ひまわり畑の真ん中で
「なろうラジオ大賞4」応募作品です。
前作「おふだを剥がす肝試し」に出てきた先輩後輩のお話です。
よろしければ前作もあわせてお読みいただければ幸いです。
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ここは沢山のひまわりが植えられていて、家族連れや恋人達が訪れる有名な観光地。そこに二人の若者がやってきた。
「ったく、こーゆーところは彼女連れて来いよ。俺ら浮いてるじゃねーか」
「俺、彼女いないっすよ。それにセンパイとつるんだ方が美味しい思い出来ますからね」
「はぁ?なんだそりゃ。しかし彼女いないとかイケメンなくせに勿体ねぇな。まあいいや、折角だから真ん中で写真撮ろうぜ」
先輩と後輩は、ひまわり畑の散策路をずんずん歩き、ど真ん中へ向かっていく。
「この辺のひまわりは結構背が高いな。周りが見えねぇわ」
「センパイの背が低いんすよ」
「うっせーわ! って、おっと!!」
後ろからついて来ている後輩が茶化すので、振り向きざまにパンチを繰り出そうと腰をひねったところでバランスを崩して転んでしまう先輩。
「大丈夫っすか、センパイ?」
後輩は、転んだ先輩へ手を差し伸べる。
「オメー、顔だけじゃなくてやる事もイケメンか!俺が女だったらうっかり恋に落ちてしまいそーだわ。でもまあなんだな。もうちょっと肌焼けてて健康的だったら言う事無しだな」
地べたに座り込んだ状態で後輩の手を取る先輩。
「いやー、肌は焼かないっすねー。これでもかなりUVケアに気を付けてるんすよ。俺、吸血鬼っすから」
ニコッと微笑む後輩。牙がチラッと見える。
「えっ、うそっ、その牙本物? えっ、まじで吸血鬼?」
「センパーイ、僕、何度も吸血鬼って言ってましたよ。覚えてないかもですけど」
先輩はびっくりして後輩の手を掴んだまま、つい手を引っ込めてしまう。その拍子に後輩が先輩の方へ倒れ込む。
「ふふ、今日はセンパイが悪いんですからね」
そのまま先輩に覆いかぶさって喉元に牙を突き刺す。
「うそーーー!! ん"っ、ん"・・・」
ぢゅるぢゅるぢゅる~~~
「はぁ美味しい、ご馳走様。さて先輩の記憶を消して、と」
:
「センパイ、起きてください」
ひまわり畑の脇のベンチからむくっと起き上がる先輩。
「あれ?オレ、どうした?」
「貧血で倒れたみたいっすよ。大丈夫ですか?」
「まじか・・・」
「じゃあセンパイ、帰りに焼肉行きましょう。肉食って美味しい血を作りましょう。今日付き合ってくれたお礼に奢りますよ」
「おいおい、そこは『美味しい肉食って血を作る』だろうがよ」
「いえいえ、合ってますって」
二人の若者は駐車場へと向かっていった。
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