。お一ついかがかな?」
あまりに芳しい香りだったからか、素直に一本手に取ってくれた。
「……悪くない、今日は特別に他の者でも許してやろう。連れてこい」
「はい、ありがとうございます!ただいま!」
フッ、食欲に負けたようだな。やり過ごせて良かった…
その後は何事もなく一日がおわり、宿に帰った。
取り留めのないバカ話を三人でしながら、作っておいたオセロをした。そして次の日。
けたたましいドアのノック音に起こされた。ドアを開けると
騎士がいて、
「貴様はアッシュ=ダイアモンドだな?」
「そうだけど、何か御用ですか?」
「今日の十二時、領主の館へ来い。仲間を全て連れてこいとのことだ、遅れれば貴様の命はないと思え」
そう言ってすぐ立ち去ってしまった。
なんだか凄く嫌な予感がする。もう十二分にお金はたまったしすぐに支度して、この件が終わったらこの町から去ろう。
「ダンナ、領主様がなんの用なんですかね?」
「さあな、まあ俺は十中八九目星はついてるが」
「へえ、じゃあ安心だね」
ベルさん何が安心なんでしょうか。十中八九君への用件に決まっているだろう。今言ってゴネられても面倒だからな、黙っておこう。
三人は領主の館へと向かった。
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