組分けと新入生テスト
キャラ名多めで覚えられない人は身体の部位で区別してください
入学式にて新入生代表を務めた一見瞳は入学式が終わる前、幕裏にて校長に呼び止められていた。
新入生代表としての言葉や振る舞いを褒められ、校長について来賓への挨拶回りに連れ回されていた。
そのため、一見はクラス分けが張り出された掲示板前の人集りに乗り遅れてしまった。
短時間ではあったが怒涛の挨拶回りをこなした後で、一見は人集りに参加する気力もなくこれから同期になる少年たちを眺めている。
俯瞰でじっと人が減るのを眺めている一見は気が付かないが、入学試験成績最優秀の証たる新入生代表として登壇し少年とも少女ともつかない中性的な容姿と人を惹き付ける声でもって有望株として学生たちの進路先となる来賓という名の劇団関係者紹介されていたのを知っている一部の同期たちはチラチラと一見の様子をうかがっている。
牽制染みたやり取りのを知ってか知らずか密かに注目を浴びる一見に声をかける少年が一人。
一見の幼馴染の鹿耳翼だ。
「瞳くん、新入生代表お疲れ様」
「ありがとう翼。組み分けどこだった?」
「……花組だよ。瞳くんも一緒」
「そう」
花組、という言葉に聞き耳を立てていた少年たちは一斉に興味を無くし、人によっては同情の視線を向けている。
「三年間一緒に頑張ろうね。たまたま受かった僕がいうのもなんだけど……」
「翼」
「あっ、ごめん!でも入学式が終わった今でもこの男子歌劇学校に入学できた実感湧かないんだ」
「翼が最初に受けたいって言った」
「瞳くんが僕と一緒じゃないと受けないっていうから!」
「翼と私が一緒ならどこでだって最高の芝居ができる。私だけ受けても意味が無い」
「…………瞳くん。それほかの人に言っちゃダメだよ」
それから『お互い初対面でたまたま隣同士になった新入生役』というたわいもない遊びのような即興芝居を一見と鹿耳はいつものように演じ始める。
幸い一見に集まっていた注目も外れガヤガヤと騒がしいため二人を奇特な目で見る人はいなかった。
お互い役として自己紹介を済ませ、探り合うような雑談をしていると一際大きな声が聞こえた。
「風組新入生はこっちに集まってねー!」
高く女性らしい声質の少年が女性らしからぬ鼓膜が震えるほどの大声で呼びかける。
――あの先輩って去年の新人公演の女役だった
――今年の風組トップ女役ってウワサの
風組の少年たちが引き連れられて移動する最中、一見は風組引率の先輩と目が合った気がした。
一見は即興芝居の終わりの合図に『手を叩き』鹿耳に風組について聞いてみようとしたが、空気全体に響き渡る重厚な声に瞳の疑問は遮られる。
「月組新入生は着いてこい」
一声発し長身を翻し男はスタスタと歩いて行く。
一拍置いて月組の新入生達はバタバタとその後を追うようにして掲示板の前から去っていった。
「去年三年生を実力で黙らせて二年生で旦那役トップになった月組の旦那役トップの人だ。存在感があるね」
「旦那役としては翼のほうが上手い」
「瞳くんに褒められるのは嬉しいけど身内贔屓は良くないよ」
「贔屓じゃないよ」
鹿耳は困ったように笑顔を浮かべ、そういえば、、、と話を切り出す。
「瞳くんは月組だと思ってたな」
「翼は鳥組だと思ってた、歌上手いから」
「実は歌唱試験の時に見本の先輩から上手いねって声かけてもらってたんだ」
「あのぴょんぴょん飛んでる先輩?」
「鳥組のみなさーん!あつまってくださーい!」
護ってあげたくなる容姿をした女役の鏡ような少年が、甘くみずみずしい苺のような声で呼びかけている。
「去年は影歌と歌メインの脇役だっけど今年のトップ女役になるんだって言ってたよ」
「そこまで聞いてたのになんで翼は花組になったんだろう?」
その疑問はまた新たな疑問で塗りつぶされることとなる。少年は掲示板前に立つや否や拡声器越しのような大声でこう言い放った。
