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第3話:学園入学準備

 さてと、凄く憂鬱だが私はまた王都にいる。

 12歳。

 王都の学園への入学のためだ。

 別に、レオハート領にある学校でも良かったのに。

 私が作った学校。

 ちなみに、平民の子供に対しては義務教育という形で6歳から入学を推奨している。

 領都の子たちはほぼ強制に近いけど、村や遠い町の子供たちになると通学の問題がね。

 それに農村とかだと、幼い子供も労働力としての助けになるので強制はしにくい。

 あまりにひどい環境だと……それでも子供が親といることを望めば、子供の意思を尊重する。

 そうでなければ、寮に入ってもらって学校に通ってもらう。

 もちろん、16歳での卒業に合わせて就職の手助けもする。


 ちなみに14歳の時に、途中卒業も認めている。

 14歳は、どこの家庭でも本格的に労働力となるからだ。

 金持ちはその限りじゃないけどね。


 14歳から16歳までは、専門的な分野を選んでもらって学んでもらうことになる。

 3年前から始めたので、14歳で入学を認められた子は最初から専門分野を学んでいる。

 基礎教育と並行して。

 かなり大変だけど、自分の将来の収入の為を思えば勤勉になる子が多い。

 こういうところは、時代というか世界というか。

 日本とのギャップを感じてしまうよね。


 王都の学園は12歳から入学する高等学校で、最長で18歳まで通うことができる。

 基本は16歳で一度、卒業になる。

 結婚が絡めば、14歳で卒業もあるけどね。


 14歳で結婚は早すぎると思うけど、これもやっぱり時代や世界観のせいだろう。

 貴族の女子の結婚適齢期が13歳から18歳というのは、ちょっと受け入れがたいけど。

 勿論、結婚しても学校に通う選択もあるけどね。

 

