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9/9

組長と裏方組

手塚寮室にて


通常通り稽古が終わり、夜遅くに手塚が作業していると小さくノックが聞こえる。


「手越、曲できたよ」


花組作曲担当の樋口がCD片手に訪れていた。


「仕事が早いね。拝聴しよう」


--

「いいね。思った通り重厚な印象が取り払われた音だ。演出のイメージぴったりだよ」


「打ち込みだから鳥組の楽曲コンペじゃ落ちるけど、僕の好きにできるからありがたいよ組長さん。歌詞、できてる?」


「仕事早いしボクのやりたように揃えてくれるからいつも助かるよ。歌詞は先にメロディー共有してくれたから粗方できてる。今日明日には仮歌よろしく」


「ん。三上くんになるべく時間作ってあげたいし今からやるよ。アレンジはいつも通り僕がやるけどいいよね。スタジオ借りるね」


手越は樋口に鍵を渡すと、樋口は去っていった。

手越は改めて作業に戻ろうと椅子をまわしPCに向き直ろうとしたとき、控えめなノックの音が聞こえた。


「はーい。今度はだれかな」


「手越さん進捗いかがです?」


2年生でダンスなどの振り付けを担当している三上が扉から顔を覗かせた。


「曲は樋口がスタジオ室で最後の調整してるよ。メロとコードまでの音源はさっき貰ったけどいる?」


「スタジオで樋口さんに直接聞きますわ」


「樋口へこんでそうだったら励ましてあげてくれる」


「鳥組の、まだ引きずってるんです?」


「樋口は自分で作った曲を舞台で歌いたくて男子歌劇学校に来たからね」


「……背丈はどうにもなりませんもの。適応していくしかありませんのに」


「ボクが上手く使ってやれればいいんだけど……影歌でもコーラスでもなくね」


「かと言って普通の女役では出せません。声が低すぎますもの。それに忍足さんの本気を引き出すまではトップ女役を譲るつもりもありませんわ」


「流石は花組に咲く一輪の青薔薇」


「…………その恥ずかしいキャッチコピーみたいなのなんとかなりませんの」


「風刺すミツバチの方がよかったかな?」


「風組時代の話は辞めてくださる?月下の鬼才さん」


「今は花組ですもん」


「花組移籍に推薦してくれたのは感謝してますけど、貴方から振られる仕事が多いは〆切は短いわで昔より休日がなくなっているんです。樋口さんもそうなのではなくて?新しいことに挑戦する暇もありませんわ」


「えー、次の春蘭公演は2曲欲しいんだけどボクが曲も全部やった方がいいかな?」


「構想出来てるなら早く回せって言ってるんですよ。貴方が一番オーバーワークなんだから仕事増やすな」


「きゃーいけめーん!」


「腹立つな」


「で、樋口に女役のイロハ教えてやってくれる?」


「……本人次第ですよ。3年になって今更女役なんて頭にないでしょうし」


「できないなら使わないだけからいいよ」


「ほんと……優しそうな顔の割に情がない人」


「信頼だよ。彼は歌手として作曲家としてはこれ以上ない才能だが役者としては不完全だ。旦那役としては低身長、女役としては低すぎる声。性別を感じさせない役をあてがきしたり、セリフを削って対応したけど、そろそろ技術的に成長して貰わないと困る。有望なの1年生も入学したことだし、得意のはんなり毒舌で樋口の危機感を存分に煽ってくれていいよ?」


「なんで私が手越さんの思惑通り動かないといけないのかしら?友情を傷つけたくないからって嫌な役を押し付けないでくださる?」


「…………バレた?」


「ファンの女性たちにみせてやりたい間抜け面。女役の指導は私の我が儘という話にしておいてあげましょう。それ以外は知りませんわ」


それだけ言うと、三上は部屋から去っていった。





「…………」

組長脚本演出作詞担当:手越

作曲編曲担当:樋口

振り担当:三上


その他大道具や衣装などは手越が手配している


学校としては基本的に役者育成に重きを置いているが、生徒が請け負える範囲で舞台運営を行っている(組長までやってる手越はちょっと特別)


特に鳥組では使用する曲を組内のコンペで決定している

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