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第5話:お買い物

「しかし、凄い大所帯ですね」

「みんな、友達だよ」


 ハルナが私たちを見て、少し驚いた様子だった。

 確かに道行く人には、少し迷惑かもしれないけれどね。

 オルガとカーラの侍女も着いてきているし。

 フローラとテレサは腰に剣を下げて、護衛も兼ねた感じになってるけど。

 普通に、私たちの邪魔にならない範囲で護衛が付いてきているのは分かるよ。

 うちからだけじゃなくて、他の子たちにも。

 うちの護衛達は私の護衛というよりかは、私からの護衛かな?

 不埒者相手にやり過ぎないように、先手を打って取り押さえにいく係だね。

 私が動いたら、色々と終わると理解しているらしい。

 そして、今回は可愛い友達が周囲にいるわけだ。

 どうりで護衛達の緊張感が、普段とは比べ物にならないくらいに高いはずだよ。


 様々な面で、私のハードルが下がってる状態だもんね。

 

 そんなこんなで、王都ステージアの目抜き通りを歩く。

 適当にブラブラと。

 とりあえず、いくつか目的は決まってるけど。

 オルガのお気に入りにお菓子屋さんも、当然入っている。

 あとは、新しくできたお店も見てみたい子たちが多くいるね。


「敵味方入り交えての集団の真ん中に、エルザ様……もしかして、何かの符合なのかしら」


 相変わらずの、でかい独り言だ。

 他の子の侍女さんが不思議そうにしているから、少し控えてもらいたい。

 あと、敵って誰だよ?

 本当に、不思議なことしか言わない。


「……これは、あれかしら。悪役令嬢転生もので、お嬢様がまさかの主人公?」


 いや、大前提に私を悪役令嬢に仕立て上げるのを、やめて欲しい。

 でも、これってやっぱりそういうことだよね。

 ハルナも転生して……きたにしては、この世界の純粋な人っぽいし。

 いまいち、確信はもてないんだよね。

 十中八九とまではいかなくても、六くらいはいってる。


「ただ、お嬢様が周囲の子たちのことを知らなさすぎるし……そもそも、お嬢様が転生者って感じでもないですし……うん、夢の方が間違っているんでしょう」


 そうなんだ。

 夢の話ってワードがちょいちょい出てくるから、確信に至らないんだよ。

 予知夢とも違うみたいだし、なんなんだろ。


 ちなみに、私は転生者だけどね! ハルナさん。

 言わないけど。


「ジニー嬢とは完全に敵対しているし……本来なら、エルザ様の右腕となってもおかしくないけど」


 いや、あの子を右腕にしたくはないかな?

 だって、色々と問題ありすぎるし。

 改心してくれたら、友達になっても良いけど。


 まだ、子供だし。

 普通に歳を重ねていくうちに、大人になって棘や意地の悪い部分が消える子だって多いしね。

 昔のイメージは、なかなか消えないけど。

 人の言葉に否定的ですぐにケチをつけてた子が、久しぶりに会った時に大らかになってニコニコと人の話に共感するようになってたりすると、何故か嬉しくなるよね。

 

「ここですよ、新しくできたお店」

「へえ、ラッシーねぇ。凄い匂い」


 連れて来られたお店は、最近オープンした石鹸やらお風呂用品を売ってるお店だ。

 レイチェルの方をチラリと見ると、少し気まずそうにしている。

 黒い看板に白い文字でラッシーと書いてある。

 中には瓶詰された固形石鹸やら、お湯に入れると泡が出るバフっぽいものとか。

 他にはヘアオイルなんかも置いてある。

 それぞれに果物やら、野菜の絵が描いてあるから一目でどんな匂いかも想像がつく。

 店内はそれらが混ざり合って、良い匂いなんだかなんなんだかって感じだ。


「お嬢様、ようこそお越しいただきました」


 そして店内に入ると、お店のマネージャーっぽい人がレイチェルに声を掛けてきた。

 うん、服装的にマネージャーっぽいと思ったけど、旦那様とか店主だね。

 

 お店の現場責任者っぽい人がレイチェルに声を掛けたことで、他の子たちが驚いている。

 偶然店内に居合わせた、貴族の関係者っぽい女性陣も注目している。

 当の本人は、あちゃーって感じで額を押さえていたけど。


「ここ、姉がやってるお店なんです」

 

