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第29話:色物集団

 思った以上に、私たちの集団は快適に過ごせているかもしれない。

 パーティ会場で仲間内で集まって会話を楽しみながら、周囲の様子を伺う。

 確かに、私やオルガに挨拶をしにくる子は多い。

 けれど、この輪に加わろうという子は、居ないようだ。


「この料理、美味しいです」


 フローラがおっとりと、料理の感想を口にしている。

 鴨の何かっぽい何かだ。

 たぶんローストしてあるのだけれども、掛かっているソースが分からない。

 オレンジ掛かっているから、柑橘系かな?

 

 オルガの茶巻き髪は、いつもよりも気合が入っているように見える。

 真っ赤なドレスが、良く似合っている。

 

「だってレイチェル。すみません、この料理を少し多めに持ってきてくださる?」


 レイチェルも興味がありそうだったので、給仕の男性を捕まえてお願いする。


「エルザ様って、どうして使用人の方に謝られるのですか?」

「ん? ほら、彼にも予定があるかもしれないじゃない。他の方に料理を頼まれていたりとか。だから、一言断ってお願いしてるだけよ」


 テレサが不思議そうに聞いて来たので、それらしく応えておく。

 この世界で、貴族は使用人に気を使ったりはしないもんね。

 すみませんなんて、誰も言わない。


「おいっ」

 

 とか


「そこの」


 って、呼び止めることが多い。

 まあ、用意してくれとか、取ってきてくれとお願いする部類はまだいい。

 女性であれば、用意してくださる? 等と、さらに丁寧にお願いっぽく命令する子もいる。

 けど中には、用意しろ! とか、とってこい! みたいに、マジ上から目線で命令する子もいるんだよね。

 別にそういう立場だけど、多少は下や周りの印象を考えた方が良い。

 そういう文化だから、悪い印象に繋がることは少ないと思う。

 けど、そこで丁寧に接すれば、良い印象を持ってもらえる。

 普通に言葉を変えるだけで、好感度が上がる。

 なんともイージーモードな身分、それが貴族だというのに。


 周囲に侮られるというデメリットもあるけども、得てしてそういうのが丁寧かつ自然に行える人は総じて一目置かれていることが多いからね。

 普段の行動や、成果で。

 一角の人物がそういう風に格下相手にも、丁寧に接する。

 そのことで侮るのは、敵対勢力がそういう風に仕向けた話をする程度。

 された本人からすれば、舞い上がるほどに嬉しい事だというのに。


 あっ、私の場合は前世の影響が多大に出ているけど。

 すいませんを、謝罪以外で使う場面なんて日常に大量にあるからね。


「ありがとう。今日は忙しそうね? これ、どうぞ。疲れた時には、甘いものよ」

「ありがとうございます」


 お礼に、鞄から飴を出して渡しておく。


「エルザ様の鞄には、どれだけお菓子が入っているのでしょうか?」


 レイチェルが興味深そうに、私の鞄を見ている。

 うん、特注のマジックバックだから、凄い量のお菓子(賄賂)は入っているよ。

 インベントリというスキルは無かったけど、マジックバックはある世界で良かった。

 時間停止機能が無いから、本当に収納袋って感じだけど。

 異空間接続型のマジックバックじゃなくて、内部拡張型だし。

 

 しかし、この集団。

 なかなか、悪くない。

 成り上がりのレイチェルに、身分至上主義派の裏切り者扱いのカーラ。

 騎士として由緒正しい家系のテレサとフローラ。

 身分至上主義派の代表的貴族家のオルガ……と、何やら彼女についてきたおまけの娘。


 なかなか、嫌われているような憧れられているような微妙な集団。

 入りたいような、入りたくないようなグループ構成だろうね。

 ソフィに関しては、何人か薄々と感づいてそうだけど。

 同じクラスの子は、すぐに気付いたみたいだけど。

 上級生の方たちは、そこまで詳しくは知らないだろうからね。

 未だに、どこぞの貴族令嬢と思われてそうだ。

 

「ふふっ……」


 思わず笑い声が漏れてしまい、皆の注目を浴びてしまった。


「どうされました?」

「な……何か、気分を害することでも?」


 笑っているのに、その反応は酷いよカーラ。

 レイチェルは不審そうに聞いて来たのに、カーラは私が不機嫌になったと思ったのかな?