 王都の屋敷を出て、まず最初に向かったのは冒険者ギルドだ。

 とりあえず所在を移しておかないと、更新の手続きの度にレオハート領に戻らないといけなくなる。

 別に構わないけど、何かの都合で遅れて降格でもさせられたら大変だ。

 私に限っては、そんなことはないけど。

 ギルドもそのくらいの忖度はしてくれるよ。

 S級で、領主の孫娘だし。


「面倒な手続きも終わったし、買い物に行こうか?」

「本当に、ご自身で行かれるのですね」


 背伸びをしながら冒険者ギルドの扉から、街に出る。

 ハルナが横で溜息を吐いているけども、筆記具とか自分で気に入ったものを選びたいし。


「普通は、屋敷に商人を呼びつけると思うのですが」

「そんなことしたら、彼らが売りたいものしか持ってこないじゃない。変な物は持ってこないだろうけど、掘り出し物を見つけたりしたいし」

「確かな物しか、持ってきませんよ。流石にうちの不興を買ったら、どうなるかくらい丁稚でも分かります」


 ハルナは不満そうだけど、私がただ単に町のお店で買い物がしたいだけだ。

 そもそも冒険者として活動していた時は、買い物は自分たちでしていたし。

 そこいらの箱入り娘とは違うのだよ。


 ちなみに冒険者ギルドでは、普通に絡まれた。

 強面の若い連中から、新人に毛が生えたような冒険者から。

 握手や、祖父との冒険の話を強請られるという意味で。

 サインを求めてくるという文化はなかったけど、若い女性冒険者に持ち物を強請られたのには驚いた。 

 不躾にもほどがある。

 なんでも良いとは言われたけど。

 験を担ぐために、私の活躍にあやかりたいって言われてもね。

 一人にあげたら、後が大変なことになりそうだったからやんわりと断った。

 いや、物々交換とかならってことじゃないから。

 そんなことしたら、冒険者ギルドを出るころには私の持ち物は全部他人のものと入れ替わってしまうから。


 しょうがなし、ギルドのスタッフにペンを借りて彼女のポーチの蓋の裏にサインをしてあげた。

 書類にするのとは違う形の、プロスポーツ選手や芸能人っぽい感じの。

 凄く喜ばれた結果……長蛇の列が出来て、結局疲れることになったとだけ言っておく。


「お嬢様のサインに、強面のおじさんが狂喜乱舞しているのは、ドン引きでした」

「そうだね。それよりも、小腹がすかない? そこの屋台で、何か買って食べながら歩く?」

「公爵家のご令嬢ともあろう方が、食べながら歩くのは流石に品が無いですよ」

「立食パーティでも食べながら歩くじゃない」

「立って食べますけど、そのまま歩く方はいません」


 むぅ……ハルナは、どうも私に自分の理想のお嬢様像を押し付けすぎだと思う。


「理想ではなく、一般的な高位貴族令嬢の常識を求めているのです」

「はいはい。私は私だし人からどう思われても良いから、あの揚げパンみたいなの食べよう」

「国母となる方は、人からどう思われるかを気にしてください」

「結婚したらね」


 とりあえず小うるさいハルナを無視して、屋台で商品を購入する。


「揚げパンだね。一個銅貨1枚だけど、お嬢さん可愛いからもう一個サービスしてあげるよ」

「あら、お兄さん太っ腹だね。じゃあ、ありがたく頂くよ」


 異世界語翻訳の結果は、揚げパンだった。

 砂糖がまぶしてあるけど、少し茶色っぽい砂糖だ。

 不純物が多く残ってるだけだろうけど、美味しそうに見えるのは不思議だね。


「はあ……結局、言っても聞かないんですから」

「ん? はふはいっは?」

「流石に、食べながらしゃべるのだけはやめてください。可愛いですけど」


 なんだかんだで、なんでも肯定してくれるハルナもどうかと思う。

 たまに、視線が怪しい時もあるし。

 ただ、ハルナも可愛いからべつに構わないんだけどね。


「何を買われるんですか?」

「筆記具と、鞄とか小物とか? 髪留めとかも欲しいかな?」

「言えば、いくらでも用意しますよ」

「自分で探して選ぶのが楽しいんじゃない」


 とりあえずハルナの手を引いて、ぐんぐん進む。

 普通なら食べながら歩いて、怖い人にぶつかって絡まれたりするのがお約束なのだろうけど。

 身体能力が高すぎる私には、人ごみを人にぶつからずに歩くくらいなんてことない。

 動きを先読みして、空くであろうスペースに足を進めるだけだからね。


 それに、あまり人も多くないし。

 

「斬新なものか古風なものが多いわね」

「そんなガッカリした顔で、無理に取り繕わなくてもいいですよ。レオハート領にある物の方が、デザインも機能性も上をいってるのは事実ですし」

「うちから仕入れたであろう商品が、2倍や3倍の値段になってるのを見るとね」


 輸送費と利益を上乗せしたとしても、やりすぎだろう。

 しかも、生産量の少ない商品ばかり。

 これが噂の転売ヤーというやつか。


「何かおっしゃりましたか?」

「いや」


 思わず転売ヤーめと呟いたら、ハルナに疑わし気な視線を向けられてしまった。

 おじいさまに頼んで、いくつか送ってもらった方がよさそうだ。

 仕方なし古風というか、オーソドックスなペンとインク壺、それから紙を買った。

 動物や魔物の皮とかじゃないよね?

 パピルスってわけでもないけど。

 品質は……良くはないと思ってしまった。

 無駄に頑丈そうだけどね。


「こんど、レイチェルを呼んでお茶会でもしたいね」

「いいですわね、女子会」

「えっ?」

「お茶会ですよ。お茶会って言いました」


 何やら聞きなれた言葉が聞こえた気がしたけど、聞き間違いではないと思う。

 女子会って言葉が、こっちの世界にもあるのかな?

 あるかもしれない。

 なんせ、異世界語翻訳は割と万能だからね。

 ニュアンスやイントネーションの違いで、お茶会が女子会と変換されることもあるだろう。

 あるのかな?

 いや、チートタイプの全言語理解っぽいから、あるのかもしれない。


「女子会……良い響きね。殿方に邪魔されることもないし、女性限定のお茶会を女子会と呼ぶのは悪くないかも」

「そうですか? お茶会だけじゃなくて、趣味の集まりとかも女子会って呼べそうですけど」

「そうね……女性だけで集まって楽しむことを、女子会って呼ぼっか」


 なんとなくハルナと盛り上がってしまって、レイチェルにお茶会ではなく女子会で招待状を出す流れになってしまった。

 王都レオハート邸の執事長からは、変な顔をされてしまったけど。

 ソフィも入学予定だから、学校が始まったらぜひ女子会にお誘いしないと。

 可愛い女子は、みんな私の友達になると良いよ。

 12歳くらいなら、ほぼ全員もれなく可愛いと思えるし。


 ちなみにこの2年の間に、何度かソフィともやり取りをしている。

 レイチェルともね。

 王都に来た時には、必ずレイチェルに会ってるし。

 王都から領地に帰るときには、ソフィの村にも寄って彼女にも会ってる。


 結構仲良くなってきたと思うんだけど、いまだにエリーお嬢様呼びのままなんだよね。

 村にいるときくらい、呼び捨てで良いと思うんだけど。

 距離は縮まったはずだから、学校で会えるのが楽しみだね。

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