「花組新入生、ボクは組長兼脚本兼演出の手越です。今からここで即興劇をしてもらいます。テーマは『西洋貴族の社交界』よーいスタート」
スタートの掛け声と同時に一見と鹿耳は手を取り合い踊り始める。
2人とも社交ダンスを習ったことはないが、社交ダンスの型通りに手を取り合い即興芝居のために二人で練習した唯一知っている基本のステップを繰り返しながら揺れることで踊っているようにみせている。
周りの新入生達は突然の事にオロオロとしていたが、数人が二人に倣いペアを作って見様見真似で踊り出した。乗り遅れた少年たちは壁の花と化し談笑の芝居をしている。
ある程度場が固まったところで、一見は次の一手をと考えていると、入学式当日ながら制服をカスタムした一人の少年掲示板の前にスルスルと移動し、小さな口を開く。
「この度は私の誕生日パーティーにお越しくださりありがとうございます。どうぞこゆっくりお楽しみください」
主催として他生徒を一律に招待客として扱う豪胆さに笑いを堪えつつもこれ幸いと挨拶伺いにと、ダンスを止め鹿耳をエスコートしながら掲示板の前に向かう。
「テゴッシー閣下、本日はお嬢様のお誕生日にお招き頂きありがとうございます。こちらは妹のツバリーヌです」
「ツバリーヌですわ」
手越は自分が巻き込まれるとは思っておらず、面食らったようだが、先輩としての経験を持ってしてすぐに返してくる。
「娘から是非君の妹を呼びたいと娘から聞いてね、君と妹君が来てくれて嬉しいよ」
「御機嫌ようツバリーヌ。デビュタント以来かしら?」
「ご機嫌よう。いつもお手紙ありがとう、今日は直接お会いできて嬉しいわ」
「閣下からの招待状を頂いたときは驚きましたが、妹とお嬢様がお友達でしたか」
「おや君は知らなかったのかい?」
「ええ、お恥ずかしながら当主の仕事が忙しく、妹には寂しい思いをさせています。ですが、お嬢様という良き方と友人になれたのでしたら余計な心配事でしたね」
「うん、そこまで」
「これより新入生お披露目公演の女役と旦那役、二番手を発表します。」
途端に生徒たちはざわめく。突然の無茶振りは役決めのインプロ試験だったのだ。
新入生お披露目公演は文字通り新入生をメインに立てて短い演目を披露する公演だ。
準備期間は1ヶ月、4月末には男子歌劇学校の上部組織であり優秀な卒業生が多数在籍している男子歌劇団の小ホールを借り、観客を入れ披露する。
「演目は『ロミオとジュリエット』ただボクが多少手を加えさせてもらうからそのつもりで」
「続いて配役。主人公でトップ女役ジュリエットを花井」
「はい!」
先程掲示板の前で主催の宣言をした少年で、先程一緒に芝居をした鹿耳ははジュリエットという貴族の少女の役にぴったりだと思った。
その隣で一見はロミオとジュリエットを手越が書き換えた脚本に夢中で、どのように変わるか鹿耳と演じるために脚本を一部貰う方法について考えていた。
「トップ旦那役ロミオを一見」
「………………」
「ひ、ひとみくん!呼ばれてる!」
「あっ、はい」
「ボクの話聞いてた?」
「いえ、脚本のことで頭が一杯であとで一部……いや二部もらえますか?」
「キミは脚本家志望かな?」
「いえ、演じたくて」
「なかなかの演技バカだね、まあいいや。次、二番手旦那役ティボルトを鹿耳」
「っ!はい」
ニ番手とは文字通り主役ペアに続いて目立つ役どころである。
鹿耳は役を貰うことができはしゃぎたい気持ちをなんとか抑える。
「新入生お披露目公演はこれで行くよ。呼ばれなかった君たちはアンサンブルとして舞台に出てもらうけど新入生だからといって遠慮せず意見や質問は積極的にね。才能が開花すれば役を与えるし練習を怠れば次の公演でメイン役から外すからそのつもりで」
「はい!」
「よし!それじゃあ寮と学校案内するから着いておいで」