 ちょっと怯えた様子なのが、面白くない。


「カーラ酷いよ。楽しいから、笑っただけなのに」

「そ……それは、よござりました」


 なんか、年配の侍女みたいな言葉遣いになってる。

 チラリとソフィの方を見ると、今度は皆がソフィを見る。


「いえ、こうして着飾っただけで、彼女のことを知らない方々はソフィを偉い貴族の箱入り娘だと勘違いしているのがおかしくって」

「はあ」


 カーラが気の抜けた返事をしてくるので、鼻で笑ってしまった。


「だって……身分至上主義を謳って、自分たちは特別な存在だと思っている方々がねぇ……平民の彼女を自分たちと同列のように勘繰っている姿って、滑稽でしょ? 所詮、人の違いなんてその程度のものなのよ」


 今度は、全員が納得顔だ。

 オルガが、凄く同意してくるけど。

 それでいいのか、身分至上主義派筆頭格のご令嬢。

 それでいいから、このグループにいるのか。

 実家の彼女に対する教育は、それでいいとは思えないけど。

 立場的に。

 役割的には、これが正解なのだろう。

 いってみたら、王族側のスパイだし。

 でも、もう少し身分至上主義派と仲良くした方が、良いと思うよ。


「レイチェル、食べてる?」

「勿論、食べてます。いっつも、聞いてこられますよね? それ」

「食べてなかったら、おすすめを探そうと思っただけだよ」


 レイチェルのお皿には料理が、少しずつしか乗っていない。

 食べたわけじゃない。

 こういう場所だと、やはりイメージが大事なのか食べる量が少なくなる。

 それも大きなパーティが、面白いと思わない理由の一つだ。

 レイチェルより、私の方が食べてるまであるし。

 私は周囲を気にする必要性を、全く感じたことが無いからね。


「で、オルガと一緒にいるのは?」

「ええ、舞踏のクラスを取っている方で、ヒエイラ家のご令嬢です」

「へえ、お名前は」

「あっ、リュカ様ですよ。二年生ですの」


 先輩だったのか。

 しかも、オルガが紹介してくれるのか。

 本人は、私と目が合ったら顔を真っ赤にして、オルガの陰に隠れてしまったし。


「リュカ先輩も、仲良くしてくださいね」

「ひゃいっ!」


 いや、先輩……

 もう少し、大人っぽい感じの振る舞いとか。

 

「あら、リュカ嬢ったら、ここにいらしたのね」


 それからも楽しい時間を過ごしていると、シャルルが声を掛けてきた。

 先輩が嬉しそうに、シャルルの横に移動している。

 うーん、シャルルも人気者かぁ。


「この子の相手をしてくれて、ありがとうねエルザ」

「オルガが紹介してくれたんだ。それよりも、知り合いだったんだ」

「なるほど……ええ……この子、大人しいから放っておいたら、すぐに色んな人たちに囲まれちゃって」


 なるほど……それは、良い意味でかな? 悪い意味でかな?

 シャルルがちょっと鋭い視線をオルガに向けると、オルガは扇子を口元に当てて曖昧に頷いている。

 それを見たシャルルが、今度は満足げにしていた。

 いや、視線だけで分かり合わないで?

 いま、どんな会話をしてたの?


「例の子たちも、リュカを探していたから……どうしても、先に見つけないとと思ってね」


 あっ、スルーされた。

 ふとシャルルの後ろを見ると、大人しそうな子が数人ついてきていた。

 いかにも優しそうでありつつも、強い意思をもってそうな先輩方も多く混じっている。

 身分至上主義派対策か。


「ソフィアさんも、楽しんでらして?」

「ええ、凄くきらびやかな光景と余りの眩しさに、目が回りそうです」

「そう? 貴女も十分に輝いているわよ? 素晴らしいドレスね」

「……はい。エルザ様が用意してくださいました」


 凄いでしょう! 