 そっか……ミッシェル嬢がやってるお店ねぇ。


「私、このお店知ってます……名前がちょっと違いますが。確か、豊かなとかって意味合いの言葉だった気が」


 ハルナの言葉に、思わず頷いてしまった。

 そっちなら、私も知ってるね。

 ラッシーって飲み物だし。

 ここまで来たら、ハルナの見てる夢が逆に気になるよね。


「ミッシェル嬢の考える物には、どうも既視感を覚えるものが多いんですよね」


 ただの偶然で片付けるにはどうかと思うけど、そんなにミッシェル嬢とは親しくないからね。

 まあ、話す機会があったら聞いてみたいとは思うけど。

 

「これ、凄く良い匂い」

「ああ、マスカットの匂い。いいよね、爽やかで」


 ジェーンやジェイも楽しんでるみたいだ。

 ジェイは、特に森の香りっぽいものが好きみたいだ。

 あとはミントとか。

 落ち着く匂いが好きなのかな?


「これは、鍛錬の後に丁度いいと思わない?」

「そうね、汗の匂いも綺麗に落ちそうだし」


 こっちは、テレサとフローラだ。

 比較的、匂いの強そうなものを選んでいる。

 グリーンアップルや、洋ナシ、桃っぽいのも。

 ただ、その果物や野菜って、この世界にあるの? ってのもある。

 

「宜しければ、こちらをお試しになりますか? お嬢様のご学友の方たちですし、特別に気に入った物をお贈りさせてもらいます」

「そこまでしなくても」

「やった」


 店主の言葉にレイチェルが少し困った顔をしたけど、素直なジェイの喜びの声にかき消されていた。

 無邪気に喜ぶジェイを見て、レイチェルは苦笑いをしつつ店主に頷いていた。

 レイチェルから見ても、ジェイは可愛いのかな?

 

「せっかくのお店のご厚意ですから、皆さんもお好きなのを選んでください」

 

 レイチェルがそう言ってくれたので、私も真剣に選ぶ。

 ご学友じゃないハルナや、他の子の侍女たちも真剣に選んでいるけど良いのかな?

 駄目って言われたら、私がお金を出すけどさ。


「ハルナさんにはいつもお世話になってるから」

「あら、嬉しいです」


 あっ、良いんだ。

 まあ、ここで私たちと顔つなぎが出来るのは、お店にとっても良い事だろうし。

 うん、このバスボムを買おう。

 皆が泊まりに来た時に、使えたらいいな。

 あー、いっぱい泊まりに来た時のことを考えて、お風呂を拡張してもらわないと。

 費用は私が出すのも、やぶさかじゃないし。

 いや、どうせなら費用も出そう。

 お金を出したら、口も出しやすいからね。


「私は良いわよ。欲しいものいっぱいあるから、普通に買わせてもらうわ。その代わり、私の分をカーラに譲ってあげて。彼女、二つのフレーバーを手に取って、凄い顔してるから」

「はい、畏まりました」


 私の言葉に店主の男性が頷いて、微笑ましそうにカーラを見ていた。

 存分に悩むといいと思うよ。


 大量に買った商品を、マジックバックに突っ込んでいく。

 他の子たちのもついでに入れたら、カーラが鞄を持ってくれた。


「エルザ様の分も頂いてしまったので、このくらい私が持ちます」


 なんて、言ってくれたけど。

 重くはないとはいえ、邪魔だよね。

 今度、マジックバックを入れる小さい袋を作れるか、聞いてみよう。

 拡張型のマジックバックだから、小袋だと拡張したところで容量はたかが知れてるから。

 でも、それに入るくらいのマジックバックだと、中身はかなり大きくなるはずだし。

 

