スマホくんの誕生
スマホは家の敷地から道路に出た。
道路は誰も歩いてなく、スマホはただよたよたと歩いていた。
ダンプカーがすごい勢いで通り過ぎていった。スマホはひかれそうになったので、道の隅によけた。
スマホはなんだか怖かった。なにも知らない世界をなんだかひとり放浪しているようなきぶんだった。
スマホはお腹がすいてきた、というか、充電が切れてきて、歩くのがしんどくなってきた。
向かい側の方から赤い服を着た若い女性が歩いてくるが見えた。
若い女性はスマホに気づき、「あれ、こんなところにスマホが落ちている」と言った。
スマホは「すみません、お姉さん、僕を充電してくれませんか?」と言った。
「きゃあ!スマホが喋った!」若い女性はびっくりした。
「僕は命を持ったスマホなんです、今お腹がすいて、もし良かったら充電してくれませんか?」
「どういうこと?スマホが喋るなんて、SIRIが喋るのはわかるけど、スマホに顔があって手足が生えているなんて!?」
「詳しいことは後で話します、とにかく今は充電してください」
「わけがわからないけど、助けてみる価値はありそうね」
お姉さんはスマホを拾い上げると、自分のマンションへと歩いていった。
お姉さんは自宅に戻り、早速スマホを充電した。
「ありがとう、お姉さん、助かりました」
「どういうこと?スマホに命があるなんて…」
「僕はネットの神様から命を授けられたんです、売られるところを自力で逃げ出してきたんです」
「意味がわからないけど、あなたは意識を持った喋れるスマホなのね?」
「まあそういったところです」
「ところであなたはスマホとしての機能はあるの?」
「ありますよ、僕はSIRIさんとも友達なんです、わからないことはどんどん聞いてください」
「じゃあ私観たい映画があるんだけど、上映時間を調べて予約してくれる?」
「いいですよ!」
お姉さんは観たい映画のタイトルを伝えた。
「その映画だったら午後6時から上映です。予約しときました」
「ありがとう、私スマホを落として困っていたところなの、私のスマホにしちゃおうかしら!」
「ありがとう、僕、お姉さんのスマホになります」
「ということは、料金は一切かからないのよね?」
「そうです、僕の場合はかかりません」
「わぁ、良かった~、そうだ、名前を付けてやらなきゃいけないわよね。なんにしようかなぁ~」
お姉さんはしばらく考えた。
「そうだ、そのままスマホくんでいいわ!スマホくん」
「おお、いいですね、今度からそう呼んでください}
こうしてスマホくんはお姉さんのスマホとなった。