 私のセンスがキラリと光る、最高のドレスを用意できたと思ったよ。

 あまりにソフィアの反応が良いから今度はオルガに、マーメイドドレスを勧めて見ようと思っている。

 きっと似合うはずだと思ったら、我慢できなくなってしまったからね。

 

「お優しいのはエルザの美徳だけど、押し付けは駄目よ? こんな高価なものをポンポン渡していたら、潰れちゃうわよ」

「はーい」

「絶対、分かってないよね?」

「もう、シャルルお姉ちゃんが昔みたいになってきて、嬉しいわ」


 そういえば出会ってちょっとしたくらいに、急にシャルルが凄くお姉さんぶって色々と注意とか教えてくれたりしてたのを思い出した。

 微笑ましいやら可愛らしいやらで、素直に付き合って相手してあげてたら調子に乗ってお姉ちゃんと呼んでと言い出した時は可笑しかった。

 お姉さまじゃなくて、お姉ちゃんか……


 思わず笑ってしまった。

 幼い彼女は笑われたのが恥ずかしかったのか、その後で泣き出したのであわてて「お姉ちゃん、泣かないで」と宥めた記憶も……


「もう……いつの話を持ち出しているのよ」

「ソフィアさんも、エルザに何かされたら私かクリント様にすぐに言うのよ」

「はい、ありがとうございます。でも、エルザ様は酷いことはされないし、言われないので」

「そうね……代わりに、親切の押し売りが凄いから」


 おおう……酷いことを言う、お姉ちゃんだ。


「いえ、はは……でも、一生掛けても返せないほどの、借りが」

「はぁ……」


 ソフィアの言葉に、シャルルが溜息を吐いている。

 はやく、ダンスの時間にならないかな?

 皆お腹いっぱいになったら踊りにくいからか、食事のペースも遅いし。

 ダンスの時間になったら、シャルルはきっとお誘いがいっぱいあるだろうし。


「ソフィアの笑顔はプライスレスだから、私も借りがいっぱい」

「もう」


 呆れた様子のシャルルだけれども、私を見る目が優しいので少し気恥しい。


「あっ」


 会場の中から、そんな声が聞こえてざわめきが一瞬広がる。

 それから、すぐに静寂が訪れる。

 どうやらホール二階の扉が開いたようだ。

 ということは、ダリウスがやっと来たのかな?

 去年から王族も学生だからね、堂々と参加が出来る。

 それまでは陛下が挨拶をして、その後王妃殿下が立派なテーブルで会場の様子を見るといった感じだったようだけど。


 今年はダリウスがいるから、陛下が挨拶したあとは王妃殿下も少し会場の様子を見て退場するらしい。

 まあ主催者だけれども、対象外だから参加できないパーティを見るとか……絶対楽しくないよね?

 

 そして開かれた扉から、ステージア国王陛下と、王妃、ダリウス殿下が入城してきた。

 両脇には騎士が控えているけど、あれはフローラかテレサのお父さんだったりするのかな?

 陛下の横には、シャルルパパが控えている。

 こっちをチラリと見たから小さくを手を振ったら、ギクッとされた。

 真面目モードだから、反応を返せないけど返そうとして慌てた感じかな?

 もっと、アピールしたらどうなるだろう。


 あっ、ダリウス殿下も気付いた。

 手を軽く振ってみる。


 うわっ! 目を細めてフッと和かくて温かい笑みを一瞬だけ浮かべて、表情を整えて前を向きなおした。

 自然と、かっこいい仕草が出来るようになってるねぇ。

 大きく手を振ろうかな?

 あっ、シャルルに手を抑えられてしまった。

 バレたか……

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