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二章五話 竜の赫怒

砦町(フォート・タウン)の物価は馬鹿みたいに高い。馬車貯金生活も一週間が過ぎ、この町に知り合いができるくらい馴染んだ。

「アッシュ、いい依頼を見つけたぞ」

「なんだ?」

「ドブさらいさ。これなら危険がないぞ」

「お前、一緒にやるんだろうな?」

「え?えーっと、僕は他の依頼が…」

こいつ、自分がやらないからって少し報酬のいい依頼(めんどうごと)をよこしてきやがった。ということでドブさらいだ。

「お前さんはよく働くね」

依頼人の老人がそう言った。

「魔法を使ってもいいですか?」

「構わんよ、しかし事故だけは気を付けなさい」

まずはこの汚泥を水路から切り離す。空間を操る魔法で汚泥を空間から切り取る、そしてそのままゴミ捨て場に捨てた。

依頼が終わりギルドに戻ると何やら受付の女が騒いでいた。

「どうしたんだ?」

「あ、アッシュさん!大変です、巨岩蜥蜴(ロックリザード・ジャイアント)が群れで出ました!もう向かってる討伐隊もいますが、救援に行ってもらえますか?」

「わかった、じゃあベルが帰ってきたらここで大人しくしてるよう言っておいてくれ」

「ご武運を」

急いで町の外に出ると数百メートル先に戦闘の気配がした。

重力反発(グラビティ)筋力倍加(パワーアップ)

重力に抵抗する干渉波とそれを操るための身体強化、アッシュは空を物凄いスピードで翔けた。十秒ほど走ると、ところどころ岩の生えた大蜥蜴が討伐隊と戦っていた。

「手伝うか?」

「な、なんだお前!いや、助けてくれ!」

「了解」

戦っていた蜥蜴を妖気(オーラ)を出して引き付けて、一匹ずつ殴る。肩を入れて放ち正面から炸裂した拳は蜥蜴の頭蓋に命中、そしてあっさりと事切れた。仲間がやられ、怖気ついた仲間のトカゲも距離を詰めて一撃。討伐隊のメンバーたちはその身のこなし、パワーに啞然と口をあけることしかできなかった。

「つ、強え…」

「本当に人間なのか?」

その男は歩み寄り、こう言った。

「倒したぞ、こいつ等の素材はどうするんだ?」

「町へ運ぼう!いや、運ぶくらいはさせてくれ!」

「アンタ、マジで強いな!どんな鍛え方したんだ?」

「まあ話は町でしようぜ?ほら、仕事しな」

そう言われて討伐隊は素材を刈り取り運びはじめた。

 所変わって砦町(フォート・タウン)では、緊急事態が起きていた。馬を駆り衛兵が叫んだ。

「今すぐ避難しろ!蛮族の侵攻だ!」

ベルは焦っていた。

(どうしよう、アッシュは大丈夫か?っていうか、この町は安全なのか?!)

宿から出てみると、既に蛮族が暴れていた。すると数人がベルを見つけて

「お、上玉がいるじゃねえか。袋にしちまえ!」

(う、嘘だろ!?)

「な、舐めるな!」

そう言って刺突に特化したような形状の細剣を取り出して、ベルは蛮族の数人を蹴散らした。そして魔法を放つ。

聖爆(セントボム)!」

聖属性エネルギーを圧縮し爆発させた。すると、その攻撃で数人が吹き飛んだ。

(これなら僕だけでも生き残れるかも…)

その時、多方面から鎖が飛んできてベルを雁字搦めにした。

「調子に乗りやがって、躾けてやるぞクソガキ!」

「乱暴はやめてくれ!」

「なんだ、急に下手に出やがって、怖気ついたか?おい」

「グハァッ!?」

「痛えだろ?これがしつけってやつだよ。ハハハハハ」

「こ、殺さないで…」

ベルは懇願したが足の健を切られてしまった。

「う、うわあっ!痛い!やめて!僕が何をしたんだよ!」

「いいか?お前がどうとかじゃねえ。俺達は奪うのが仕事なんだよ、そして俺は暴力が大好きだ」

数分が経ち、ベルは生きていた。しかし全身に火傷を負い鎖で動けなくなり、四肢をボロボロにされていた。

「…………」

「そろそろトドメだな、くたばれ!」

「待て!」

蛮族を止め、そう叫んだのは若い女騎士だった。彼女は白を基調とした魔法鎧を身に着け、一流の剣術で複数の蛮族と互角以上に戦った。

「チッ、厄介だな。このクソアマが!だが、もう撤退の時間だ、じゃあな!」

「逃げたか…」

しかし追う余力は残っていない。

「い、生きてるか?」

息はしているが、意識はない。

バタン!と音をたててドアが吹き飛ばされた。

「べ、ベル…?」

「私は聖騎士、敵ではな…」

「どけ」

……………どういうことだ?町に戻るなり門の前に数多の兵が死んでいた。かろうじて息をしていた兵に、

「何があった?よし、治してやる。生きろ!」

(上位再現(ハイヒール))

門番の身体の傷は癒やされていった。息を吹き返した兵は、

「あ、貴方は、じゃなくて。現在は蛮族の侵攻を受け、あれ?いない…退いたのか」

「蛮族の侵攻…」

「瓦礫が危ないから町には!って行っちゃった…」

そしてベルを見つけたらこの有り様だ。略奪だけするならここまでやるか?ひとまず鎖を引きちぎって傷を全て治した。

「おいベル、誰にやられた」

「アッシュ!蛮族は!?」

「落ち着け。もういないし、聖騎士がこの町を守ってる」

「そうか、アッシュが無事でよかったよ」

「誰に何をされた」

少女は少し黙っていた後でこう言った。

「教えたら何をするつもりだ?」

「………」

「やっぱり教えない、キミは無茶をするつもりだろう」

「無茶なことでもないさ、教えてくれ。いや、教えろ」

「やだ」

「おい、そこの女騎士。蛮族は何処に行った」

「言うな!」

「蛮族は危険だ。貴方一人では勝てない、無駄なマネはやめた方がいい。とだけ言っておこう」

「ご忠告どうも、では俺は行くよ」

「待てアッシュ!」

「黙ってここで待ってろ」

キィンッと剣のぶつかり合う音。女騎士とアッシュの剣であった。

「何のつもりだ?」

「無駄死には許さん、止めさせてもらう」

「……どけ」

そう言った頃にはその聖騎士は壁にめり込んでいた。

「カ、カハッ」

一撃で意識を失った。

「これでわかったろ、止める必要はない」

その男は駆け出していった。

もはや慈悲などない。ついに人間は、本当の逆鱗に触れたのだ。


こんにちは、一介です。今話は面白かったでしょうか。小説を書くのってめちゃんこ楽しいですね。面白かったら是非感想お願いします。では次の話で会いましょう。

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