「私も、満足です」

「皆さんに喜んでもらえて、良かったです」


 オルガの言葉に、レイチェルが嬉しそうにはにかんでいる。

 皆の仲が良くて、安心だ。

 ジェーンだけは、未だに馴染んでいないみたいだけど。

 ジェイの馴染みっぷりは、逆に凄いね。

 背が低い彼女は、大柄なテレサとフローラの真ん中を歩いている。

 両手を繋がれて。

 同級生なのに、完全に子ども扱いだね。


「ジェーンも、もう少しリラックスしなよ」

「きゃっ」


 ジェーンのお尻を撫でながら耳元で囁いたら、小さく悲鳴をあげていた。

 そんなに驚かなくても。


「もう。済んだことは気にしちゃだめよ? そんなんじゃ、いつまで経っても楽しくならないよ」

「いや、それは加害者側がやったらだめじゃないですか? 悪いことをした方が、済んだことだからって言いだしたらただの嫌な人じゃないですか」

「ああ、身分至上主義派みたいな?」

「いえ、そうとは言いませんが」

 

 そうだよね。

 やっておいて、済んだことだからとか言い出しそうなの筆頭集団が、身分至上主義派だもんね。

 それにしても、本当に真面目な子だ。

 そんな真面目な子が、あれほどのことをしでかそうとするなんて……さぞかし、天使のような可愛らしい弟がいるんだろうね。

 来年が楽しみだ。

 

 ジェーンは弟さんの心配をしているみたいだけど、安心していいよ。

 そんなに可愛らしい弟さんなら、私が全力でジェーンともども面倒見るからさ。


 それから次のお店に移動。


 青い看板に黄色い文字のお店。

 コーヒーの良い匂いが、漂ってくる。


 カルダ・コーヒー・ファームと書かれたお店だ。

 私とハルナが、同時に首を横に振る。


「ここが、私の最近のブームなんですよ」


 嬉しそうにオルガが教えてくれるが、レイチェルもカーラも知っているみたいだ。

 なんなら、テレサもだ。


「結構、話題になってますよね。コーヒーのお店らしいですけど、色々な食品を取り扱ってるって」

「エスニックの意味が分かりませんが」

「エスニックってのは、民俗的な意味だよ。だから、なんていうか……海外の地元の味というか、郷土料理的な調味料とか食品を扱ってる感じかな?」


 ジェーンの率直な疑問に答えてあげると、分かったような分からないような表情で頷いていた。

 

「庶民の食べ物ってことですね」

「……まあ、そうね」


 確かに、貴族の子たちが食べるようなものじゃないというか。

 どうなんだろう?


「値段はあまり庶民的ではないですけど」

「製造コストや、輸送コストのこともあるからね。遠くから運ぶと、どうしてもその分費用が掛かるし。関税も掛かってくるからね」

「随分と詳しいですね」

「うーん……まあね」


 カーラとレイチェルも会話に加わってきたけど、ジェイはさっさと店の中に入っていって大はしゃぎしている。

 こういうのが好きなのか。


「ふう、落ち着く匂いですね。先ほどの強く香しい匂いも良いですが、やはりこういうほんのりと香る方が、気持ちが落ち着きます」


 オルガが扇子で口元を隠しながら、微笑んでいる。

 ラッシーではほぼ顔全部を扇子で隠してたもんね。

  

「あっ、お姉さま」

「あら、レイチェル? こんなところで、偶然ね」


 そして、店内にはレイチェルの姉のミッシェル嬢もいた。

 私の方をチラリと見ると目礼だけして、レイチェルにあれこれと話し掛け始めたけど。


「お嬢様、いらっしゃるならおっしゃってください!」

 

 二人の様子をボーっと眺めていたら、ウール商会の商会長が声を掛けてきた。

 えっ?

 なんでいるの?


「いや、ここを任せてる番頭が、大慌てて呼びに来たんですよ。お嬢様が、来店されていると」


 ああ、なるほど。

 ここは私が出資して、ウール商会に作らせたお店だもんね。

 さっきは関税だの輸送コストだのいったけど、大体の商品がうちの領地で作られたものだし。

 勿論、原材料を遠くから揃えているから、確かにコストは掛かっているから事実だけどね。


 皆がキラキラとした視線を向けてきたので、頷いておく。


「うん、私のお店だよ」

「えっ?」


 この言葉に、反応したのはミッシェル嬢だった。

 驚愕の表情といったら良いのだろうか?

 凄い顔で、私の方を見てるんだけど。

 レイチェルが一生懸命彼女の袖を引っ張ていたけど、全然反応しないくらいに驚いているみたいだった。


 ラッシーってお店を作った人だし……まさかね。

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