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第17話:王都冒険者活動

 やってまいりました、王都の冒険者ギルド。

 レオハート領の領都にあるものと違って、建物の構えだけはしっかりとしている。

 両開きの観音扉も、3mに届きそうなほどだ。

 重くて開け閉めが大変だからか、片方は常に開いているとか。

 冬場は流石に、締めきっているらしい。

 ただ、扉の開閉に職員が2人ほど、待機していると。

 経費の無駄遣いだなーと思ったけど、冬場になると扉の横に執務机が置かれるらしい。

 いや、横に小さな出入口つけたらいいじゃんとしか思わない。

 ただ、出入りを手伝うのは依頼に来たお客様だけ。

 冒険者は自分で開けろと。

 当然だろうね。


 さて、なぜギルドに来たかというと……学園の長期休暇まであと一ヶ月を切ったからだ。 

 の割に、王都のギルドで冒険者としての活動をほぼしていない。

 これは流石に色々と拙いかなと、点数稼ぎに来ただけ。


 ついでに、色々と王都の冒険者ギルドを体験しておこうかと。


 流石に、王都だけあって小奇麗な冒険者が多い。

 駆け出しのルーキーは、ピンキリだけどね。

 中堅クラス以上は、しっかりと装備も自身も手入れしてそうだ。

 粗野な冒険者なんていなさそうだけど、行儀の良い冒険者って強いのかな?

 レオハートでも平均したら、てやんでいなベテランの方が強いし。

 スマートなハイランカーもいるけどさ。


「悪いけど、通してくれないか?」


 とりあえず良い仕事でもないかと受付に向かおうとしたら、目の前を若い男性に塞がれた。

 いたのか、粗野な冒険者。

 お約束ってやつかな?

 良いじゃないか。


「ふふ、ここを通りたければ通行料を払ってもらおうか? そうだね、僕と一緒にそこのイブリオ亭でディナーでもどうかな?」

「はぁ……意味が分からないな。なぜ、私が貴様に食事を奢らないとならん」


 偉く安っぽいお約束だね。

 しかも、そんなことしそうもない感じの軽装に身を包んだ美青年だ。

 

「おっと、誤解させてしまったようだね。もちろん、お代は僕が支払うとも」


 いや、ますます意味が分からない。

 通行料をせしめるようなことを言っておいて、お前が金を払うんかい。


 思わず周囲を見渡してしまった。

 楽しそうにこちらを伺う連中ばかりで、助けてくれそうな人はいない。


「ほう? ただで食事にありつけるのは有難いが、それこそ奢ってもらう義理もない。あまり時間を取らせないでくれるか? 急いでるんでね。どうしても通行料が欲しいなら、拳か膝で支払うことになるが?」


 言ってることが謎すぎて、相手するのも面倒だったので分かりやすく挑発してみる。

 すると、目の前の男性は大袈裟に溜息を吐いた。

 そして、周りから声が上がる。


「おお、ケルガーがまた振られたぞ!」

「7勝8敗で、ついに負け越したか」

「ほれみろ! 確かにかっこいい方かもしれんが、お前クラスなんかごろごろいるんだよ」

「これで、少しは大人しくしろよ」


 なんだ、ただのナンパだったのか。

 しかも、周囲の野次馬はフラれるのを期待していたと。

 うーん、相手が悪かったとしか。

 12歳の少女でしかも貴族で、王子の婚約者。

 一介の冒険者になびくわけがない。

 魔法で姿を変えているから、18歳くらいには見えるかもしれないけどね。


 ケルガーと呼ばれた青年が、プルプルと震えている。

 怒ったのかな?


「今回は、本気で好みだったのにー!」


 と叫んで目の前から走り去っていった。


「好みでもない女性にも声を掛けていたのか……軽薄なやつだな」


 その後姿を見送りながら、聞こえるようにぼそりと大きめな独り言を呟いてみた。

 あっ、何もないところで躓いた。

 再度身体を震わせながら、ギルドから出て行った。

 なんだったんだろう、あれ?

 まあ、いいや。

 それよりも、私は依頼を受けて実績を作っておかないと。

 

「獅子の心のエリーズだ。何か手ごろな仕事はないかい?」


 小首を傾げて前髪を掻き上げながら、受付の女性に声を掛ける。

 すろと目の前の女性はみるみる頬を上気させて、あっカウンターを飛び越えて来て腕を掴まれた。

 そのまま、裏に引っ張られていく。


「おやおや、どこに連れて行くつもりなのかな?」

「いいから、こちらに来てください! エリーズ様の対応はギルドマスターが直々に行いますから」


 そしてそのまま、裏の事務所に。

 やだ、怖い。

 これ、強面の人達に囲まれて、脅されて法外な料金を請求されたりするやつじゃん。


「今日はやけに久しい連中が多いと思ったら、エルザ様がお見えだったのですね」


 高級そうなソファに座ってお茶を出されると、壮年の男性が対面に座って手を組んで話しかけてきた。

 ギルド内には何人かレオハート領の冒険者や、領地の騎士がいたもんね。

 私の護衛として。

 というより、お目付け役とか見張り役だけど。

 私を護衛するというより、私の被害者がでないように周囲の人達を護衛してるといった方が正しいかも。


「それで、本日はどういったご用件で?」

「これは、おかしなことを……冒険者が冒険者ギルドに来て、仕事以外に何をするというのかね?」

「その喋り方はなんです?」


 むぅ……おじいさまに言われて、一生懸命に練習した強そうな女性ベテラン冒険者の喋り方なのに。

 分からないかな?

