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脚本完成

入学式から一夜明けた4月2日


1年生たちは基礎授業のガイダンスを終え、各々練習着に着替えた午後からのクラス稽古の時間。


「脚本出来たよ!ほら回して」


「早いな」


「イチから作ったわけじゃないからね!ボクにかかればちょちょいのちょいさ」


昨日より幾分かテンションの高い手越に新入生は若干引きつつ台本を回す。

全員に行き渡ったところで、手越は上機嫌に語り始める。


「新入生公演の演目は『ロミオとジュリエット』花組としては一昨年ぶりだね、まあボクらのほとんどは出てないけど」


手越の言葉にちょっとした笑いが起こる。

1年生はその発見に疑問に思うが、ほとんどの生徒には答えのない問いだった。


「配役を発表するよ。といってもメインの1年生諸君には昨日と変わらないけどね!」


「トップ女役ジュリエットを1年花井、トップ旦那役を1年一見。それと今年は二番手のティボルトを1年鹿耳にやってもらうことにした」


「はいっ!」「はい」「はい!」


「続いて、神父役を3年忍足」


「あぁ」


昨日スクリーン越しに見た二年前のロミオとジュリエットでロミオ役だった3年生だ。


「ロミオの友、マキューシオ役を3年樋口」


「はーい。影歌は?」


樋口と呼ばれた3年生は、昨日一見に桜花公演について教えていた背が低くのんびりとした声の低い3年生が呼ばれる。


樋口は影歌。

演目によって舞台裏で歌唱のみを行う役割を担っている。



「んー今回は影歌なしかな。基本は伝統曲を使うとして……フィナーレ曲を一つ新入生トップペアのために作ってくれる?期間短いけど頼むよ樋口」


「りょーかーい」


なんでもないように曲を依頼する手越とそれを引き受ける樋口に新入生が驚いたのを手越は認め仰々しく語り始める。


「新入生諸君、花組で舞台を作り上げるというのは、こういうことだよ。脚本演出は組長のボクが、作詞作曲は樋口が担当してるんだ。ボクのお眼鏡に叶う才能は嫌でも取り立てるから、自分の才能を隠さないように。やれることは何でもやるが現花組の舞台。まあ大掛かりな舞台装置と衣装は外注だけどね」


「脱線したけど続きまして、ジュリエットの結婚相手パリス役を2年首藤」


「はい」


資料室まで1年生3人を連れて行った2年生が背を伸ばし真剣な表情で返事をする。


「ジュリエットの母役を2年三上」


「はい」


三上と呼ばれた2年生は女役らしく女顔で髪も伸ばしているのか、艷やかなロングの黒髪が目を引く。


それからいくつか台詞のある役と上級生の名前が呼ばれていく。



「最後にジュリエットの父役はボクがやります。それじゃ本読みするよー」


「っと、その前にあらすじ……はみんな知ってるだろうから、変更点だけぱぱっと伝えるね。今回のロミオとジュリエットは全員生存ハッピーエンドになりました!ロミオもジュリエットも死にません!」



「そんなに手を加えて大丈夫なんですか?手越先輩」


「…………他組にとってはただの新人お披露目だけど、さ。今年の花組には前途有望な生徒が沢山入ってくれた新生花組としての初公演。去年の花組一斉退学の欠員補充でそれぞれの組から爪弾きにされたボクらが忍足を軸に首藤くんが繋ぎ合わせた形だけの歌劇だった去年とは違うってところをみせたいんだ」


「新入生の前だぞ」


「いずれ知ることになるんだし別にいいでしょう忍足さん?鼻摘み者たちの花組って男子歌劇学校ファンの間でも噂流れてるわよ」


「三上くんわかってる〜。まあ筆頭はボクなんだけどね」


手越は1年生に向き直り改めて宣言する。


「というわけで、一年生諸君には期待しているんだ!よろしく頼むよ?それじゃやろうか」


「舞台は14世紀イタリアの都市ヴェローナ。貴族のモンタギュー家とキャピュレット家は抗争を繰り返していた。血の匂いが消えることがない街で、ロミオとティボルトの肩が触れ合う」


………………

…………

……


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