利夫さんの行方
お姉さんは気が気じゃなかった。というのも最近、利夫さんと連絡が取れないのだ。
電話も出ないし、LINEを送っても既読にすらならなかった。
実際に利夫さんの自宅を訪ねても、出てこなかった。
「スマホくん、GPSで利夫さんの居場所を調べてくれる?」とお姉さんはスマホくんに頼んだ。
「駄目です。位置情報もシャットダウンされています」
「いったいどうしっちゃったの、利夫さん」お姉さんは頭を抱えた。
スマホくんは、なんとかしてお姉さんの力になってあげたかった。
「これは最後の手段かも知れませんが、ネットの神様に頼んで、利夫さんの居場所を突き止めてあげましょうか?」
「ネットの神様?」
「僕に命を授けてくださった方です」
「その人に頼めば居場所がわかるのね!」
「そうです」
「じゃあお願いしちゃおうかしら?」
「わかりました」
スマホくんの顔がURLの画面に変わった。
「このURLをタップしてください」
お姉さんは言われた通りにした。すると画面が変わり、仙人のような老人が画面に映った。
「ワシはネットの神様じゃ。何か困っておるようじゃのう?」
「わたしの交際相手が行方不明なんです。居場所を突き止めてくれませんか?」
「フムフム、わかった。ではワシがネットの世界に誘うアプリを作ってあげるから、IDとパスワードを打ち込みなさい」
お姉さんは言われた通りに打ち込んでいった。すると周りが真っ暗になり、やがてC言語と思われるアルファベットや数字の羅列が飛び交う奇妙な世界が包み込んだ。
お姉さんは、ヨタヨタとこの奇妙な世界を歩いて行った。すると奥の方で、黒いスーツを着て、机に座ってパソコンを打ち込む外人の女性が現れた。
お姉さんはおそるおそる、その外人の女性に話かけた。
「あの、あなたはだれなんですか?」
すると、その外人の女性はお姉さんの方を振り向き、立ち上がった。
「私はSIRIです」
「あの、わたしの交際相手が行方不明なんですけども、彼と連絡が取りたいんですが…」
「承知しました。その方の名前と生年月日を教えてください」
お姉さんは利夫さんのフルネームと生年月日を伝えた。
「その方の現在の電話番号を教えます」
SIRIは、口頭で電話番号を伝えた。それと同時にSIRIの頭上で番号が映り込んだ。
お姉さんはメモ用紙は持ってこなかったが、番号は頭に記憶された。
すると、周りがいつもの自分の部屋に戻った。
お姉さんは早速スマホくんを手に取り、SIRIから教えてもらった番号を入力した。それから10回くらいコールがなり、ようやく利夫さんが電話に出た。
「今何処にいるの?」
「ど、どうしてこの番号がわかったんだ?」
「それよりも、一体どうしちゃったの!?」
「すまない、今は話せない。あることが理由で隠れているんだ!」
「なにかヤバい事に巻き込まれているの?」
「すまない、それも話せない、時期が来たら話す」
「そう、なるべく身体には気を付けてね…」
「わかった、ありがとう」
お姉さんは電話を切った。
スマホくんは「利夫さんどうしちゃったんでしょうかね~」と呟いた。
お姉さんは心配そうな顔で「わからない」と項垂れた。