 普段は全然出ることが無いけど、魔法で大人の姿になった時は自然とこういう話し方になるくらいに練習したのに。


「いまはエルザではなく、エリーズだ。であれば、エルザとは別の人間だと思ってもらいたいね」

「なるほど……擬態ですか。確かに貴族の女性のような喋り方だと、周囲の冒険者からは距離を置かれるでしょうね……貴族のお忍びの冒険者とか、平民の冒険者が下手に関わったら命の危険につながる面倒な地雷ですし」

「そこには、私のことも含まれているのかな?」

「とんでもない。流石に実力でS級にまで上り詰めたというか、現在進行形でこの国で2番目にレベルが高く、世界でもトップクラスだと推定されている方をお忍びだなんて……というか、最近は忍んですらないらしいじゃないですか」


 確かに。

 知る人ぞ知るの知る人がだいぶ増えてるしね。

 隠してないし、聞かれたら否定しないし。

 うん……ガチの地雷冒険者だった、私。

 いいもん、いいもん。

 逆に、そんな私にお近づきになりたいという人だっているだろうし。

 できれば、そこそこ実力のある人がいいなぁ。


「それで肝心の仕事は何か無いかな? S級冒険者ではあるけども、仕事を選ぶつもりはない」

「あっ、まだ続けるんですね。その喋り方」

「うるさいなぁ、少しは付き合ってくれてもいいじゃん」

「いや、あっ、はい……申し訳ありません」


 おっと、必要以上に怯えさせてしまった。

 壮年の男性が顔を青くして頭を下げるのを見て、微妙な気持ちになる。

 ちょっと、不満を口にしただけなのに。

 でもいくら冒険者ギルドのギルドマスターでも、公爵令嬢の気分を損ねたら首が不安になるか。

 大人げなかったかも。


「ぜひ、お願いしたい仕事があるのにはあるのですが……これは、ギルドからの依頼になります」

「へえ、興味深いね。で、どんな厄介事かな?」

「……あっ、はい。えっと、うちの若いのがポイズンボアの大規模な巣を見つけて、その巣を殲滅してもらいたいのですが」

「ここの冒険者で手に負えないのかな?」

「1m級のが見える範囲で数百匹、おそらく5mから10m級のグレートポイズンボアもいるとの予測でして」


 いや、それマジでヤバイやつじゃん。

 軍が出動するレベルの。


「毎日、そこから数十匹の蛇が森に入っていってるみたいでして」

「それ……国に報告するやつじゃん。騎士団に討伐隊組んでもらうレベルじゃん」


 思わず口調が乱れるレベルの事態。

 普通なら、騎士団の仕事になると思うんだけど。


「ですが発見したのがうちの者で、なんとかギルドの手柄にできないかと」

「まあ、私なら一人でなんとかできるが……討伐証明部位の剥ぎ取りが面倒だな。誰か、ついてきてくれるのか?」

「それが、うちの者たちは近づくのすら難色を示しておりまして」

「だったら、さっさと国に報告しなさいよ!」

「昨日の今日のことだったので、明日の夕方までに誰も名乗りでなければそうしようかと……お恥ずかしい話ですが」


 確かにそういったことを生業にしている冒険者ギルドが、その仕事を国の兵士にやらせるのは面目丸つぶれだろうね。

 そういうことを言ってるレベルじゃないんだけど。


「もういい。分かった、仕事は引き受ける。だが、面倒は嫌なので職員を派遣してくれ。それから、荷物運びに金に困ってそうなルーキーをたくさん用意してくれないか? 素材としても食肉としても使えるから、運べるだけここに運び込もう」

「エルザ様は、転移魔法が使えるのでは?」

「この部屋に、蛇の死体全部飛ばしてやろうか?」

「なんでもないです」


 そんな大量の蛇なんて、どれだけ魔力を消費すると思ってるんだ。

 他人事だと思って、簡単に言ってもらっては困る。

 

「それに、荷車に大量のポイズンボアを乗せて凱旋ってのは、ギルドの良い宣伝になると思うが?」

「そうですね……おっしゃられる通りです」

「いまから片付けに行くから、場所を示した地図を用意してもらえるかな? それと、発見した者も連れて来てくれ。その者にも、手柄を分けてやらないとな」

「助かります……すぐに呼んでまいりますので」


 そういって、ギルドマスターが部屋から出て行った。


「おい! ケルガーはどこだ! とっとと、連れてこい!」


 どこかで聞いたような……あっ、さっきの変な青年かぁ……

 どうしよう、やっぱり連れてこなくて良いって言いたくなってきたよ。


「さっきまでいた? そんなことはどうでもいい! 今すぐ、あいつが必要なんだよ!」


 凄く焦った様子だけど、そんなに気を遣わなくてもいいよ。

 いなかったらいなかったで、ケルガーに運が無かっただけだし。

 べつに、報告の報酬だけ渡したのでいいんじゃないかな?


「ええ? 女性冒険者をナンパして振られて、飛び出していった! あのバカ野郎! いいから、草の根かき分けてでも見つけ出してこい!」


 もはや、犯罪者やら裏切り者に対する呼びかけだ。

 ギルドマスターの怒声に、ギルド内の喧騒が蜂の巣をつついたような大騒ぎになってる。

 

「見つけましたー! 朝っぱらから酒場の前で店を開けろと騒いでるところを衛兵に連行されたようです」


 本当に色々と迷惑な奴だなー……

 もう、手柄立てさせてあげるような人柄でもないし、本当にいらないんだけど。


「とっとと、保証金払ってでも連れてこい! ええい、金はギルドで持つから、とりあえずわしの財布をもっていけー!」


 いや、そこまでしなくても。

 いやいや、本当にそこまでしなくても……


「連れてきましたー!」


 連れてきちゃったのね。

 変な男気を出すんじゃなかった。

 見た目も中身もレディだけど。

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